軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07 陣中での打ち合わせ

エメリウノから『土壌改良石』開発成功の報告を受けた後、俺は平原の陣中にいる将軍ドルトンとリンのところへ転移した。

本部テントに入ると、ドルトンとリン、それと幹部数名がお茶を飲んでくつろいでいた。

もちろんサボっているわけではなく、俺が休んでおけと指示したからなのだが、俺がテントに入ると全員ビシッと立ち上がって敬礼をしてくる。

「ご苦労。座ってよい」

俺が椅子に座ると、リンが直々にお茶を淹れてくれる。将軍がやることではないと思うのだが、止めるのも変なのでありがたくいただいておく。

「国王陛下もお疲れ様ですな。なにか大きな動きがあったんですかね」

俺に続いて全員が椅子に座り直すと、金髪の偉丈夫ドルトンが早速聞いてくる。

「ミルザム、ベランゴル両国ともに我が国に宣戦布告をしてきた。ミルザムは先代王妃を抱き込んで王位奪還を大義名分にしている。ベランゴルはそれに乗った形だな。そちらは我が国の錬金術が狙いのようだ」

「ミルザムは長い間この国を目の敵にしてますからねえ。しかしその先代王妃は本物なんですかい?」

「ほぼ間違いなく本人ではあるだろう。ただ国内の血縁は完全に静観の構えだ。恐らくミルザムの使いが接触してはいるのだろうがな」

「陛下の王都を落とした手腕を見れば、動く馬鹿はいないでしょうな」

「そもそもブラウモント国王陛下が王位におられることを疑っている者などこの国には一人とておりません。ミルザム王国の読みは完全に外れることでしょう」

と断言するのは、もう一人の将軍、『燐光の姫騎士』リンだ。

青髪ショートのいかにも武人といった雰囲気の美人なのだが、俺に向けられた目は妙に熱っぽい。といっても俺の臣下になった時からこんな感じなので、これが彼女の普通なのかもしれない。

「そうあって欲しいものだ。さて、その両国の軍だが、国境に現れるのは明後日の夕刻になる。そこで明後日の朝に部隊の移動を行うので、そのつもりで準備を進めてもらいたい」

「了解でさ」

「は、了解いたしました」

「向こうは楽な戦いと思っているはずだ。そこで初手で圧倒的戦力差を見せつけ、相手方の戦意を完全に挫く。敗走した相手は追わずそのままにしておけ。こちらから先方の国へ攻め入るつもりはない。兵たちもそこまでの戦いは不可能だろう」

「ですな。大勝とは言え疲れるもんは疲れますんで」

「兵たちの士気から言えば、継続しての進軍は不可能ではありません。しかし陛下のおっしゃる通り、兵を休ませるべきと思います」

「うむ。さて、もう一度状況を整理しよう。今我が国に、西からミルザム王国、南からベランゴル民主国の軍が迫っている。兵力はそれぞれミルザムが3万、ベランゴルが2万と報告があった」

俺はテーブルの上に広げてあった地図に、それぞれ駒を置いた。

「それに対して現在、西はゲントロノフ公の兵1万、南はローテローザ公の兵1万が国境近くに陣を張っている。そこで西はリン将軍、貴公の軍2万5千にて迎え撃ってほしい。ミルザムの兵は精強ゆえ、こちらはゴーレムを30体、それからサキュバ……ではなく、精鋭魔導師部隊をつける」

「はっ、お任せください。勘違いをした愚かなハイエナどもを叩き潰し、その生首を陛下の前に並べてご覧にいれます」

リンが背筋を伸ばして宣言する。言葉がちょっと物騒な気もするが、やる気があるのはいいことである。ちなみにこの世界にもハイエナはいる。念のため。

「敵将はなるべく生け捕りにせよ。貴公の腕なら難しくはあるまい」

「はっ。それが陛下のお望みであれば」

「うむ。それから南はドルトン将軍が同じく兵2万5千を率いて向かって欲しい。ゴーレムは20体だが、ローテローザ公の軍も精強、さらに相手の数も少ない。ドルトン将軍なら十分な兵力だろう」

「十分どころかおつりがきまさ。お任せくだせえ」

敬礼しながら答えるドルトンはいつもの通りで気負いはない。なんだかんだ言って頼りになる男である。

「今回は魔族相手ではなく人間の軍が相手だが、正面からやり合えば負けることはないだろう。本来なら相手の策を警戒する必要があるが、そもそも向こうはこちらに十分な軍勢がない前提で侵攻してくるはずだ。つまらぬ策など弄してはくるまい」

「正面からの戦いであれば負けることはありません。槍にかけて必ず敵将を討ち取ってみせます」

「ですな。ところで陛下はどうなさるんですかい?」

「どちらの戦場にも顔を出すつもりだ。可能であれば単騎で突入して敵の総大将を捕え、敵の戦意を 挫(くじ) いて退かせる。このような下らぬ戦いで兵を失うわけにはいかぬからな」

俺の言っていることは常識外れもいいところなのだが、個人の武勇が集団に勝るこの世界ではそれほど珍しい話でもない。

事実リンもドルトンも、そして他の幹部たちも驚いたそぶりは見せなかった。

「陛下ならば可能と思われますが、くれぐれもご注意を」

「まああの巨大ドラゴンすら従えちまう陛下ですからなあ。そういやいっそのことあのドラゴンを戦場に呼んだらどうですかい? あれを見れば兵士は一発で戦意を失うと思うんですがね」

真面目にリンに対して、ドルトンがとんでもないことを言う。

いや、実際それができるなら面白くはあるが、それはそれで俺に対する妙な風評被害が広まる気もしないではない。だってドラゴンに乗って聖剣を振り回す陰険丸眼鏡国王とか、ちょっと絵面が酷すぎると思うのだ。

「ドルトンの策は面白いが、エルゴジーラは自らの郷へ帰っていった。こちらへ来ることはもうあるまい。呼ぶにもその方法もないのでな」

「それは残念ですな」

「しかし陛下のあの雄々しきお姿、一度愚か者どもに見せたかったものです。見れば自分たちがいかに身の程をわきまえぬ小人か、嫌でも理解したことでしょうに」

少し過激なことを言うリンの、俺を見てくる目はやはりどこか怪しい気がする。熱っぽいというよりトランスしている感じに近いし。ゲームでも真面目な 人間(キャラ) だったから、極端に振れるとブレーキが効かないタイプかもしれない。

「リン将軍の言葉は嬉しく思うが、私はそこまでの人間ではない。では両将軍、そして皆もよろしく頼むぞ。我が国の平安は諸君らの双肩にかかっている」

「必ずや勝利を陛下に捧げます!」

「まあ頑張りますわ」

さて、これで準備は問題なく整った。後は再びの合戦に勝つだけだが、本当に人間相手は気が重い。

もっとも国王をやる以上避けては通れない道であるし、マークスチュアート的には戦は全く経験がないわけでもない。ここは腹を決めてことにあたるとしよう。