作品タイトル不明
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◆雲上院礼香
妖王は無事討伐された。
その後、色々な事後処理があったが、それも滞りなく完了。
全ての憂いが晴らされ、全国が吉報で包まれた。
何十年と人々が願い続けてきた悲願なのだから当然だ。
祝勝ムードは、しばらく収まりそうにない。
それは礼香にとっても嬉しいことだった。
だが、そんな雰囲気を目にしても、心ここにあらず。
考えていることは、全く別の事だった。
そう、この結果を導けたのは、ある人物のお陰。
真緒が無事だったのも、その人のお陰。
――鏑木凛子こと、リンちゃんだ。
一刻も早く、彼女に会いたい。
会って、お礼が言いたい。
そして、彼女に真緒を紹介したい。真緒にも彼女を紹介したい。
大事な友人だと。
再会を果たした後は三人で、いや七海や未花も一緒に水族館へ行くのだ。
そう思った礼香は、身動きがとれるようになると同時に、単身で凛子の捜索へ向かった。
あれはほんの数日前の出来事。記憶は真新しい。
場所も覚えている。
まずは初めて会った道路へと到着する。
そして、苦笑する。
さすがに焦り過ぎた。こんな所にいるはずがない。
こちらからすれば最近のことだが、彼女からすればずっと昔の話。
毎日、同じ場所を訪れでもしていない限り、再会が叶うはずもないのだ。
ただ、折角ここまで来たのだから、ホテルも見ておこう。
そう考え、自転車を走らせた。
そして、ホテルがあった場所へ着く。
そこは何もない荒れ地となっていた。
これも当たり前。土地の整備が始まったのは最近だ。
昔の建物が残っているはずがないのである。
そうやって、記憶を辿るうちに色々と思い出す。
彼女は、旅行で来ていたと言っていた。
つまりは、この辺りに住んでいたわけではないのだ。
「そうだ、連絡先を頂いたのでした」
妖王討伐という大きなことを成し遂げたせいで、すっかり忘れていた。
電話番号を書いたメモを貰っていたことを今になって思い出す。
礼香は急いで帰宅し、あの日着ていた制服のポケットを調べた。
しかし、何もない。どこかに落としてしまったのだろうかと、焦る。
が、後藤が洗濯で崩れてしまわないように、取り出しておいてくれていたのだ。
メモを受け取り、ほっとする。
そして、携帯端末を取り出した。
会って驚かせてやる。
コスプレではなく、まぎれもなく本人だということを証明してみせる。
きっとびっくりするはずだ。
そう思いながら、番号を押した。
しかし、その電話番号は使用されていないものだった。
番号を確認して、かけ直せというアナウンスが流れている。
礼香は、がっくりと肩を落とした。
そういう可能性もあったのだ。
何十年と経てば、番号を変更することもある。
しかし、諦めない。
名前と以前使っていた電話番号があれば、雲上院の力で何とかなる。
礼香は、早速後藤に調査を依頼した。
そして数日後、後藤が調査結果を携えて、礼香の元を訪れた。
結果は、全て空振り。
鏑木凛子という人物は存在するが、人数が多すぎて絞れない。
次に、メモの電話番号は間違っていた。
多分、メモに書かれた時点で間違って記載されたものだったのだろうという結論だった。
「それなら、ホテルです。ホテルの台帳が残っていれば、住所が分かるかもしれません」
望みは薄かった。
が、可能性はあった。
台帳が手に入れば、正確な情報を入手できるはず。
礼香は、そう考えた。
しかし、その言葉を聞き、後藤が首を傾げる。
「お嬢様に言われ、あの辺りを調査しましたが、あの場所にホテルはありませんでした」
「そんなはずはありません!」
実際に宿泊した経験があった礼香は、声を荒らげて反論した。
「当時の記録を調べた結果、住所が近いホテルはこれになります」
と、画像を見せてくれるも、全く違う外観だった。
礼香は、首を振って否定する。
「確かに、あそこにあったはずなのです……」
という、礼香の呟きを聞き、後藤が口を開く。
「お嬢様、そのホテルのことですが、何年前に営業していたか、おおよそでいいので分かりませんか?」
と、後藤に問われ、礼香は考えた。
あの妖怪は、子供の真緒を殺そうとしていた。
「そうですね。十年以上は確実で、二十年未満といったところでしょうか」
と、言って違和感に気づく。
それは後藤も同じだった。
「お嬢様、その年代ですと、この辺りの地域は封鎖されています」
という後藤の言葉を聞き、その通りだと理解する。
当時は、掃討戦が休止され、北海道の大半の地域が立ち入り禁止となっていた。
指定地域の住人は疎開を余儀なくされ、妖怪が跋扈する大地へと変貌していたのだ。
つまり、人も住んでいないし、車も通れないはずなのだ。
「……そんな」
礼香は絶句する。
そこで記憶がよみがえる。
そういえば、あの妖怪は、礼香が中で暴れたせいで座標がズレたと言っていた。
だから、あの場に幼い真緒はいなかったのだ。
じゃあ、あそこは一体、いつのどこだったというのか……。
◆九白真緒
私は授業中にもかかわらず、盛大な溜息を吐いた。
最近、レイちゃんの様子がおかしい。明らかに元気がない。
取り繕っているが、そんな感じがした
事情を聞いても話してくれないし、困った
妖王戦直後くらいまでは上機嫌だったのだが、その後からどんどん元気が無くなっていった。
どうも、自分にサプライズを仕掛けようとしていた気配がある。
それがうまくいかなかったようだ。
だけど、その程度の事で、あそこまで落ち込むとは考えにくい。
他にも理由があるはずなのだ。だけど、それが分からない。
どうにかして元気づけたいんだけど、何か解決策はないものか……。
そんな思考をプロペラが回転する大音声がさえぎった。
窓から外を見れば、複数のヘリがこちらへ接近していた。
ヘリは学校の敷地内に入ると、随時着陸。
中から、武装した兵士が規律正しい動きで、続々と出てくる。
――もしかしなくても、これは脱獄犯襲撃イベント。