被害者面だけはお上手ですこと。では、わたくしも同じ手を使わせていただきますわ
作者: 月雅
あらすじ
この宮廷では、涙を流した者の言葉が信じられる。公爵令嬢エステラには前世の記憶がある。 百貨店の窓口で十年間、理不尽なクレームに頭を下げ続けた日々。 泣く客の言い分だけが通り、事実確認は後回しにされる光景を何度も見てきた。転生した先で待っていたのは、同じ構造だった。王太子の傍にいる少女ミルフィは、涙一つで誰でも味方につける。 怯えた目で庇護を引き出し、泣かせた側を悪者に仕立てる。 その涙がエステラに向けられたとき、突きつけられるのは身に覚えのない罪。反論すれば冷酷だと囁かれる。 黙っていれば認めたことにされる。 どう振る舞っても追い詰められる状況で、エステラが選んだのは第三の手段だった。泣く。 相手より先に、相手より巧く。前世で学んだことがある。 クレーム対応の極意は、先に泣いた方が勝ちだということ。けれど嘘の涙には限界がある。 見抜く者は必ず現れる。 王太子の異母弟である第二王子は、エステラの演技を一目で看破した唯一の人間だった。嘘と知った上で差し出された手を、取るべきか。 演技で始まった関係の先に、本物の感情は生まれるのか。同じ土俵に立つだけで、人はどこまで変われるのだろう。
目次
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
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