軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 魔族戦終結

四至将ドブルザラクが倒されると、魔族であるカオスデーモンたちは恐慌状態に陥った。

同じ四至将エルゴジーラの裏切り(魔族視点)に加えての衝撃であるから、もはや組織的行動を起こす余裕などない。

「ドブルザラク様ガ倒サレタダト!?」

「エルゴジーラ様ニマデ裏切ラレタ我ラニ勝チ目ハナイゾ!」

「退ケッ、モンスタードモヲ囮ニシテ撤退ッ!」

魔族幹部たちが一斉に騒ぎ出し、カオスデーモンを従えて一斉に飛んで逃げ始めた。

どうやらこれで戦の趨勢は完全に決まった。

モンスターの大軍はまだ半分ほど残っているが、彼らが撤退することはない。兵たちにはもう少し頑張ってもらわなければならないが、トロールやオーガたち上位モンスターをこちらで間引いておけばなんとかなるだろう。

フォルシーナたちは俺の方に手を振っていたが、今まで遠巻きにしていたモンスターが迫ってきたので、戦いながら兵たちの方へ下がっていった。彼女らにももう少し奮戦してもらわないとならないが、雑魚相手にならば万が一もないだろう。

「エルゴジーラよ、済まぬがもう少し背を貸して欲しい」

「構ワヌ。好キニセヨ」

俺はその後もエルゴジーラの背に立って、『ライトオブドゥーム』の極太レーザーで地上を薙ぎ払い、『ライトニングレイン』で雷の雨を降らせ、『サイクロンディザスター』によって竜巻を発生させ、大量のモンスターを駆逐していった。

魔力無限を実現する『 魔の源泉(チート) 』の効果はまさにこの時のためにあると言って過言ではない。しかも倒すごとに大量の力を取り込むことになるので、インチキ中ボス国王がさらにレベルアップする感覚がある。

そういえばこれだけ大量のモンスターと戦えば、一般兵士もモリモリレベルアップしてるはずなんだよな。

実はこれってラッキーなイベントだったり……というのはさすがにゲーム脳が過ぎるだろうか。

その後戦は1時間ほどで完全に終結した。

魔族幹部とカオスデーモンたちは撤退したが、取り残された大量のモンスターたちはそのまま戦い続け、一匹残らず討伐された。

今は戦場に残るはおびただしい量の魔石とドロップアイテムを、後方支援していた部隊がマジックバッグを腰に下げて回収しているところだ。魔族との戦いは勝っても賠償金などを取れないという厄介さがあるのだが、こちらの被害が少なければ魔石とドロップアイテムで収支はプラスになる。といっても、今回のように圧勝するパターンは歴史的にも一度もないだろうが。

俺はエルゴジーラに本陣の真上まで移動してもらい、そこで彼とは別れることにした。

「貴殿の協力のお陰で我が軍が大きな損害を受けることを避けられた。礼を言うぞ」

「我ハソナタヘノ恩ヲ返シタニ過ギヌ。本来ナラ我モマタ、ドブルザラクト同ジ末路ヲ辿ッテイタデアロウカラナ」

「この後は『幻獣境』へと帰るのだな」

「ウム、本来ノ役目ヲ全ウスルコトニナロウ。モシ『幻獣境』ニ来ルコトガアレバ声ヲカケヨ」

「そうだな。いずれ訪れることもあろう」

元プレイヤーとしてはリアル幻獣も見てみたいし、便利アイテムはいくらあっても困らないからな。

「ではな」

俺は『転移魔法』で地上に降りた。

下から見上げるエルゴジーラはあまりに巨大なドラゴンだ。周囲では大勢の兵士たちやドルトンらが出てきて同じように空を見上げているが、全員口をポカンと開いて固まっている。そのおかげで俺が地上に転移したことすら気付いていない有様である。

「デハサラバダ、『全テノ幻獣ヲ従エル者』ヨ」

しまった、その怪しげな呼び名がなんなのか聞くのを忘れてしまった。

という後悔も空しく、エルゴジーラは大きくひと羽ばたきすると、凄まじいスピードではるか北へと飛び去っていった。その際空から大皿ほどの鱗が何枚が落ちてきて、地面に突き刺さった。どうやら土産も残してくれたらしい。『龍王の鱗』は超貴重な錬金素材である。

俺がふぅと一安心の溜息をついていると、『モバイルフォートレス』のほうからフォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザ、ミアール、クーラリアの5人が走り寄ってきた。

「お父様、おめでとうございます! この度の戦もお父様の完璧な采配とご活躍によって大勝したということです!」

フォルシーナは俺の胸にすがりつくくらいの距離まで迫ると、満面の笑みで見上げてきた。

さすが人気ナンバーワンヒロインの近距離笑顔は凄まじい破壊力である。しかしこの笑顔を向けてくれるということは、やはり追放ルートは薄いと見ていいのだろうか。

「フォルシーナたちの戦いも見事だった。上から見ていたが、あの四至将ドブルザラクを完全に封じながら戦っていたな」

「ありがとうございます。ドルトン、リン両将軍と、皆の力が合わさった結果と思います」

「うむ。しかしフォルシーナの『アイスフォートレス』と『アイスパイル』の援護は素晴らしかった。父として鼻が高いぞ」

「すべてはお父様の 薫陶(くんとう) の賜物です」

人前で褒めたのが恥ずかしかったのだろうか、頬を赤らめながら下を向いてしまうフォルシーナ。

俺はその肩に両手を置いきながら、その後ろで妙にうずうずしている雰囲気のマリアンロッテたちに目を向けた。

「マリアンロッテ嬢の補助、回復魔法もやはり非凡であったな。あれなら皆も安心して戦えたであろう」

「は、はい、ありがとうございます……!」

「アミュエリザ嬢の槍さばきはすでに国内でも一、二を争うレベルではないか」

「ありとうございます。しかしまだリン将軍には及びません。より精進をいたします」

「クーラリアも剣士として申し分ない技量を身につけたな。あの強化スキルも素晴らしかったが、あれはどのような技なのだ?」

「うへへへっ、ご主人様に褒められると嬉しいぜです。あのスキルはなんか鍛錬してたらできるようになったですよ。たぶん獣人族に伝わる、『獣魂覚醒』って奴だと思うぜです」

「なるほど」

『獣魂覚醒』はゲーム知識にはないが、マークスチュアートの知識にはある。確か獣人族の元になった獣の特性を目覚めさせるという、獣人族特有の奥義だったはずだ。だけど狐の魂を呼び出しても尻尾は増えないと思うんだがなあ。実はレア獣の獣人だったりするのだろうか。

「それとミアール、最後のとどめは目が覚めるようだった。直前まで気配を消していたのもよかったぞ」

「ありがとうございます。お館様とお嬢様のお陰でございます。それを私が止めをさしたのは、そのような作戦だったからでございます」

「ふむ。もしやレアアイテムを狙ったか」

「はい、お嬢様の指示でございます。そしてこちらがそのアイテムになります」

ミアールが腰のマジックバッグから取り出したのは、涙滴型にカットされた宝石のついたネックレスだった。『大鬼の涙』という微妙にダジャレ感の漂うアイテムであるが、確かにレアドロップではある。

「確か効果は『回復力上昇』であったな。とすると回復魔法を使えるマリアンロッテ嬢が身につけるとよいだろう」

『回復力上昇』は本来はドブルザラクの持つ『自動回復』スキルを強化するものだが、プレイヤーキャラには『自動回復』スキル持ちはいない。ゆえに『大鬼の涙』をプレイヤーキャラが身につけると、『回復魔法、回復アイテムの効果が上昇する』という効果に変化するのである。

「あ、ありがとうございます国王陛下」

お礼を言いながら、マリアンロッテが前に出てくる。

ミアールが『大鬼の涙』をいったん俺に渡してきたので、そのままマリアンロッテに渡そうとすると、マリアンロッテはなぜか後ろ髪を両手で上げて頬を赤く染めた。

「あ、あの、陛下につけていただけると、とても嬉しいのですが……」

「嬉しいのですが」と言っているわりにはすでにつけてもらう体勢に入っているのだが、まあそこまで準備されて無下にするのも可哀想である。

フォルシーナがまだ俺の胸から離れないので、その身体越しにマリアンロッテの首に『大鬼の涙』をつけてやった。いや、なんかよくわからない絵面だなこれ。

「ありがとうございます! 一生大切にいたします!」

胸に下がる『大鬼の涙』を両手で触れながら、真っ赤になってお礼を言うマリアンロッテ。その脇腹をアミュエリザが後ろからつついて「うまくやったなマリアンロッテ」とか小声で言っているのはなんなのだろうか。アミュエリザにあげた『スカーレットプリンセス』は『大鬼の涙』以上の強力アイテムなのだが。

「ところでご主人様、あのでっかいドラゴンは結局なんだったんだですか?」

クーラリアがそう聞いてくると、フォルシーナもようやく身体を離して、うなずきながらこちらに顔を向けた。

「あれが四至将エルゴジーラだ。だが話を聞くと、魔宰相ロゼディクスに魔法をかけられ脅されて仲間になっていただけらしいのでな。その魔法を解いたところ協力を得ることができたのだ」

「うへえ、さすがご主人様、あんなおっそろしいドラゴンすら懐柔しちまうんだなです」

「お父様の素晴らしさはもはや天を突き抜けるほどですね。これでますますお父様の名声が 海内(かいだい) に広がることでしょう」

「陛下はもしや伝説のドラゴンライダーにおなりになられたのですね! ドラゴンの背にまたがり光の槍をふるう……まさにこの世界を征する王の中の王のお姿でした!」

「国王陛下の御威光は、魔族の将をも正しき道に導くのですね。これはオルティアナ様にも是非お伝えしなければ」

興奮しているだけのフォルシーナやアミュエリザはともかく、マリアンロッテの目が微妙にトランス気味に見えるのは気のせいだろうか。

ちなみにアミュエリザの言う「ドラゴンライダー」というのは大陸中で読まれている英雄譚に出てくる言葉であって、実際にそんな称号も役職も存在しない。

皆で騒いでいると、将軍のドルトンやリンもやってきて、さらにエルフのゼファラ、アルファラ親子も加わって、戦勝ムードは収拾がつかなくなりそうな雰囲気になってきた。

つられて俺も多少浮かれた気分になっていたのだが、遅れてやってきた古代アンドロイドのツクヨミが袖を引っ張ってくると、それは一気に冷めてしまった。

「マスター、西と南の国境沿いに大規模な反応が接近中です。それと、緊急に連絡をいただきたいと宰相マルダンフ侯爵からの連絡が入っています」

「む……」

俺はマジックバッグから『通話の魔道具』を取り出した。コールするとマルダンフ侯爵はすぐに出た。

「マークスチュアートだ。なにがあったのだろうか?」

『おお陛下! 実は先ほどミルザム国の使者が参りまして、王位を正当な後継者に譲れという勧告を伝えてきたのです。どうやらミルザム国には先代王妃が保護されていて、ミルザム国はその後ろ盾となると主張しているようです』

「ふむ、そう来たか」

『そして同時にベランゴル国が、ミルザム国に呼応して使者を派遣してきました。不当に王位についた王の圧政から民を救うなどと、ありもしない大義名分を口にしております』

「度し難いな。そして今、我が国に向かってそれぞれの軍勢が進んでいるということか」

『その通りでございます。こちらの対応次第ではすぐに攻め込む態勢とか。今ローテローザ公とゲントロノフ公の方で急ぎ軍を準備しておりますが、向こうは合わせると5万に近い数のようです』

「わかった、すぐに王城へ戻ろう」

『よろしくお願いいたします』

なるほどある意味事前の情報通りではあるが、この動きには不自然なところもいくつかある。

まあその裏はなんとなく想像はつくが……問題は、まず目の前の面倒事を退けることだろう。

俺はドルトンとリンにその場の処理を任せ、エルフたちは丁重に礼を言って一旦里へと送り届け、そしてフォルシーナたちを連れて城へと転移するのであった。