軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20 破邪の弓回収と地の精霊クーロの保護

試練を終えた俺とアルファラは、通ってきた通路を元にたどり、溶岩の上の道を歩いて皆のところへ戻った。

結局リバーシを4回戦やったので一時間半くらいはかかってしまっただろうか。俺たち2人の姿を見てフォルシーナたち7人が一斉に駆け寄ってきた。

真っ先に俺の前に来たフォルシーナが、俺の胸に手を置きながら潤んだ目で見上げてくる。

「お父様、無事試練を乗り越えられたのですね。これほど時間がかかるとは思っていなかったので心配をいたしました」

「時間が読めないことは先に伝えておくべきだったな。だが問題なく試練は終えた、安心するがいい」

「お父様のことですから試練を越えられないとは思ってはおりません。ただ試練がどのようなものであったか後でお教えください」

「そうしよう」

と答えたのに、フォルシーナはそこでなぜか微妙に目のハイライト薄くして、うっすらと『氷の令嬢』面を表に出してきた。

「それと中でアルファラとどのようなやり取りがあったのかもお教えください。お父様のことですから、なにか致命的な一言をおっしゃっている可能性もありますので」

「致命的とはまた 大仰(おおぎょう) な。なにを心配しているのかはわからぬが、アルファラ殿も言質などを取るような不誠実なことをする人物ではないぞ」

「それはわかっております。しかしお父様が気づかぬこともあるかもしれませんので」

と食い下がってくるフォルシーナの後ろで、マリアンロッテまでが首をうんうんと縦に振っている。ミアールもなにか言いたそうな様子で、逆にクーラリアはなぜかニヤニヤしているので、俺としても「わかった」と答えるしかなかった。

そのやりとりを後ろで見ていたアルファラが、焦れたように俺の腕をとってきた。

その動作にフォルシーナやヴァミリオラの目が険しくなった気がしたのだが……確かにアルファラが俺の体に触れてくるのは初めてかもしれない。

「人族の王……いや、マークスチュアートよ、『破邪の弓』を早く取り戻したい。試練を乗り越えたのだからもう受け取ってもよいのではないか?」

「うむ、問題あるまい」

俺はお座り状態の犬型ゴーレム……地の精霊クーロへと向き直った。

「精霊クーロよ、試練は乗り越えた。これがその証拠だ。アルファラ殿」

「ああ、これだ」

アルファラが先ほど得た『地精霊のオーブ』を差し出すと、クーロはそれを口にくわえて飲み込んでしまった。

「『破邪の弓』を受け取ってよいだろうか」

「グル!」

クーロはうなずくと、その場で「伏せ」の体勢を取った。

その姿は石でできている上にかなりの巨大犬なのだが、伏せをしている姿は妙に可愛らしく、ちょっと撫でたくなってしまった。マークスチュアートは実は隠れ犬派だったのだろうか。

「アルファラ殿、『破邪の弓』を受け取るがよい」

「うむ、では……」

アルファラは『破邪の弓』を拾いあげると、構えたり弦を軽く引いたりして具合を確かめ始めた。特に問題はなかったらしく、俺に向かってうなずいた。

「確かに受け取った。これで母上にいい報告ができるだろう」

「それは重畳。これでエルフ族との協約も結べるであろうな」

と答えつつ、俺はまだ伏せをしている地の精霊クーロの前に片膝をついた。

「ところでクーロよ。貴殿は先ほどのアンデッドにその身を狙われているようだ。もしあれが再びこの地に現れれば、貴殿は身を守り切れぬのではないか?」

「グル……」

クーロはわずかに頭を上げ、そしてゆっくりとうなずいた。

「であれば、私の治める土地に来るのはどうだろうか。我が城の側ならば、先ほどのアンデッドも簡単には手が出せぬ。それに水の精霊イヴリシアもすでにそこにかくまわれているのだ。いかがだろうか?」

「グルル……」

クーロはしばらく俺のことをじっと見ていたが、不意に立ち上がると回れ右をして、溶岩だまりの中にドボンと飛び込んでしまった。

精霊に興味のあるマリアンロッテが、不安そうな顔をして近づいてくる。

「国王陛下、精霊様はどうなさったのでしょう? やはり一緒には来ていただけないのでしょうか?」

「いやそうではあるまい。恐らくは――」

と言いかけたところで、溶岩のなかから再び精霊クーロが飛び上がってきた。

その口には黒い光沢をもった大きめの石が咥えられている。

クーロはその石を俺の方へ差し出すようなしぐさを見せた。俺が両手を出すと、その手の上に石を置いて、クーロはお座りの体勢になる。

「うむ、『地精霊の 褥(しとね) 』、確かに受け取った。我が城のよい場所にこちらを埋めよう。それでよいのだな?」

「グル!」

クーロはうなずくと、巨体を一跳びさせて石の中にスルッと入っていった。このあたりは水精霊イヴリシアとほぼ同じシステムである。

「さすが国王陛下です! 地の精霊様の信頼まで勝ち取られるとは」

マリアンロッテが嬉しそうに微笑みながら俺の手を取ってくる。聖女オルティアナに感化されたのだろうか。これが聖女の基本アクションでないことを祈るばかりだ。

「あのアンデッドのおかげで信頼されたのかもしれぬな。皮肉なものだ」

「ですがあのアンデッドは陛下でなければ勝つのは難しかったでしょうから、精霊様にとっても救いとなったはずです。しかしあのアンデッド、一体どのような存在なのでしょう。知性があるようでしたし、かなり高位の存在に思えましたが……」

「恐るべき敵であるのは間違いなかろうな」

俺が『地精霊の褥』をマジックバッグにしまっていると、『破邪の弓』を肩にかけたアルファラが俺の前にやってきた。

「マークスチュアートよ、先ほどの犬のゴーレムが精霊というのは本当なのだな?」

「うむ。彼の者は大いなる精霊の一柱、地の精霊クーロだ。話をした通り私が城で保護をするつもりだ」

「なぜお前はそのような存在といとも簡単に取引ができるのだ」

「なぜと言われても、私は誠の言葉で語りかけたに過ぎぬ。取引ではなく、行動で信頼を得たということであろう」

「それがお前のやり方というわけか。なるほど確かに立派な王なのであろうな、マークスチュアートは。それならば私としてもますます文句はない」

そこでうんうんとうなずきながら、次第に嬉しそうな顔をするアルファラ。

どうも俺に対する態度が微妙に変わってきた気がするが、これはきっと『試練』をクリアしたことで好感度が上がったということだろう。ゲームだとこれでアルファラのパーティ入りが確定するのだが、現実だとどうなるのだろうか。できれば俺のところに来てフォルシーナたちと一緒にレベルアップに勤しんでもらいたいのだが。

ふと見ると、フォルシーナがまた冷気をまとい始めていて、メイドのミアールは無表情を濃くし、狐獣人のクーラリアはさらにニヤニヤが強くなっている。

女公爵ヴァミリオラの視線もかなり厳しく、どうやらアルファラの態度変化によって俺が彼女を狙っているなどという誤解が生まれつつあるようだ。

まあアルファラの態度は『破邪の弓』を取り戻してテンションが上がってるだけだろうし、それはエルフの里に戻れば勘違いだとわかるだろうけど。