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『婚約者が新居を親に捧げたので、私も家を売った結果』

作者: かおるこ

あらすじ

新しい鍵を渡された夜、あなたは笑って言った。「これからは家族だ」その言葉は優しかったけれど、どこか、私の境界線を静かに越えてきた。あなたは新居を売った。悪気もなく、誇らしげに。「親のためなんだ」「家族だから」その瞬間、私は知った。あなたの言う家族には、“私の意思”が存在していないことを。帰り道、エレベーターの鏡に映る自分は、驚くほど静かな顔をしていた。怒りではなかった。ただ、未来が消えていた。私は家を売った。祖母の匂いが残る部屋。夜景。柔らかな灯り。ひとりで安心できた場所。全部、手放した。悲しかった。少しだけ泣いた。でも、空っぽになった部屋で深呼吸した瞬間、胸の奥が軽くなった。あなたは鍵の前で立ち尽くした。開かない扉。知らない住人。帰れない夜。そして初めて知ったのだろう。家とは、誰かの善意で奪っていいものじゃない。愛とは、勝手に共有していいものじゃない。窓を開ける。新しい部屋に朝の風が入る。静かだ。でもその静けさは、孤独ではなく自由だった。

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