作品タイトル不明
08 西方戦線の戦い2
鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) 率いる、ミルザム軍の将軍ジャマザ。
俺は彼と正面からぶつかり合い、ある程度ダメージを与えたところで、『転移魔法』にて彼の必殺技を回避した。
ジャマザは瞬時に方向転換して俺に再度突撃を仕掛けるつもりだったようだが、その動きを遮る者がいた。
「将軍ジャマザ、お前如きが陛下の御身に触れるなど 僭上(せんじょう) も甚だしい! 我が槍の錆となるがいい!」
それは全身を淡い光に包んだ女騎士にして将軍のリンである。白馬にまたがり白い光をまとうその姿は『燐光の姫騎士』の二つ名に相応しい。
「むうッ!? 貴殿はラシュアル将軍か! 相手にとって不足なしッ!」
再度全身を赤い光に包んで『クリムゾンチャージランス』を発動する将軍ジャマザ。
リンも全身を更に輝かせてそれに応じる。
「ぬおおっ! 『クリムゾンチャージランス』!」
「この槍を陛下に捧げる! 『シャイニングチャージランス』!」
白と赤の光に包まれた2騎の騎士が、正面からぶつかり合う。
だが残念ながら、すでに俺の必殺技を食らいボロボロのジャマザと、原作ゲーム最強の一角『燐光の姫騎士』では差は歴然だった。
ぶつかり合う白と赤の光は一瞬の均衡の後、白が一気に赤を塗りつぶしていった。そして馬もろとも吹き飛ぶジャマザと、駆け抜ける人馬一体のリン。
地面に叩きつけられたジャマザは、すぐに駆けつけて来た兵たちに 雁字(がんじ) 搦(がら) めに縛りつけられ捕らえられた。
「バカな……っ!? ジャマザ将軍がっ!?」
遅れて突進してきた 鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) の隊員たちが驚きの声を上げる。だがそれでも戦意を失わないのはさすがである。
「このまま突っ込め! ジャマザ将軍をお助け申し上げるのだ!」
「相手は『燐光の姫騎士』だ! 倒せば叙爵ものだぞ!」
「ブラウモント王も目の前だ。この機を逃すなっ!!」
依然として数百騎が健在な 鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) が、すべてを蹂躙する勢いで迫ってくる。だが彼らにはどこか悲壮感のようなものも漂い始めている。それは絶対的強者には勝てないという、この世界の在り様そのものに由来するものだ。
それでも『チャージランス』という一般騎士の攻撃スキルを使い、槍先に光のエフェクトをまといながら高速突撃してくる 鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) 。
「もはや勝敗は決したと知れ、『 無尽(むじん) 冥王剣』」
輝く聖剣からは放たれる無数の斬撃が、槍を突き出し突進する鋼鉄騎士隊に襲い掛かる。
先頭の騎士からズタズタに切り裂かれて、次々と吹き飛んでいく騎士と騎馬たち。
一応急所は外しているし、彼らは高レベル者であるから、よほど運が悪くなければ生きているだろう。さすがにチート中ボスといえどそこまで器用な真似はできない。
「なんという剣技! ダメだ、散れっ! 散って囲めッ!」
「おうッ!」
精鋭は伊達ではなく、個々の判断も早い。だがチート中ボスの攻撃範囲からは逃げられない。
「無駄だ。『ライトニングレイン』」
俺は『シグルドの聖剣』を天に突き上げ中ボス専用雷魔法を放つ。
『魔の源泉』によって無限に放たれる雷の雨が、俺を包囲しようとした鋼鉄騎士隊の頭上に降り注いだ。
彼らの鎧は魔法耐性に優れているようなので直撃しても死にはしないだろう。それでも全身が痺れるだろうし、行動不能になるほどのダメージは避けられない。
『ライトニングレイン』を数秒放ち続けると、それだけで 鋼鉄騎士隊(アイアンナイツ) は半壊した。
「ばっ、馬鹿なッ!? なんだこの魔法はッ!」
「ズビアン将軍すらこれほどの……いや、比較にもならんぞっ!?」
「くそっ、広がれぇッ!」
残りの鋼鉄騎士隊は散開して俺から離れていった。
しかし統制を失いバラバラになった騎士たちは、目標を失って右往左往し始めた。
それはそうだ。なにしろ討たなければならない本丸が目の前にいるのに、手も足もでないのだ。俺を無視して軍勢の中に突っ込んでいっても戦術的になんの意味もない。つまり彼らは完全に手詰まりとなったわけだ。
そんな彼らに追い打ちをかけるように、魔導師隊からの魔法が彼らに襲い掛かった。一般の魔導師兵より格段に精度と威力の高い火の玉や氷の槍が、次々と鋼鉄騎士隊を捉える。おそらくサキュバスの化けた魔導師隊の攻撃だろう。
これでミルザム軍最大の武器は折れた。後は俺が敵陣に乗り込んで、王の首根っこをつかまえるだけ――
「マスター、王都に向けてランクA反応が急速に接近しています」
「なに?」
俺の背中に張り付いていたツクヨミが、緊急報告を口にした。このタイミングでイレギュラーとは、やはり今回の戦に呼応した策なのか。それとも単に俺の留守を狙った第三勢力か。
「リン将軍!」
「はっ!」
俺が呼ぶと、リンは素早く馬を駆ってやってくる。
「王都に襲撃があるようだ。私はそちらに対応する。この場は任せるぞ」
「かしこまりました。ご武運を!」
遠くでは、ミルザム軍の将軍メンディエッタとゲントロノフ軍のリープゲン侯爵の一騎打ちが始まっていた。ただあちらはマリアンロッテもいるのでリープゲン侯爵が負けることはないだろう。
後はミルザム王がどこで諦めるかだが、まずは王都で何が起きようとしてるかだな。
俺は大きく息を吐き出してから、『転移魔法』を発動した。