軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 イレギュラー対応と四至将討伐

エルゴジーラの背中から見下ろす戦場。

前衛の劣勢を見てか、後方にいたカオスデーモンたちに動きがあった。

いくつかの部隊のカオスデーモンたちが、背中の羽根をはばたかせ飛び上がる。その中心にいるのは魔族軍の幹部である。頭部に二本のツノを、背に蝙蝠の翼を持った人間型の魔族で、単体でもAランク冒険者と渡り合える力を持つ者たちである。

幹部を中心として、100体ほどのカオスデーモンで構成された魔族部隊は20ほどあるようだ。あれが前衛まで到達すると、それはそれでかなりの脅威である。

だがそれよりも俺の目を引き付けたのは、空を飛ぶカオスデーモンの中で、明らかに魔力が異常に膨らんでいるものがいることだ。

以前見た『ソウルバーストボム』をかけられた人間と同じ状態である。レギルの時と発動の条件などが違うようだが、それは恐らく魔法に長けた魔宰相ロゼディクスが工夫をしたからだろう。

エルゴジーラも気付いたらしく、そちらに首を向けながら口を開いた。

「ムゥ、確カニオカシナ魔力ヲ持ツカオスデーモンガ何体カイルナ。アレガソウダナ?」

「そうだ。距離を詰めてくれればこちらが魔法で無効化する」

「心得タ」

巨体を翻し、エルゴジーラが降下を開始した。

圧倒的な空の王者が迫っているのに気づいて、空を飛ぶカオスデーモンだけでなく、幹部魔族までが驚いて散っていく。しかしその中で、なんの反応もなくフラフラと前を向いて飛び続けるカオスデーモンがいる。

もちろんそれが『ソウルバーストボム』をかけられた奴なのだが、こんな形で見分けがつけられるというのも面白い。

射程距離に入ったのを見計らい、俺は『シグルドの聖剣』をそのカオスデーモンの方に向ける。

あのカオスデーモンを撃ち落として爆発させれば一石二鳥じゃないか、という考えが脳裏をよぎるが、さすがにそれをやったら俺も『鬼』と同じである。

「『ディスペルオール』」

思い直して、全ての魔法を無効化する公式チート魔法を放つ。黒い波動が眼下を飛行するカオスデーモンたちを通り過ぎると、そのカオスデーモンは急に我に返ったのかその場で止まり、そしてエルゴジーラの存在に気づいて慌てて逃げていった。

「これでよい。エルゴジーラ、次を頼む」

「任セテオケ」

その後も戦場の上を飛び回り、次々と『ソウルバーストボム』をかけられたカオスデーモンに『ディスペルオール』をかけて回った。途中余裕がでてきたので、幹部魔族に『ライトオブドゥーム』を浴びせておくことにした。さすがに一撃では倒せないが、ボロボロになって地上に落下していくので確実に戦闘不能にはなっているだろう。

「ドウヤラ全テ消セタノデハナイカ?」

「戦場の上をもう一飛び頼めるか? 最終確認をしたい」

「承知シタ」

上空から魔族幹部やトロールたちを『ライトオブドゥーム』の極太レーザーで狙い撃ちにしながら、魔族軍の上空を横断する。

どうやら妙な魔力を持ったものは完全に消えたようだ。エルゴジーラのおかげで要注意であったカオスデーモン部隊もバラバラに逃げ回って組織的な行動ができずにいる。

前線付近では未だモンスターの大群と王都軍がぶつかりあっている。よく見ると王都軍の前衛部隊は巧みな連携で交代しながらモンスターに当たっていて、危なげなく立ち回っているように見える。後ろに下がった兵士は『ポーション』で回復ができているようだ。重傷者が仲間に引きずられていく姿も見えるが、死んでさえいなければ『エクストラポーション』で助かるだろう。

気になるのはドブルザラクと戦っているフォルシーナ達だ。

上から見ると、戦場の中でそこだけぽっかり穴が開いたようにモンスターや兵士たちが遠巻きにしている場所があり、そこに巨躯の赤肌オーガ、両手に大斧を構えたドブルザラクと、将軍ドルトン、将軍リン、獣人クーラリア、少女騎士アミュエリザを前衛に、フォルシーナ、マリアンロッテ、ミアールを後衛にしたパーティが対峙している。

すでに戦いは始まっていて、ドブルザラクは身体のあちこちに傷を負っている。一方でフォルシーナたちは、ドルトンの鎧やリンの盾にダメージは見られるが、怪我人はいないようだ。まあいてもマリアンロッテがすぐに回復してしまうのだが、

「ウグググッ、ナンナノダ貴様ラッ、人族の分際デェッ!!」

「今度こそお前を倒す、四至将ドブルザラク!」

リンがランスを突き付けて、全身に燐光をまとわせる。自己強化スキル『シャイニングオーラ』だ。

「リン将軍、共に参ります!」

その隣にアミュエリザが並び、やはり全身から炎のようなオーラを立ち上らせる。こちらも自己強化スキル『クリムゾンドレス』だ。『緋の麗槍』の二つ名に相応しい技である。

「こりゃ負けてらんねえなあ!」

ドルトンがハルバードの石突きで地面を叩くと、彼の全身がうっすらと輝く。どうやらドルトンも奥の手の自己強化スキルを持っていたようだ。

「オレも忘れてもらっちゃ困るぜ!」

言葉遣いが元に戻っている狐獣人のクーラリアも、全身に金色の粒子をまとい始めた。狐の尻尾が3本に増えている気がするが、そんな技は聞いたことがない。

「『ホーリーエッジ』! 『ディフレクションウォール』!」

マリアンロッテが攻撃力上昇、防御力上昇魔法を発動すると、全員の武器と防具が白い輝きを放つようになる。う~ん、一斉バフはあまりに恐ろしいな。ドブルザラクはすでに最終形態なので、これ以上の強化はない。ということはほとんど詰みである。

「ウガアァァッ!!」

ドブルザラクが両手の斧を振り回しながら突進する。斧には赤黒いオーラが乗っているので、『ミンチメーカー』という必殺技のはずだ。

ゲームでは食らっても大ダメージくらいで済むが、リアルでは食らったら本当にミンチにされそうだ。

まさに鬼の形相で迫る巨躯の四至将を前に、フォルシーナたちは非常に落ち着いている。

「『アイスフォートレス』!」

フォルシーナが『精霊樹の杖』を振るうと、パーティの前にいきなり巨大な氷の壁が現れる。氷属性防御魔法『アイスウォール』の上位魔法で、ゲームでは一定時間攻撃を完全防御する魔法だ。

すでに技を発動しているドブルザラクはそのまま氷の壁に突っ込んでいき、両手の斧でガリガリを氷を削り始める。しかし代わりに突進は完全に止まってしまう。

ドルトンとリン、アミュエリザとクーラリアはその隙に左右に分かれ、氷の壁を回り込んで、側方と背後からドブルザラクに攻撃を仕掛ける。

光をまとったリンが『シャイニングチャージランス』を発動、滑るように突進していき、ランスをドブルザラクの脇腹に突き刺す。

「『サウザンドスラスト』!」

さらにアミュエリザが無数の突きを放つと、ドブルザラクの全身が穴だらけになる。

アミュエリザの槍『スカーレットプリンセス』はゲーム内最強武器の一角なので、中ボスのドブルザラクの防御力では耐えられない。

さらにドルトンがハルバードを大上段から振り下ろし、クーラリアが超高速移動しながらすれ違いざまに刀を振ると、それぞれドブルザラクの背中とももの裏をザックリと切り裂いた。

「ウグオォォッ!? フザケルナァッ、人族ガァアァッ!!」

そのダメージで技を 中断(キャンセル) されたドブルザラクは、苦痛に歪んだ顔を憤怒の色に塗り替えながら、振り返って吠えた。

「殺ス、殺スウウゥゥッ!!!」

大斧を振り上げて、ゆっくりと前に出るドブルザラク。標的をアミュエリザに定めたのは、先ほどの攻撃で一番ダメージを食らったからだろう。

「死ネェェッ!!」

「させねえよッ! 木偶の坊がッ!」

右の大斧を振りかざすが、その肘あたりをクーラリアが『燕返し』で二度斬りつけた。

「ウガッ!?」

やはり攻撃が 中断(キャンセル) され、その隙にドルトンとアミュエリザがさらに一撃ずつ食らわせる。

「クソガァッ!」

次は左の斧。だがその肩に、太い氷の杭が突き刺さった。フォルシーナの『アイスパイル』だろう。

「アガァッ!?」

「ここまでだ、ドブルザラク!!」

リンが叫び、再び『シャイニングチャージランス』で突進する。

その燐光を放つランスは、ドブルザラクの鳩尾に斜め下から突き刺さり、そしてその奥の心臓を捉えたようだ。

「グハァッ!!」

ドブルザラクの口からおびただしい量の血があふれ、そしてドブルザラクの巨体は地に倒れ伏し……はしなかった。

その黄色く濁った目が、ギョロリとリンを見下ろす。

「……マダ、ダァ!」

「いえ、終わりですよ」

その声は、ドブルザラクの肩のあたりで聞こえた。

そこにはショートソードを構えたメイド服の少女、ミアールがいる。どうやら『アイスフォートレス』の氷の壁からジャンプしたらしい。

ミアールがショートソードを一閃させると、ドブルザラクの首が半ばまで切り裂かれた。

「グァ!? ……バカ……ナ……」

その一撃は頸椎まで切断したようだ。

驚愕と苦悶の表情を浮かべたままドブルザラクの巨体はゆっくりと地に崩れ落ち、そして大量の黒い霧となって消えていった。