軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 西方戦線決着

主力たる 鋼鉄騎士団(アイアンナイツ) の壊滅、そして 巨大ドラゴン(エルゴジーラ) に乗った中ボス国王の登場によって、ミルザム王国軍は事実上行動不能となった。

俺はその成果を確認しつつ、エルゴジーラを戦場より後方にあるミルザム王国国王のいる本陣へと向かわせた。

そして今、フォルシーナを連れ、天幕の中でミルザム国王キルリアンと対面していた。なおその場には、先代インテクルース王国王妃のミランドラもいた。

目の前にいる椅子に座る初老の男・キルリアン王は、威厳こそマークスチュアートにも勝るものの、わずかな焦りと苛立ちを隠せないでいる。もっとも『蒼月の魔剣士(笑)』である俺がここにいる時点で、彼の命は風前の灯といえるので当然ではあるのだが。

「キルリアン王の歓迎、感謝する。さて、察しているとは思うが、私がここに来たということは、ミルザム王国の軍勢は我らに敗れたということだ。それは理解いただけるだろうか」

「そのような報せは我が元に届いておらぬ。シルメド、確認せよ」

「は……ははっ、しばしお待ちを!」

「シルメド」と呼ばれた側近らしきご老体が、俺の脇を抜けてそそくさと天幕を出て行く。

そして天幕の外で悲鳴を上げて、慌てて天幕に戻ってきた。

「へへへ、陛下! 外に巨大な、巨大なドラゴンがおりまする!」

「なにを馬鹿な。幻でも見たのではないか」

「いえ、幻ではございませぬ! 陛下もご覧になってくだされ!」

シルメド老の言葉に、こめかみをさらにピクピクさせる国王キルリアン。まあそりゃそんな報告信じられるはずないよね。

「信じられぬのも無理はない。キルリアン王もご覧になられるとよかろう」

「……くっ。しばし待たれよ」

国王キルリアンは一瞬凄絶な目で俺を睨んで来たが、お付きの武官と共に天幕の外へ行き、そして魂が抜けたような顔になって戻ってきた。ちなみにミランドラも一緒に見に行ったのだが、そっちは顔が真っ青になっていて、ふらふらと覚束ない足取りで、天幕の奥から別の奥の天幕に行ってしまった。

一方で椅子に戻った国王キルリアンは視点が定まらない様子で、次の言葉も出ないようだ。仕方ないので俺が説明を加えることにする。

「あのドラゴンはエルゴジーラといい、幻獣と呼ばれる神にも近しい存在の一体だ。私は 彼(か) のエルゴジーラと契約を結んでおり、その力を自由に借りることができる。本来このような人同士の 諍(いさか) いに駆り出すものではないのだが、双方の損害を減らすために仕方なく協力を願ったのだ」

「そのような…… 空言(そらごと) を信じろというのか?」

「空言も何も、貴殿もその目で見たであろう。空を圧するドラゴンの王の姿を」

「……くっ……。なんなのだ貴殿は、一体なんなのだ。意味のわからぬ用兵を行い、あれほどの数のゴーレムを使役し、さらには幻獣だと? そんなおかしな話がまかり通るなど、あっていい話ではないではないか」

「現実から目を逸らしても何も始まらぬぞキルリアン王よ」

「現実だと……いや、そうか……」

それまで半分放心していたような国王キルリアンだったが、そこで急にその目に力が戻った。

「……マークスチュアート王よ、私の策はまだ終わってはおらぬぞ。今この瞬間にも、貴殿の国の首都は火の海に呑まれているであろうからな」

勝ち誇ったようにそう言いながら、威厳を取り戻すかのように椅子の上で背を伸ばすキルリアン王。

おっと、それは多分フェニックス襲撃のことを言っているんだろうな。

ということは、あれはやはり今回の戦に呼応した動きであったということか。そして下手人は……と考えているところで、それまで黙っていたフォルシーナがプッと吹き出した。

「なにも知らないというのは滑稽なことですね、お父様」

「そう言うな。私のやりようが人より少しおかしいというだけだ」

「お父様と常人の違いが『少し』であったなら、ドラゴンとゴブリンの差などないに等しくなってしまいます」

と答えつつ、フォルシーナはノートに今の言葉を書き留めている。

今のやり取りを聞いて眉を寄せ、不快感を露わにしたのはキルリアン王だ。「なにも知らない」なんて目の前で言われればそうもなるけど。

「その娘は貴殿の息女か。私がなにも知らぬというのはどのような意味だ」

「これは失礼いたしましたキルリアン国王陛下。私はフォルシーナ・ブラウモントと申します。ただ今の言葉はそのままの意味でございます。陛下の策は、とうの昔にわが父の察するところ、そしてその策もまたドラゴンと共にこちらに参っているのです」

「策が……こちらに来ている……?」

要領を得ないように目を眇めるキルリアン王。

「そうでございます。幻獣フェニックスもまた、あのドラゴンと共にお父様のもとに下っているのでございます」

フォルシーナの答えを聞いて、キルリアン王は眼球が飛びだしそうになるくらい目を見開いた。

どうせ信じないだろうと思ったので、先ほどと同じく天幕の外に出て、エルゴジーラに頼んでフェニックスを呼んでもらう。

遠くミルザム軍の上空を旋回して威圧していたフェニックスが、『なに~?』とか言いながら飛んできてエルゴジーラに並ぶと、幻獣2体の圧倒的威容を前にして、キルリアン王とシルメド老は2人してその場に膝から崩れ落ちた。ちなみにミランドラは気絶して、王の護衛に介抱されていた。

「これでおわかりいただけたかなキルリアン王。であれば、速やかにこの地より去られることだ。此度の戦の後始末は、追って沙汰をお知らせしよう」

こうしてミルザム王国軍は、最大戦力である『 鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) 』を砕かれ、全軍の士気を完全に消し飛ばされて撤退していったのであった。