【連載版】婚約破棄された公爵令嬢が「どこにも行かず、ただ走らせて」と言ったので、辻馬車は夜の王都を走り続ける
作者: Vou
あらすじ
「君は冷たい女だ」王太子にそう断じられ、公爵令嬢クラリス・レーヴェンハイトは婚約破棄された。民の前で涙を流す聖女候補ミリアに比べ、クラリスがしてきたのは、炊き出しの手配、孤児院の毛布、施療院の薬代の見直し、戦災遺族への補償——そのための地味な書類仕事ばかり。傷ついたクラリスは、雨の夜、行き先も告げずに一台の辻馬車へ乗り込む。その馬車は、行き先を失った者を「本当の探しもの」の場所へ連れていくという、不思議な馬車だった。御者の名はアルト。かつて侯爵令息だったが、王宮の不正によって家を失い、婚約者リディアを十年も探し続けている男。辻馬車に導かれ、クラリスは知る。「冷たい」と切り捨てられた自分の仕事こそが、王都の人々のパンになり、薬になり、夜を越すための灯りになっていたことを。そして翌日、王宮は思い知る。彼らが切り捨てた「冷たい仕事」こそが、王都を動かしていたのだと。クラリスは王太子妃には戻らない。彼女はアルトの辻馬車とともに、王都の片隅で行き先を失った人々の探しものを見つけていく。婚約者を探す伯爵令嬢。嘘で娘を育ててきた男。妻を失った老兵。帰る場所を失った子ども。自分の役割を見失った聖女候補。そして、十年前に消えたアルトの婚約者。夜の辻馬車は、今夜も王都を走る。行き先を失った誰かが、もう一度、自分の行きたい場所を見つけるまで。
目次
第一夜 【乗客】夜会で婚約破棄された公爵令嬢
第二夜 【乗客】婚約者が失踪した伯爵令嬢
第三夜 【乗客】妻に先立たれた老兵
第四夜 【乗客】孤児の少年
第五夜 【乗客】落ちこぼれ聖女候補
幕間 【乗客】辺境へ向かう公爵令嬢と聖女候補
第六夜 【乗客】王国を支えてきた王弟
第七夜 【乗客】闇夜に隠れる元侯爵
- 1 -