軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13私たちがノンファン様を虐げた報いは嘘をつけなくなる呪いでした。嘲笑と祈りのあいだと嘘つきな令嬢たちの終着点

「ですので私たちはノンファン様を見ながら大丈夫なのかしらと心配しておりましたの」

大人というには幼くて子供というには悪意を知る年齢の子供たちが必死に今を生きるため、口を忙しなく動かす。彼女達がこんなに必死になっているのは、妖精の愛し子の姉を持つ妹の方と同世代だからだ。

名をノンファン。名前を知ったのは実は最近だ。正確な名前を知らないまま「汚い子」「無視する子」と子供だけに通じる悪意ある呼び方でたまに話題に上がる程度。

パーティなんて場所に一年に一度くらいしか出ないのにサイズの合わないドレスを着てずっと食べているのだ。汚いの意訳は意地汚い。

無視をする子は話しかけても一心不乱に食べ続けているから、いつの間にか同世代の中では変な子として笑いものにするのが常設になっていた。

「ノンファンさん。そんなに食べて恥ずかしくないの?」

親も近づくなと言ってはいたが十代前半の子供に通じるわけもなく、会ったらちょっかいをかける子供が一定の割合存在した。

悪意は一つなら悪いことと認識して浄化されていくが、塊になると麻痺をして悪いことと思わなくなる。今回起きていたことはそういうことだ。

少女は話しかけられても相手を気にせず食べ続けている。誰かと話すこともなく古臭い服を着て、食べ方にもマナーなんてものを感じ取れない。それを改めて知り、女の子たちの集団が意地悪くクスクスと嘲り笑う。

「あら、可哀想よ。この子話せないんだから話しかけちゃいけないでしょ?」

「そうだったわね。ごめんなさい」

わかっていて話しかけ、わかっていてお互い悪意を持って、ノンファンを笑い終えてから反応しないと確認を取る。この日から数日はこの時間を茶会の話題として、笑い続けられると。

こういった女子のグループは何組かおり、まだ今話しかけてきた子たちは無害だ。話しかけるだけで終わるから。タチが悪いのは手を出してくる方。

食べているといきなり皿を落とされたりジュースを溢される。使用人が洗ってくれることもないので着られるものもなくなってしまい、獣王ガオンの時には姉のお古をなんとか貰って出席していた。

かといってもお古は重く大きく、体に合わないサイズなので上手く歩けず。そのせいで獣王の側近に手を引かれた時、重心が傾き簡単に倒れ込んだ。

ガオン国王が訪問した日、幼い令嬢たちは現場に居た。その日は全ての高位貴族も低位貴族も呼ばれており、ガオンの国の王が来るので全ての貴族が呼ばれていた。大規模な舞踏会だ。

令嬢たちは番のことなど知らされていないので、当然花嫁探しかも知れないと盛り上がった。それも違ったと知ったのは断罪が始まったから。

怖いとひたすらその気持ちだけ。ノンファンの姉など世代が違うので、姉がいる令嬢が居ても記憶からいなくなるほどの興味もなかったゆえに、ノンファンの家と知った時は驚いた。

話もしないのに姉を虐げていたと聞いたときには驚いたが、家の中のことなので違うと否定する材料もない。令嬢たちは気付いたら震えていた。

ノンファンがむくりと立ち上がった時の威圧感、獣王に臆することなく言葉で切り裂く立ち振る舞い。王の側近が血まみれでいて。でもその前にノンファンは怪我をしてしまって。

何もかも、高いところから地面に落ちる感覚が僅かでも体験させられる恐怖だ。終わった後も国は混乱した。親から何か知らないかと毎日聞かれても知らないとしか言えまい。

嘲りバカにして話しかけてきた、など言えるわけがない。姉の方が愛し子と知って驚いたのに、妹の方も愛し子などと後から言われてどうすればいいのか聞きたいのは、同世代の子たちだ。

右往左往して茶会をしてお互いあのことはなかったことにと話し合いをしなくとも示し合った。

示し合わせた後にパーティなどの催し物があると、記者が現れては令嬢たちにどんな子だったか?

どんな服装でどんな性格か、どんな生活をしていたか知っているのかと質問してきた。中には仲が良かったと嘘をつく子も居て、今すぐ口を塞ぎに行きたくて堪らない。

インタビューの目的は普通の子ではなく、高位精霊を携えるような精霊の愛し子なのだ。安易に友達でしたと言える神経が信じられない。有名人を友人にするのとはわけが違う。

「私、あの子にプレゼントをあげようとしたらいらない、なんていうからなんて健気な子なんだろうって」

そういった子が応えるような記者への問答の最中、声が出なくなるまでは危機感なんてその程度だった。

「だから、うちに招待しようと話しかけ──ん!?」

「どうしました?」

「!?」

女の子が必死に声を出そうしていたが、一向にでない声音に記者も怪訝そうにしていた。周りから医者が呼ばれるまでは、その子のエピソードがないから話すことなんてなくなった故に起きた、沈黙の時間だと思っていたのに。

騒然となったその場はインタビューや質問なんてものを中断させる。他の子達も青白い顔色で、どうすればいいのかキョロキョロする。しかし、医者が確認して女の子が声を出そうとして「嘘つき」と声が出た。

医者から他にも言えるか聞いた答えも同じく「嘘つき」だけ。同じ歳の女の子はそれ以降、何か話そうとする度に「嘘つきは私です」と嘘に関連した言葉しか言えなくなった。

あの子が、ノンファンが何かしたのだと同世代の子たちだけではなく、他の世代の子供も理解してしまう。呪いだと子供たちは怖くて震え、パーティなんてものが開かれなくなっていった。

「お父様、何か御用ですか?」

自分もその後、ノンファンについて誰かに話すことはなかったが親にその子を虐めていたのかと親の居る執務室に呼ばれ重い口を開く。

「どうなのだ!?」

「ひっ。あの。あの……話しかけたことはあります」

父が責めるように言うから肩がビクッと揺れる。こんな風に叱られるのは初めてだ。最近は、獣王や妖精の愛し子の事件で国が大変なことになっており、父も他の親と同じく忙しそうにしている。

同世代の方の子供が凄まじい品格を持って立っていたこともあり、畏怖の目で過ごしていた。あれが全て冗談や嘘だったらいいのに。

「お前のようなノ、ノンファン様と同じ歳の子供にも王家の調査が入ったのだ。調べてみれば、子供たちが少なくない加害行為を行っていたと発表があった」

「あ、そ、それ、は」

「話しかけただけ、だな?話しかけただけでバカにしたり誹謗中傷など、してないな?してないのだなっ!?」

怒られた時、過ったのは声をなくした子。

「あ、ご、ごめ、ごめんなさい、ごめんなさい、お父様!お父様、ごめん、ん、なさい」

ボロボロと涙を流して謝り出した娘に父親は額に手を当てて「ああ!」と絶望の声を上げた。己の娘がノンファンに一度でも何かしたのだと、わかってしまったのだ。

「なぜ何もしないことができなかった……」

「う、うううう、うう。皆がやってるから、私もやってもいいって思いました……うう!あの子にドレスがボロボロって言ったり、ひっく!着替えたらって」

内容を聞き、父は顔を覆った。

「彼の方はご飯も服も与えられてなかった。全てメーライ様からの貰い物だ。それすらお古を売る店で買ったもの。新しいものなど望んでも手に入らなかっただろうな」

「知らなくて、ご、ごめんなさいお父様!」

「いや、大人の私たちがなにもしなかった」

父は自嘲の声を上げて大人もなにもしなかったので、同罪だと少女を抱きしめる。一緒に謝ろうと父に諭されて頷くしかなく、その日から家の中でも外でも心の中で贖罪を持ち続けた。

「ノンファン様、おはようございます。今日はよい天気ですね。そちらはいかがですか」

昔悪口しか言わなかった人間の言葉など、聞きたくないかもしれない。それでもノンファンが少しでも幸福を感じてくれればいいと、数年前より寂れてしまった国の中で少女は青い空を見上げた。