作品タイトル不明
04 怪しい反応
南方戦線は半日で決着がついた。
その日の午後は西方戦線に移動をしてリンやゲントロノフ公に南方戦線の顛末を話したり、20体のゴーレムを西方戦線に運んだりして終わった。
ミルザム軍は川の向こうで示威行動を取るだけで、それ以上の動きはなかった。やはり予想通りの策を取るつもりなのだろうか。こちらのゴーレムが増えたことでビビッてくれることを期待したい。
夕刻になり、俺はフォルシーナの様子を見に、ツクヨミとともにいったん城に戻ることにした。
いきなり執務室に転移すると来客などがあった場合に問題となるため、隣の使用人室に一度転移する。
使用人室には赤毛のメイド・ミアールがいて、俺の顔を見て一礼をした。
「陛下、お帰りなさいませ」
「うむ、特に問題はないか?」
「はい、お伝えするほどのことはなにもございません。お嬢様も執務を大変熱心にこなしておられました」
「ならばよい。済まぬが茶を用意して欲しい」
「かしこまりました」
使用人室から廊下に出て、執務室へと入る。
自分の執務机についていたフォルシーナが、ガタッと音を立てて椅子をひき勢いよく立ち上がった。
「お父様、お帰りなさいませ」
「うむ、フォルシーナもご苦労。執務は特に滞りはないか?」
「はい。今のところお父様に裁決いただくほどのものはございません」
「そうか。ツクヨミをこちらで連れているゆえ負担をかけるな」
「いえ、本来自分で処理すべきものですから。それよりも、お父様のほうはいかがなのですか?」
とそこでミアールが茶の一式を載せたワゴンを押して入ってきたので、俺とフォルシーナはソファへと移動した。
「南の戦線については決着がついた。ベランゴル民主国の軍は速やかに撤退していった。手も回しておいたので、ベランゴルが動くことはしばらくないだろう」
「さすがお父様です。戦に勝つのは当然、その上でさらに相手国の動きを掌握なさっているのですね」
「民主制というのは付け入る隙が多い制度でな、そこをついたまでのこと……と言いたいが、上手くいけばという話にすぎん」
「お父様の策が成功しないはずがありません。詳しいお話をお聞かせください」
フォルシーナは青い目を輝かせて身を乗り出してきた。しかもどこからかノートとペンを取り出して手にしていて、また記録するつもりらしい。これで策が上手くいかなかったら俺の黒歴史がまた1ページ増えることになるのだが。
とはいえ話をしないわけにもいかず、パリヨー将軍とのやりとりを一通り話して聞かせた。
フォルシーナはあいづちを打ちながら嬉々としてノートに記録を取っていて、その場にいたミアールに言葉の確認を取ったりしている。
しかしちょっと漏れ聞こえてくる2人の言葉を聞いていると、微妙に脚色が入っているようで、俺としてはかなり不安になってくる。
「……お前たちの手で首相をひきずり下ろし、私を新たな王として迎え入れよ。さもなくば議員全員をこの手で 縊(くび) り殺してくれよう……、こんな感じかしら」
「……ベランゴル民主国には一応今でも王がいるので……」
「……ならば無能な首相と王を放逐し、の方が相応しいわね……」
う~ん、もはや記録ではなくただの創作になっているような気がする。まあ個人で楽しむ分には文句を言う筋合いもないか。
「マスター、ご報告があります」
俺がお茶を飲んで一息ついていると、ツクヨミがやってきた。
「聞こう」
「さきほど、東方の国境線付近にランクA反応が急に出現しました」
「なに?」
「しかしその反応はすぐに消失しました。こちらの走査範囲外に出たものと思われます」
「ふむ……。東方の国境線というとミュールザンヌ教国か。そのような強力な人材がいるとは聞いたことがないが」
ツクヨミのいう『ランクA反応』は魔族軍四至将クラスの強者である。一般的に人間の強者はランクBが限界で、フォルシーナはじめ原作ゲームの重要キャラや、各国の将軍クラスがそれにあたる。ゲームの主人公パーティメンバーが終盤ランクAになるくらいだろう。もっとも原作ゲームにツクヨミはいなかったのでただの想像でしかないが。
ちなみに俺は測定不能の『ランクX』らしい。『魔の源泉』って事実上 魔力無限(チート) だから仕方ない。
そのやり取りを聞いて、フォルシーナがノートから顔を上げた。
「お父様、ランクAというのは私やドルトン将軍などより上の者ということですね。どういったことが考えられるのでしょうか?」
「わからぬな。可能性があるとすれば残りの魔族軍四至将か、先日エルフの里に現れた『鬼』ということになるだろう。しかし四至将が動けばラエルザが知らせてこよう」
「ということは、あの『鬼』がまた……?」
「その可能性が高かろうな。一応警戒はしておくとしよう」
といってもツクヨミがいる限り動きはすぐに掴める。今更ながらにツクヨミの存在も ズル(チート) である。
しかし『鬼』がこのタイミングで動いてきて、しかもミュールザンヌ教国でなにかしているというなら面倒なことだ。
そもそもミュールザンヌ教国も、こちらに対して 肚(はら) に一物があるという話であった。ミルザム王国が元王妃の後ろ盾となることを認めたという情報もあったので、このタイミングで動きがない方がおかしいとも言える。
なにを仕掛けてくるのかは気になるが、すべてチート全開で跳ね返させてもらうだけだ。向こうにとっては納得がいかないかもしれないが。