軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13 戦の後で

ミルザム王国、ベランゴル民主国による神聖インテクルース王国侵攻は、インテクルース側の圧倒的勝利によって幕を閉じた。

その陰に糸目丸眼鏡国王の 黒歴史(チート) があったことは、一部の者しか知らぬ事実である。

さて、戦というのはそれ自体大事ではあるが、実際にはその準備も、そして後始末も面倒である。今回は完全な勝ち戦ではあったが、それは同様であった。

まずエルゴジーラとフェニックスはさっさと『幻獣境』に帰ってもらうことにした。

「此度モ面倒ヲカケタ。我ガ番人ヲシテイレバ今後ハ妙ナコトガ起キルコトハナイダロウ。『全テノ幻獣ヲ従エル者』ガ『幻獣境』ニ来ルノヲ待ッテイルゾ」

「キョウはゴメンなさい。オウサマは『スベてのゲンジュウをシタガえるモノ』なんだね。ウチもゲンジュウキョウでマってるから、ゼッタイキてね!」

と言葉を残して2体は去っていったが、後の仕事がつかえているので『全ての幻獣を従える者』の詳細は聞くことができなかった。まあ『幻獣境』に行けばわかるだろう。

王家軍については『転移魔法』を使わず、ローテローザ領、ゲントロノフ領にある『転移の魔導具』を使って王都へと帰還させた。

「あんまり兵に楽を覚えさせるとロクなことにならねえんで」

というドルトンの言葉を採用したのだが、『転移の魔導具』自体もかなりのズルではある。ただ『転移の魔導具』自体はいずれは量産も可能になるものなので、そこまでズルというものでもないだろう。

ベランゴル軍とミルザム軍はそれぞれ大人しく国に戻っていった。

両国につきつける戦後賠償については宰相のマルダンフ侯爵の手により案ができているので、時期を見て会談を開いて提示するだけだ。

なお、今回ベランゴル民主国軍、ミルザム王国軍ともに一般の兵力は大きく減らすことなく撤退をしている。セドレン将軍、ジャマザ将軍という主力の強者はこちらの虜囚となったが、色々交換条件を付けて帰す予定である。両国とも神聖インテクルース王国以外との国とも国境を接しているため、あまり弱体化させるとそちらの国に攻められる恐れもあるからだ。それは神聖インテクルース王国としても望ましくない。

問題は、先代王妃ミランドラの扱いである。

あのキルリアン王とのやりとりの後で話をしようとしたのだが、完全に錯乱状態に陥っていてまともに会話ができなかった。ただそこでなんとなく分かったのだが、彼女は息子のロークスに命を狙われていたことは知らなかったようだ。何者かの手引きで逃がされた際に、襲ってきた刺客は俺からだと 唆(そそのか) されていたようでもあった。ともかく引き取らざるをえない人物なので一度引き取り、その後は実家である侯爵家へと帰した。

神聖インテクルース王国にいる限り一生監視がつく身となるが、命があるだけよかったと思ってもらうしかない。なにしろ俺のマークスチュアート面は、彼女は亡き者にすべきだと 囁(ささや) いているくらいなのだ。

ともかく魔族を退け、返す刀で隙を狙ってきた2国を退けと、前代未聞の大勝利に終わった今回の戦い。

もちろん一週間の後には戦の論功行賞が行われ、夜には祝宴が王城で催された。催されたというか、家宰のミルダートが中心となって王家が催したのであるが。

宴の中心となるのはもちろん俺、そして将軍のドルトンとリン、それから防衛に功のあったローテローザ公とゲントロノフ公である。

もちろんフォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザのメインヒロイン3人や、リープゲン侯爵、女魔導師バヌアルも参加しており、そこに教皇ハルゲントゥスや聖女オルティアナも加わって、神聖インテクルース王国のメインキャラクター全員集合みたいなことになっている。

さらに今回、ゲストとしてエルフ族のゼファラ、アルファラ母娘も呼んでいる。宴に先立ってエルフ族との盟約締結を発表したが、そもそもエルフ族自体が幻の種族と言われていただけに、集まった貴族たちは驚き過ぎて顎が外れたようになっていた。

なおミアールはメイドとして参加、クーラリアは室内の護衛として警備に当たっている。

最初に俺が挨拶を行うと、盛大な拍手の後は自由に飲み食い歓談の時間となる。

といっても、俺はまず主賓席に座り、貴族たちの賞賛の言葉を一通り聞かないとならない。

いい加減疲れてきたところで、ピンクブロンドの聖女オルティアナが微笑みながら俺のところにやってきた。すると貴族たちは空気を読んだ(?)のか、それぞれ自分たちの席に戻っていった。

「聖女オルティアナに助けられたな。賞賛の言葉は嬉しいが、度が過ぎると毒が回るようだ」

「ふふっ、では私は陛下に賞賛の言葉を贈らない方がよろしいでしょうか?」

久しぶりに見るオルティアナはさらに距離が近くなっている気がした。いや、もとからこんな感じだっただろうか、この娘さんは。

「聖女の言葉は別ではあるが、ほどほどにしてもらえるとありがたい」

「では、簡単に。マークスチュアート国王陛下、この度の大勝利、まことにおめでとうございます。私は陛下の勝利を疑ってはおりませんでしたが、それでもとても嬉しく思います」

「うむ、私もこの祝宴を開くことができ、ようやく胸を撫でおろしているところだ。今回は本当に色々とあったのでな」

「そのようですね」

「ところで聖女はミランドラ先代妃の見舞いに行かれたとか。どのような様子だったか話してはもらえぬだろうか」

実は教皇ハルゲントゥスに相談をして、政治や権力と関係のない彼女をミランドラの元へ送るように頼んだのだ。もちろん精神的にも肉体的にも参っているであろう先代王妃を見舞うという名目でである。

オルティアナは少し考える様子を見せてから話し始めた。

「残念なことに、私が行った時にはミランドラ様はすでにお腹のお子を流産なさっていらっしゃいました。お子は生まれたのですが、出てきた時には息をしていなかったということです」

「それは本当に無念であろうな。母体の方は大丈夫だったのか?」

「はい、そちらは私も回復魔法をかけさせていただきましたので。ただお心の方は非常に疲れていらっしゃるようでした。しかしお話をすると、色々と思うところがあるようで、言葉が止まらないご様子でした」

う~ん、お腹の子は状況の激変によって流産したということだろうか。邪推するなら面倒を避けた実家が一服盛ったことまで考えられるが、そこはつついても意味はないだろう。冷酷な世界である。

問題はミランドラがなにを口にしていたかだが、まあ想像はつく。

「ミランドラ先代妃は私への恨みごとを述べていたのではないか? 彼女から見れば私は子息を亡き者にして、王位を奪った人間であるからな」

俺がそう聞くと、オルティアナは眉を寄せてうなずいた。

「はい、自身がロークス王子殿下に命を狙われていたこともご存じないご様子でした。それと、ミルザム王国のキルリアン国王とも特別な仲であったようなこともおっしゃっておりました。国を取り返した後は婚姻まで考えていたようです」

「人の情とはどう動くか分からぬからな。そうなるとますます私を恨むようにはなろうな。これについては逆恨みとも言い切れぬし仕方ないことであろう」

理由はどうであれ、俺が王位を奪い、ロークスに死を申し渡したのは間違いのない事実である。

「マークスチュアート国王陛下はお優しくていらっしゃいますね」

「そのようなことはない。ところで、ミランドラ先代妃を王城から逃がしたのは誰かというのは聞くことはできなかっただろうか」

「いえ、それは……あ、そういえば、ゲントロノフ公の兵士が逃がしてくれたとおっしゃっていました。その兵士は無事なのかと私にお聞きになっていましたので」

「そうか……なるほどな」

それが本当なら、先代ゲントロノフ公はわざわざミランドラを逃がしたということになる。先代ゲントロノフ公ほどの切れ者なら、ミランドラとその腹の子が後々の争いの火種になりうることは理解していたであろう。

もしあのロークスが王のまま暴政を敷いたとして、外に先代王の跡継ぎが別にいるとなれば反乱の旗印となる。もちろん誰かがクーデターを起こして国を乗っ取ったとしても同じことである。つまり先代ゲントロノフ公は、そこまで用意周到にこの世界を荒らそうとしていたわけだ。まったく思慮深いことである。

実のところミランドラを逃がしたのはアラムンドではないかと疑っていたのだが、その線はなかったようだ。それについては少しだけホッとしたのも確かである。