軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09 王都急襲

西方戦線での戦い、決着が見えてきた矢先にツクヨミがランクA反応の出現を知らせてきた。

反応が向かう先は王都ということで、俺はその場を将軍のリンに任せ、王都へと転移した。

転移先は王城の執務室だ。

そこにはフォルシーナと宰相のマルダンフ侯爵がいて、俺の姿を見て同時に口を開いた。

「お父様!」

「陛下、よいところにおいでくださいました」

「ツクヨミからなにか強力な存在が近づいてきているというのは聞いている。情報は入っているのだな?」

俺はなるべく平静を装い、ゆっくりと執務机の椅子に座った。俺が焦っていたら2人も落ち着きを失うからな。王として必要な演技である。

おかげで少し焦り気味だったフォルシーナも落ち着きを取り戻りたようだ。

マルダンフ侯爵が机の前に来て報告を始めた。

「先ほど東の砦から連絡がございまして、巨大な飛行型のモンスターがこちらに向かって飛行していったとのことです。燃えるように赤い色の巨大な鳥だったとか」

「赤い鳥だと……?」

「はい。お心当たりがおありですか?」

「多少な」

赤い巨大な鳥は、ゲームでも出てきた中ボスキャラ『フェニックス』のはずである。

例の四至将エルゴジーラが口にしていた『幻獣境』にいる幻獣の一体で、隠しステージの中ボスなのでそれなりに強いのだが、イベントバトル形式であったエルゴジーラよりは弱く、普通の戦闘で倒せる敵であった。

ただ『幻獣境』にいる幻獣は基本的にすべて友好的であり、戦闘で倒しても殺した判定にはならず、「まいったまいった」とか言いながら降参することになっている。フェニックスもそれは同じで、積極的に人を襲うようなモンスターではないはずだ。

「私が知っている相手なら言葉が通じるはずなのだがな。ツクヨミ、反応はどうなっている?」

「あと3分ほどで王都へ到着します」

「では外で出迎えることにするか。フォルシーナ、戦う準備をせよ。それからミアールとクーラリアを呼べ」

「はいお父様」

フォルシーナが魔導具で連絡を取ると、赤髪ボブカットメイドのミアールと、金髪狐獣人剣士のクーラリアはすぐに執務室にやってきた。

「お呼びでしょうか、お館様」

「ご主人様、なんかすげえ強い奴が来るのが感じられるぜです。それと戦うんだ……戦うんですね」

「これから少し厄介なモンスターが現れる。基本的に私が戦うが、お前たちにも手伝ってもらいたい」

「はいお館様。お任せください」

「今回の戦は出番なしかと思ってたですけど、出番があるなら嬉しいぜです」

ミアールとクーラリアが答え、そこに杖をもったフォルシーナが合流する。

ツクヨミの「まもなくランクA反応が到着します」という言葉を聞いて窓から外を見ると、炎のように赤い鳥が、一直線にこちらに飛んでくる姿が見えた。

「お父様、あれがそうですね。先にお父様が調伏なさったエルゴジーラにも近いものに見えますが」

同じく窓の外を見ていたフォルシーナが、俺の隣で鋭いことを言う。

「うむ、エルゴジーラと同じ幻獣であるはずだ。名は『フェニックス』のはず」

「フェニックス。不死鳥ですか」

「不死といっても死なぬわけではない。とはいっても、むやみに殺すつもりもないがな。よし、外に転移する。ミアール、クーラリアもこちらへ来い。侯爵、もし戦いになっても兵は手を出すなと指示をせよ」

「ははっ、かしこまりました。皆様ご武運を」

「では参るぞ」

一礼するマルダンフ侯爵とツクヨミを残し、俺はフォルシーナたち3人とともに城の正面にある広場へと転移した。

王城正面の広場には人は一人もいない。

すでに王都民には避難指示が出され、家や教会や集会所などに避難しているからである。

俺とフォルシーナ、ミアール、クーラリアの四人で空を見上げていると、遠くに見えた赤い鳥はもう王都上空に入っていた。

翼開長は50メートルくらい、というのはエルゴジーラよりは一回り以上小さいが、それでも巨大な鳥である。見た目は鷹や鷲に似ているだろうか。フェニックスというと火をまとった鳥のイメージもあるが、目の前のそれはただ羽根が赤いだけである。

俺が『シグルドの聖剣』を抜いて魔力を込め、天に向かって上級光属性魔法『ライトオブジエンド』を放ってやる。太い光線が目に入ったのか、フェニックスはこちら目掛けて一直線に降下してきた。

「ご主人様、こんな奴相手にどう戦うんだよです!?」

空を覆うほどの赤い巨鳥が目の前に迫ってくると、クーラリアが尻尾をブワッと太くした。フォルシーナとミアールも真剣な顔で身構える。

「まあ待て。どうやらいきなり攻撃をしてくるつもりはないようだ」

と俺が答えているうち、フェニックスは広場の上空で急停止し、石畳の上に着地をした。

その足も大木のように太く、指先の爪は城壁すら容易に砕けそうなほど厳つい。

地上に降りたフェニックスは、地上5メートルの高さから俺たちを見下ろしてきた。その鋭い目に宿る瞳は知性をたたえてはいるが、今は強い感情に支配されているように見える。

さて、人間などはるかに超越した存在に見える幻獣フェニックスだが、ゲーム通りならしゃべり方には癖があったはず――

「おい、おマエっ! おマエだろ、ウチらのおタカラをヌスんだのはっ!」

厳つい見た目に反して、フェニックスの声はやたらと甲高かった。

甲高いというより声変りをしていない子どものそれに近い。しかも話し方まで子どもっぽいので、あまりの落差にフォルシーナたちも目が点になってしまっている。

「おい、ナンとかイえっ! ウチらのおタカラをどこにやった!」

そう、このフェニックスは元からこういうしゃべり方をするキャラなのだ。もっともゲームではバトルの前後で短い会話があるだけで、しかも隠しマップのキャラでボイスもついていなかったので、こんな声だとは知らなかったが。

しかも話の内容ももちろんゲームとは違うようだ。そもそも外に出てくるキャラでもなかったし。

ともかく会話はできそうなので、俺はまず平和的解決を模索することにした。

「フェニックスよ。私の名はマークスチュアート・ブラウモント、この国を治める王だ。貴殿の言いようは性急すぎて意味がわからぬ。事情を詳しく話して欲しい」

「ナニがジジョウだっ! おマエがタカラをヌスんだことはわかってるんだっ!

「宝というのは『幻獣王のたてがみ』のことか?」

「そうだっ! やっぱりシっているんじゃないか!」

「知っているのは名前だけだ。そもそも私は『幻獣境』に足を踏み入れてもおらぬ。宝など盗めるはずもない」

「むむう~。おマエがヌスんだっていうのはわかってるんだ! スナオにカエさないならチカラずくでトりカエしてやる!」

そう言うと、フェニックスは大きくひと羽ばたきして空に飛びあがった。

残念ながら平和的解決は無理なようだ。もともと幻獣は人間より上位の存在なので、フェニックスのように話をしてくれるだけでも珍しい。

しかしどうやら俺が宝を盗んだという勘違いが元でやってきたようだが、もちろん俺にはそんな覚えはない。

とすれば良からぬ裏がありそうだが……まずはゲーム通り、いったんフェニックスを倒すしかなさそうだな。