軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 領主館の地下には

四至(しし) 将(しょう) ネクライガが待ち受ける、領主の館。

その地下への階段を降りた先は、石積みの通路になっていた。

地下の通路としてはかなり広く、地上階の廊下と同じくらいの幅と高さがある。壁には等間隔で灯火の魔道具が並んでおり、行動するに十分以上の明るさがある。

空気はひんやりしているが、下りた瞬間獣人のクーラリアが、

「死臭が酷いぜ……です。長くいるのは勘弁だなですね」

と眉間にしわを寄せるくらいには嫌な雰囲気の空間だ。

少し進むと、左右に並ぶ扉が見えてくる。扉には鉄格子がはめられた小窓があり、そこからわずかに光が漏れている。

中には何者かの気配がある。モンスターではないので魔族だろう。

手前に扉の小窓を覗くと、貴族服を着た 人狼(ワーウルフ) がベッドに腰かけていた。その人狼は俺の気配と視線に気付いたか、狼の顔をこちらに向けた。

「……なんだ、私の番が回ってきた……というわけではなさそうだな。誰だお前は?」

「私は神聖インテクルース王国の王、マークスチュアートだ。貴殿は魔族の貴族階級か?」

「インテクルース……? もしや魔宰相が倒そうとした人族の王か? 私はオブリガ、魔侯爵である」

「その魔侯爵殿がなぜ捕らえられている?」

俺の質問に人狼、オブリガは忌々しそうに牙を剥き出しながら答えた。

「魔宰相ロゼディクスを裏切った 廉(かど) で捕らえられ、ここへ連れてこられたのだ。他の部屋にいる者も大概は同じであろう」

その答えは、情報屋ソロから得た情報と一致した。もちろんゲームの設定とも合致する状況で、このオブリガに相当する 名無し(モブ) キャラも確かにいた。

「魔宰相が私に負けたので、鞍替えをしようとして逆鱗に触れたか」

「私は元から人族との戦いは反対だったのだ。それどころか、魔宰相派の半数は元から戦には消極的なのだ。にもかかわらず無理に戦いを推し進め、愚かにも全てを失いおった。いやそれより人族の王がここにいるのはどういうわけだ? よもや我らを平らげようと……」

「魔王殿と講和を結ぼうと思って参ったのだが、この街が門を閉ざしていてな。今から四至将ネクライガ殿に門を開けるよう交渉をするつもりだ」

「魔王様と講和だと……? 奇妙なことを言う人族だ。だがネクライガは交渉など受け付けぬだろう。今の奴はこの町を閉ざすことだけに固執し、魔族すらアンデッドに堕として使役してそれを遂行しようとしている。恐らくは正気を失った状態に近い」

「ならば押し通るまで。その用意もしてあるゆえな。戦いが終われば貴殿たちは解放しよう」

俺がそう言って立ち去ろうとすると、オブリガは「もしあの不死の化け物を倒せるものなら、我らは人族との講和を支持してやろう」と口にした。

魔侯爵というなら、ここに捕らえられてる貴族たちのトップだろう。オブリガの言質が取れたのはこちらとしてはラッキーである。

その後いくつかの部屋を覗いたが、すべて身なりのいい魔族が捕らえられていた。ただいくつかの部屋は、誰かが生活していた跡があるにもかかわらず空室だった。

まあその理由は、先のオブリガの「私の番が回ってきた」という言葉と、ゲーム知識から推察できるのだが。

通路の奥には両開きの扉があり、いかにもその先にイベントが待ち受けていそうな雰囲気を放っている。

それを証するようにマリアンロッテがやってきて、

「陛下、この先に非常に多くのアンデッドがおります。しかも非常に強い気配も感じます。お気をつけください」

と真剣な顔で伝えてきた。

「うむ、恐らくネクライガと、彼が従える多くのアンデッドがいるのであろう。だが彼らを倒さねば我らの目的は成らぬ。皆、準備はよいか?」

「はいお父様」「はい陛下」「この槍にかけて勝利を」「はいお館様」「早く終わらそうぜです」「我が矢で貫いてくれよう」「アンデッドが相手ならお任せください」「勝利を陛下に」「すべて焼き払いましょう」

うむ、仲間は非常に頼もしい。

後はこの先のイベントがどうなるかだが――考えても仕方ないので、俺は「では行くぞ」と言って、扉を押し開けた。

その瞬間、眉を顰めるほどの死臭が鼻をついた。クーラリアは「うげっ!」と言って鼻をつまんでいる。

扉の先は50メートル四方くらいはある、非常に広い空間だった。多分地下倉庫かなにかだったのだろう。壁際に木の箱や樽がいくつか並んでいるのがそれらしい。等間隔に柱が立っていて、その柱に灯火の魔道具が備え付けられていて、広い部屋を照らし出していた。

部屋の一番奥には玉座のような椅子がある。そこに座っているのは濃い赤のローブを着た人物だ。フードを目深に被っていて顔はわからないが、青白い光が二つ、目の位置にゆらめいている。ゲーム通りの容姿、四至将ネクライガに間違いない。

問題はその周囲に、というより部屋全体におびただしい数のアンデッドがたむろしていることだ。

ネクライガの左右には、ゾンビ状態になったオーガ族『オーガゾンビ』が20体ほど並んでいる。

他に『ブラッディボーン』や『ノーブルファントム』『デススペクター』や『カオスデーモンゾンビ』などが部屋中に無秩序に徘徊している。

ネクライガの前には、貴族服を着た魔族のゾンビが何体か跪いている。そう、彼らは先ほどのオブリガと同じ、魔王派に寝返ろうとして収監されていた貴族である。ネクライガにアンデッド化の術をかけられゾンビになってしまった者達だ。

「お父様、奥の不気味な者がネクライガですか?」

フォルシーナが『精霊樹の杖』を握りしめながら見上げてくる。

「うむ、奴がそうだ。外法を極めた死霊術師の成れの果て。だが四至将の中で最も厄介な者でもある」

「お父様ならば相手にならないのでは?」

「単純な力比べならそうだろう。だが奴には秘密があってな……む、話をしている暇はなさそうだ。皆、まずは周囲のアンデッドを片づけるぞ。マリアンロッテ、聖女オルティアナ、全員に聖属性の付与を。その後は二人とも補助に専念して欲しい。ネクライガに聖属性魔法が必要なゆえな」

「はい陛下。『ホーリーエッジ』」

「『ホーリーエッジ』。後はこの拳で戦いつつ、補助に回ります」

「フォルシーナとヴァミリオラは随時魔法で左右から来るアンデッドを攻撃、牽制せよ。アルファラは2人の打ち漏らしを叩け」

「はいお父様、お任せを」

「全部焼き払ってやるから安心なさい」

「承知した。『破邪の弓』の力を見せつけてくれよう」

「アミュエリザ、リン、クーラリア、ミアールと私は前面に出て戦う。デススペクターの鎌とノーブルファントムの魔法には注意せよ」

「はい陛下、このスカーレットプリンセスに恥じぬ戦いをいたします」

「私もこのセイクリッドアクアに相応しい戦いをお見せいたします」

「オレ……アタシも名前付きの刀が欲しいぜです」

「こんな時になにを言っているのですか」

「ミアールはいいよな、シャドウクロウがあってさ」

百を超えるアンデッドの群れを前にしてもメンバーには結構余裕があるようだ。

まあ正直なところ、この広さの空間だと範囲魔法だけで半分以上片付くからなあ。超チートな国王もいるし、彼女らが緊張しないのもわからなくはない。