作品タイトル不明
11 領主館の地下へ
要塞都市ベロニアの領主の館へ突入した俺たちは、アンデッドモンスターを聖女2人の魔法で退けながら廊下を進んでいた。
廊下には扉が並んでおり、その上にある表札を調べながら歩いていくと、『会議の間』という文字が目に入った。地下への入口があるはずの部屋で、先ほどのモンスター一斉出現でも、ここだけは扉が開いていなかった。扉の向こうには複数のモンスターの気配がある。
「この部屋にはモンスターが残っているようだ。踏み込むが、攻撃に注意せよ」
先陣を切るのは俺だが、一応そう言っておく。
両開きの扉を一気に開くと、10発ほどの黒い炎の矢が俺目掛けて飛んできた。
「『ディスペルオール』」
黒い波動ですべての魔法をかき消しつつ、俺は部屋へ足を踏みいれた。
『会議の間』という表示の通り、そは広い部屋だった。真ん中に20人掛けくらいの長テーブルが横に置いてあり、その周囲には背もたれが高い立派な椅子が20脚ほど並んでいる。
そしてそのテーブルの向こうに10体のアンデッドモンスターが立っていた。それは背中に羽根の生えた人型の魔族『カオスデーモン』たちだったが、その雰囲気が異常だった。
赤く輝いているはずの目は黄色く濁り、口は半開きで唾液が口の端から垂れている。上半身は裸なのだがその肌は黒ずんでいて、よく見ると腐っている部分もあるようだ。
「うへっ、なんだこのニオイ!? ご主人様、こいつらもう死んでるんじゃねえですか!?」
臭いに敏感な狐獣人クーラリアが、鼻をつまんで眉間に皺を寄せながら叫んだ。
「どうやら彼らはゾンビとなっているようだな」
「魔族のゾンビ……!? そんな奴もいんのかです」
「もちろん魔族のゾンビ自体は存在する。だが彼らはまだゾンビになりたて、というより、体の腐敗が進んでいないところを見ると生きたままゾンビにされたようだな」
「そんなことがあるですか!?」
そう叫んだのはクーラリアだが、メンバー全員が驚いた顔をした。まあそりゃ生きたままゾンビ化するなんて、普通に腰が抜ける話である。
「うむ。邪法中の邪法だが、確かに存在するらしい。死霊を操る術を修めた魔術師が死してアンデッドになり、その後編み出した邪法と聞く」
「おっかねえな……です。しかし、そのゾンビがここにいるってことは、そのゾンビにする技を持った奴がここにいるってことかです」
「うむ。我らがこれから戦う 四至(しし) 将(しょう) ネクライガとはそのような相手だ」
と偉そうに言ってるが、全部ゲーム中の設定である。
ネクライガのこの『生きたままゾンビ化する邪法』は、『オレオ』にいくつかある胸糞悪い設定の一つで、マークスチュアートがやることになっていた『改造兵士』、そしてロゼディクスなどが使っている『ソウルバーストボム』と並ぶものだ。
「仲間をゾンビにするなんて明らかにマトモじゃないぜです。さっさとぶっ倒しちまおうぜですね」
「そうだな。だがまずは目の前の哀れな者たちを救ってやろう」
俺とクーラリアが話をしている間に、『カオスデーモンゾンビ』たちはテーブルを乗り越えてこちらに迫ってきていた。もちろん何度が黒い炎の矢『ダークダーツ』を放っているのだが、俺が『ディスペルオール』で全てかき消している。
「マリアンロッテ、聖女オルティアナ、頼む」
「はい陛下、『パニッシュメント』!」
同じように2人が対アンデッド魔法を放つ。光の柱に包まれると、カオスデーモンゾンビたちは歩みを止めて苦しみ出したがそのまま消える様子はない。
ゲームでもそうだったが、生きたままゾンビ化された影響で、カオスデーモンゾンビは聖属性魔法を弱点としていないのである。
とはいってももちろん効果はあり、10体のカオスデーモンゾンビは動きが非常に鈍重になった。
「フォルシーナ、ヴァミリオラ、魔法攻撃を。アルファラも弓を放て」
「はいお父様、『アイスパイル』!」
「わ、わかったわ。『フレイムパイル』!」
「任せるといい。『スパイラルアロー』」
ヴァミリオラだけ反応が妙だったが、それぞれが放った氷の杭、炎の杭、螺旋をまとった矢は次々とカオスデーモンゾンビを貫き、あっという間にカオスデーモンゾンビを全滅させた。
「うむ、見事だ」
そう言いながら、俺はテーブルを回り込み、最初にカオスデーモンゾンビたちが立っていたあたりを調べ始めた。
『シグルドの聖剣』の先で床を叩いていくと、一カ所だけ音が響く場所がある。
「ふむ、ここだな」
『シグルドの聖剣』の先を床につけ、剣を通して床に魔力を送る。
するとゴゴゴゴと音がして、床の一部がスライドし大きな穴が開いた。覗くとそこには地下へと続く階段がある。
ちなみにこの地下への階段だが、ゲームだとこの館の最上階にある、領主の部屋まで行ってヒントを得る仕様になっていた。
今回はそれをすっとばしているのだが、さすがに俺がこんなことを知ってるのはあまりに不自然なので、わざとらしく「なるほど、情報通りか」と大きめの声で独り言を言っておく。
それによって、すごく疑わしそうな目を向けてきていたヴァミリオラが、小さく溜息をついて普通の態度に戻った。
ちなみにヴァミリオラ以外のメンバーは全員が尊敬の眼差しを向けてきていて、それはそれで尻がむず痒くなる。
「さて、ではネクライガが待ち受けているであろう地下へ向かおうか。マリアンロッテ殿の感じた通りなら、この先はさらにアンデッドが増える。心して進むぞ」
俺はそう言って、地下への階段へ足を踏み出した。