軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13 ネファリス戦

『千剣山脈』途中の魔族の砦での戦い。

城壁の内側、練兵場に大量に発生していたアンデッドたちを一掃した俺たちは、砦の中に降り立った。

練兵場の向こうには石造りの三階建ての大きな居館があり、その正面中央には両開きの鉄製の扉がある。居館は窓がいくつかあるが、すべて 鎧戸(よろいど) が閉まっていて中をうかがうことはできない。

俺たちの周囲には、さきほど倒したアンデッドモンスターが落とした大量の魔石と、『恨みの眼球』『 悔恨(かいこん) の歯』『 怨嗟(えんさ) の肋骨』といったホラー風味のドロップアイテムが散らばっている。

ゲームみたいに自動的に回収してくれないかな、などと間の抜けたことを考えていると、正面の扉が左右に勢いよく開いた。

まず現れたのは、『カースドナイト』という首無し鎧騎士型アンデッドモンスターだ。ガッチャガッチャと音をたてながら、100体くらいが現れて俺たちの前に横一列に並んだ。

その後から、『レッサーデーモン』『カオスデーモン』といった魔族が現れる。人型で、禿頭に角と蝙蝠の翼、そして尻尾の生えた悪魔のような見た目の連中である。

そして最後に出てきたのは、大きな杖を抱えた一つ目の大男であった。身長は3メートル近く、青い肌、筋肉質の身体で、着ているものは魔導師用のローブである。一つ目の魔族は『サイクロプス』と呼ばれるが、モンスターのサイクロプスとは別物である。

ネファリスという名の、『四至将ネクライガの目』という二つ名を持つ中ボスで、ラエルザの情報では今の肩書は四至将になっているはずだ。

「お父様、これは……」

「うむ、まさか全員が出てくるとは思っていなかったな。だが館に攻め入る手間が省けて助かる」

横から見上げてくるフォルシーナにそう答え、勝手に突っ込んでいきそうな雰囲気の将軍リンに「私が合図をするまで待て」と声をかける。

さて、ゲームでは居館の中をザコを倒しながら探索し、中ボス・ネファリスのところまで行くという砦フィールドだが、どうやらリアルではそうならないようだ。まあ普通に考えれば少数で攻めてきた相手を数で圧殺するのは当然であり、館に立て籠もるなどありえないのだが。

ちょっとだけ気になるのは、ゲーム通り戦闘前にネファリスと会話ができるかどうかである。もっとも、ネファリス自身は四至将ドブルザラクと同じで、話し合いでどうにかなる相手ではないはずだ。

俺は数歩前に出て、真ん中にいる死霊術師ネファリスに向かって話しかけた。

「私はマークスチュアート・ブラウモント、神聖インテクルース王国の王だ。貴殿たちの王、魔王殿と話し合いをしたくて推参した。こちらの力はすでに示した通りであるが、我々は貴殿たち魔族と争うつもりはない。貴殿らが我々をこのまま通すなら、余計な血を流さずに済むだろう。いかがか?」

配下のモンスターを全滅させといて随分な口上だが、魔族にとってモンスターは家畜以下の扱いなのでそこは問題ない。

見ると、俺の言葉を聞いたレッサーデーモンとカオスデーモンたちはチラチラとネファリスの顔色をうかがっていた。多分彼らは、先の戦いで四至将ドブルザラクが倒され、エルゴジーラが裏切り、10万を超えるモンスターが全滅したのを知っているのだろう。もしかしたらあの場にいた者もいるのかもしれない。

しかしネファリスは彼らを一つ目でギョロリと睨むと、いかにも死霊術師っぽい、しわがれた声を出した。

「 戯(たわ) けたことを抜かすな、人族の長ごときが。貴様などが魔王様にお目にかかろうなど、おこがましいにも程があるわ」

「む……?」

と俺が一瞬戸惑ったのは、なにもネファリスの言葉にムカッと来たからではない。

ネファリスの言葉遣いがやけに 流暢(りゅうちょう) なのだ。ゲームでは「フザ……ケルナ……ヨ、人族……ゴトキガ……」みたいな感じで、これほど明瞭に言葉を喋るキャラではなかったのである。

「おこがましいかどうかはともかく、魔王殿は私と話し合う意思はあると思うのだがね。貴殿のその言いようは、果たして魔王殿の意向を尊重したものなのか?」

「無論だ。人族は我ら魔族が叩き伏せ、従わせるべき存在。それが、私が仕える魔王ロゼディクス様のお考えだ」

「それは妙だな。私が知る限り、今の魔王殿の名はエターナリウムという名であるはずだが」

少し皮肉を乗せてそう指摘すると、ネファリスはグッグッグッと喉の奥で笑い声を鳴らした。

「確かにな。だがロゼディクス様が魔王になられるのはもう確定しているのだ。貴様らがここを通れたとして、魔都に着いた頃にはすでにロゼディクス様の御代となっていよう。ゆえに何の問題もない」

「なるほど、ではなおさら、ここは通してもらわねばならぬようだ。魔族を滅びに導く愚王の出現を、この世界を共に生きる者としては看過できぬゆえな」

「ふざけたことを……ッ! その言葉を悔いて死ね。その魂、我が上手く使ってくれよう!」

おっと、マークスチュアート面がちょっと出てつい煽ってしまった。

だがまあ、ネファリスとの対立は既定路線ということで諦めるしかない。

ネファリスが手にした杖を掲げると、前列に並んでいた首無し鎧騎士カースドナイトが、槍と盾を構えて突撃体勢を取る。

しかし見る限り、レッサーデーモンとカオスデーモンは明らかに尻込みをしている様子だった。彼らの顔は一様に引きつっていて、どう見ても怯えているのである。

「デーモン族の諸君、抵抗せねば命までは取らぬ。私は魔族と人族との共存を望む者。それを覚えておくがいい」

「それ以上の口を利くな、痴れ者がッ!」

ネファリスが杖頭をこちらに突き付ける。

今まで力を溜めていたカースドナイトが一斉に突撃を開始した。

「マリアンロッテ嬢」

「はい陛下! 『パニッシュメント』!」

当然こちらも、俺が指示するまでもなく戦闘の準備はできている。

マリアンロッテが放った『パニッシュメント』の光柱に飲み込まれ、一瞬で30体ほどのカースドナイトが消滅する。さらにフォルシーナの『アイスジャベリン』、ヴァミリオラの『フレイムジャベリン』によって15体が消滅した。

俺は『シグルドの聖剣』に魔力を込め、上級光属性魔法『ライトオブジエンド』を放つ。

太いレーザー光を一薙ぎすると、30体ほどのカースドナイトが上下に両断されて消えていく。ついでに腰が砕けそうになっているデーモン族も一薙ぎして吹き飛ばしておいた。

デーモン族なら一撃では死なないはずなので、勘のいい奴なら動けないふりをして戦闘を見守るだろう。

将軍リンが横に並んで来て、

「陛下、あの死霊術師を討って参ります!」

と言ってくるので許可をする。

リンとともにクーラリアやミアール、そして聖女オルティアナも前に出て、残りのカースドナイトを倒しに行く。アルファラはすでに素早い射撃で2体のカースドナイトを射抜いていた。100体のAランクモンスターといえど、10人フルメンバーの主人公パーティ(改)の前ではこんなものである。

さて、将軍リンとネファリスだが、すでにリンは全身に燐光をまとわせ、必殺スキル『シャイニングチャージランス』を仕掛けていた。

槍を構え、滑るような高速移動でネファリスに向かって正面から突っ込んでいく。

「甘いわ!」

ネファリスが杖を振ると、地面からカースドナイトがボコボコと数体出てきて壁になる。

だがリンはそれらを、まさにボーリングのピンのように吹き飛ばし、ネファリスの腹に槍を突き立てようとした。

「むううっ!」

だがさすがゲーム後半の中ボス、杖で槍を防ぐと、そのまま力任せの押し合いへと持って行った。ネファリスは死霊術師ではあるが、もとが体格に優れたサイクロプスなのでフィジカル面でもかなり強い。ゲームでも防御と体力に優れた面倒な中ボスとして設定されていた。

力では互角と見るや、リンは『シャイニングチャージランス』か解除、そしてそのまま次の必殺スキル、『サウザンドスラスト』を放った。無数の突きにはさすがのネファリスも対応しきれず、全身に次々とダメージを食らう。

「むうんっ!」

「甘いっ!」

ネファリスが苦し紛れに振った杖をかがんでかわすと、リンは低い姿勢から突きを放った。その一撃はネファリスの鳩尾に入り、大きなダメージを与えたように見えた。

「ぐほ……っ! だがこの程度では我は落ちぬわ!」

膝をつきそうになったネファリスだが、杖を振ってリンを追い払うと、再び杖を天に掲げた。

再び地面からボコボコと首無し鎧騎士アンデッドが現れる。しかも今度は鎧が赤い。『ブラッディアーマー』という上位種である。

30体のブラッディアーマーは、本来ならかなり強烈な戦力である。だが、

「『パニッシュメント』!」

「『アイスジャベリン』!」

「『フレイムジャベリン』!」

『光の聖女』『氷の令嬢』『緋の麗炎』の3人の魔法の前に、一瞬にして半数が消滅する。

「『ライトニングレイン』」

さらにインチキ国王の雷属性魔法で10体が崩れ落ち、

「おらっ! 『燕返し』!」

「『 刺突(しとつ) 烈閃(れっせん) 』!」

「『サウザンドスラスト』!」

「『スパイラルアロー』!」

「『 鷲牙(しゅうが) 三連突き』!」

とクーラリア、ミアール、アミュエリザ、アルファラ、そして聖女オルティアナの必殺スキルですべてが消えていった。

ちなみにミアールの『刺突烈閃』は、単体強攻撃スキル『刺突閃』の上位スキル。

オルティアナの『鷲牙三連突き』は元ゲームにはなかった、拳による三連続攻撃だ。こちらはもしかしたらスマホ版で追加された技なのかもしれない。

ともかく召喚した上位アンデッドを一瞬で全滅させられ、さすがのネファリスもうろたえた表情になった。

「なんだと! 人族の分際でこれほどの力を持つなどありえぬ!」

「我々がドブルザラクとエルゴジーラ、そして10万の軍を退けたという事実から何も学んでいないのかね。であれば、魔王ロゼディクスとやらは余程の愚か者ということになるが」

「黙れっ! ロゼディクス様を愚弄することは許さぬ。ロゼディクス様は、その程度のことはとうにお見通しだ。だからこそ、私にこの力を授けてくださったのだ!」

俺が煽ると、ネファリスは急に怪しいことを言い出した。