軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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――もしかしなくても、これは脱獄犯襲撃イベント。

でも、装備や趣が違う。

マンガではヘリなんて登場しなかった。

そもそも、眼前で展開しているのは、どう見ても脱獄犯じゃない。

どちらかというと、兵士だ。

でも、時期的に見て、今起きていることがマンガの脱獄犯襲撃イベントで間違いないだろう。

私は机に展開している監視映像をチェックした。

兵士たちは、あらかじめ何をするか決めているのか、動きに迷いがない。

あっという間に広範囲に散開。チームで行動し、校内へ侵入していった。

なんだ、あの人数は……。とてもじゃないけど、一人で対応できる数ではない。

そりゃあ、大雑把な処理でいいなら、吹き飛ばして済む話だけど……。

生徒が大量にいる校内で人命に配慮しながら動くとなると、そうもいかない。

と、ここでチャットツールに連絡が来た。

私が母に依頼して、常駐してもらっている警備員からだ。

内容を確認すると、異常を察し緊急連絡をくれたようだ。

私は警備員に関係機関との連携を済ませた後、突入して欲しいと返事を返す。

暴漢一人なら、アドリブで対応しても許されるが、この規模だとそうもいかない。

こういう時、会社勤めは組織としての決定が必要になる。

まあ、それまでの繋ぎは私が受け持てば問題ない。

再び監視画像に視線を戻す。

今の所、日高さんのクラスに変化はなし。

マンガの展開では、この後ヒロインのクラスが占拠され、悪役令嬢が撃たれる展開へと発展していく。

が、ここで問題がある。

マンガでは、ヒロインのいるクラスの状況しか描かれていなかった。

その上、マンガと実際に起きた襲撃規模に差がある。

この感じだと、日高さんのクラスだけでなく、学校全体が占拠されることになる。

――マンガの展開を信じるなら、死亡は悪役令嬢とその取り巻きのみ。

脱獄犯から逃げ出そうとして、取り巻きを盾にした挙句の果てに撃たれる。

となると、一番撃たれる可能性が高いのは、瀬荷城、四谷、因幡の三人だと思う。

とにかく、この場はレイちゃんとナナちゃんに任せ、自分は日高さんのクラスへ向かうべきだろう。

だけど、そうすると今度はレイちゃんが心配だ。

マンガでの悪役令嬢は雲上院礼香であり、死亡するのも彼女なのだ。

だから私は、レイちゃんを守るために今日まで色々とやってきた。

それなのに、彼女を残して移動していいのだろうか。

それでは、本末転倒になってしまうのではないか……。

そんな迷いが生じてしまう。

それならいっその事、一緒に行動してもらえばいい。

レイちゃんにも、日高さんのクラスに同行してもらおう。

それが一番不安を感じない。

どうするべきか決めた私は立ち上がり、レイちゃんとナナちゃんにアイコンタクトを送った。

授業中であるにもかかわらず、二人は私の要請に応じて教室の隅へ移動してくれる。

「どうされたのですか?」

「さっきのヘリの音、聞いたでしょ? 武装した集団が学校に乗り込んできたみたい。一応、外には連絡したけど、対応は間に合わない。もうすぐここにも武装した集団が来る」

「真剣な顔してるし、冗談じゃないみたいだね」

というナナちゃんの言葉に、私は首肯する。

「今から、クラスのみんなと先生に説明した後、レイちゃんは私についてきて。ナナちゃんは、ここに残ってアキラ君と一緒に対応してほしい」

「承知しましたわ」

「OK、任しといて」

時間がないことを察した二人は、多くを聞かずに了承してくれた。

そして、それぞれ動き出そうとする。

と、その時、こちらのただ事ではない気配を察して、先生が近づいてきた。

「ど、どうしたのかな? 今は授業中なので席について欲しいんだけど」

「すみません、少し時間を貰います」

「あ、うん。早く済ませてね」

先生の許可を貰い、教卓に立つ。

そして、クラスメイトの皆を見渡し、説明を始める。

「皆さん、落ち着いて聞いて下さい。今、ヘリの音が聞こえたと思います。それに乗っていた武装集団が学校に侵入してきています。通報は済ませているので、しばらくすれば応援がきます。一旦、扉の前に机を設置してバリケードを構築します。もし突破された場合は、抵抗をせず、相手の指示に従ってください」

かなりショッキングな内容を話したと思うのだが、クラスメイトの反応は落ち着いたものだった。

私の話を遮らずに、静かに聞いてくれている。

きっとこれも、クラスの要である雲上院家のレイちゃん効果だろう。

私は一呼吸入れて、続きを話す。

「このクラスの指揮はナナちゃんとアキラ君にしてもらいます。私とレイちゃんは、他のクラスが危険な状態になっていないか確認に行きます。それでは、机を寄せてバリケードを作って行ってください。お願いします」

と、説明を終えると、レイちゃんに合図を送り二人で教室を飛び出した。

すると、廊下に出たところで、レイちゃんが止まる。

携帯端末を耳に当て、報告を聞いているようだった。

「後藤から連絡が来ました。今は待機中だそうです。どうしますか?」

端末を片手に持ったレイちゃんから聞かれる。

「うちの警備員と連絡を取って、一緒に行動してもらって。相手の数が多いから、こっちも人数を揃えないと対応できないと思う」

ここでバラバラに行動するのはまずい。

全体で連携してもらった方が確実だ。

「分かりました。後藤、聞こえましたか? ええ、そのようにお願いします」

レイちゃんの連絡が終わったと分かったので、口を開く。

「それじゃあ、日高さんのクラスに行こうか。相手が玄人っぽかったから、探査術の使用は一旦控えて様子をみるよ」

探査術は便利だが、姿を消すことが出来ない。

そのため、相手が警戒態勢の時は発見されやすい。

今の時点では、襲撃犯全員とやり合うかどうか迷っているので、使用を控えておこうと考えた。

外の応援準備が整っていない状態で先走り過ぎるのはよくない。

ここは様子見だ。

「了解しましたわ。……日高さんは無事でしょうか。今までの事を考えると、非常に心配なのですが」

日高さんが持つ不運という名のフラグ体質について理解が深まったレイちゃんが、彼女の身を案じる。

今はまだ襲撃犯も動き出したばかりなので大丈夫なはず。

危険なことになっていくのは、これから先だろう。

日高さんのクラスは、渡り廊下を挟んだ別棟になる。

私たちは、周囲を警戒しながら、彼女の教室を目指した。

すると、襲撃犯のグループが階段を駆け上がってくる音が聞こえた。

即座に反応したレイちゃんが、どうするか視線で問いかけてくる。

私は、やりすごすと合図を送って、素早く物陰に隠れた。それにレイちゃんも続く。

襲撃犯たちは私たちに気づかず、近くの教室へと侵入していった。

そして、悲鳴が聞こえ、教室内が騒然となった雰囲気が外にも伝わってくる。

私は気配を殺して移動し、窓から室内を覗いて中の状態を確認する。

襲撃犯の行動は、どこまでも冷静で機械的。

余計なことは一切せず、必要なことを粛々とこなす。

とても手慣れているように見えた。

今の所、手荒な真似はしていない。

多分、暴力を振るえば、パニックを起こして逆効果になると判断したのだろう。

だが、交渉するフェーズに入れば、見せしめに何かするかもしれない

それまでは何もしないとみて大丈夫そうだ。

「助けに行きますか?」

と、レイちゃんに問われるも、私は首を振って応えた。

「この教室に不遜な態度で抵抗するような生徒はいないから大丈夫だと思う。それに襲撃犯たちは、定期的に連絡を取り合っているはず。もし、気絶させてしまうと、返事が返ってこないことで怪しまれる」

私たちであれば、このクラスを取り返すことはできる。

しかし、その後がまずい。

襲撃犯同士が連絡を取り合っていると思われるため、すぐに仲間にバレる。

そうなると、外からの応援が来るまで、ここの防衛に集中しなければならない。

完全に身動きが取れなくなってしまうのだ。

私の説明を聞いたレイちゃんが、納得した様子で頷く。

「そうですわね……。私たちが対応できるのは、せいぜい一クラスが限界。難しい選択を迫られますね」

「残念だけど、一番危なそうなところ以外は素通りするしかないね」

「……それは間違いなく、日高さんですわ」

私の『一番危なそうなところ』という言葉を聞き、すぐさま日高さんのことを思い出すレイちゃん。

そのくらいには彼女の不運ぶりがイメージとして定着してしまったようだ。

「うん、行こう。といっても突入せずに、外で様子を窺うことにする。応援が来る前に何かあったら突入する感じで」

「承知しましたわ」

私はレイちゃんと頷き合うと、日高さんのクラスへの移動を再開した。