軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話 嵐の中の呼応

扉の向こうで、複数の足音が止まる。

逃げ場はない。

「下がれ」

レオが一歩前に出る。

「嫌よ」

即答する。

「……勝手にしろ」

吐き捨てるように言って、視線を扉へ戻す。

(来る)

次の瞬間——

扉が蹴り破られた。

木片が飛び散る。

中に踏み込んできたのは、武装した男たち。

複数。

その奥に、もう一人。

(多い)

「見つけたぞ」

低い声。

レオの空気が変わる。

「下がってろ」

「だから——」

言い返す前に。

一人目が、素早く斬りかかり、レオがそれを受ける。

鋭い金属音そして、火花。

その隙に、横から二人目。

(挟まれる)そう思った瞬間体が、勝手に動いた。

踏み込み、剣を払い角度をずらす。

「……なっ?」

レオの声がわずかに揺れる。

敵の刃が、逸れる。

「よそ見しないで」

短く言う。

呼吸が、合う。

レオが踏み込む。

アリステラが半歩引く。

考えより先に、動きが繋がる。

一人、倒れる。

——その時。

奥の男が、短剣を構えていた。

距離がある。

遮るものはない。

狙いは——レオの喉。

(まずい)

今の体勢では、避けられない。

前には敵。

横は壁、逃げ場はない。

アリステラは踏み出す。

だが——間に合わない。

その瞬間。

脳裏をよぎる。

『部隊には暗号があるんだ』

『そのまま言ったらバレるだろ?』

『じゃあ、私たちなら?』

笑いながら決めた、あの言葉。

「ダンじい——!」

危険を知らせる合図。

続けて、叫ぶ。

「半分くさい!」——あと半歩、下がれ。

一瞬。

レオの瞳が、見開かれる。

だが、迷いはない。

半歩、引く。

ほんの数秒のズレ——

短剣は、空を裂いた。

喉をかすめる軌道が、後方へ逸れ壁に突き刺さる。

(……避けた)

遅れて、呼吸が戻る。

レオが振り返る。

その目に、はっきりとした驚き。

「……今の」

(気づいた)

「後で!」

叫ぶ。

敵が、間合いを詰めてくる。

レオの動きが変わる。

さっきより速い。

迷いがない。

一瞬で間合いを詰める。

一閃。

敵が崩れる。

残るは一人。

静かな緊張。

次の瞬間——

レオが踏み込む。

一閃。

最後の男が崩れ落ちた。

アリステラの胸が、強く打つ。

(伝わった)

ただ、それだけじゃない。

(あの距離で)

(迷いなく、半歩だけ引いた)

ほんの僅かでも違えば——間に合わなかった。

(判断が、正確すぎる)

思わず、レオを見る。

(この人……)

一方で。

レオもまた、僅かに目を細めていた。

(今の合図)

(確かに、あの時の——)

だが、それ以上に

(読みが早すぎる)

敵の配置。

射線。

退路。

それを一瞬で見抜き、最適な距離だけを指示した。

(ただ者じゃない)

辺境伯屋敷の者は、使用人に至るまで護身術を叩き込まれている。

——だが、それでも説明がつかない。

互いに、確信だけが残る。

(普通じゃない)

(やっぱり、何かある)

疑念が、静かに深まる。