軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23話 叫ぶ、その名を

長く放棄された旧騎士訓練場。

崩れた壁と瓦礫が至る所に積み上がり、伏兵を潜ませるには最適だった。

対するルシエルドは、訓練場の中心

開けた場所に誘導された。

サッと誘導役達が距離をあける。

「花嫁をお探しかな?第三王子」

朽ち果てた観客席の上。

王国騎士の隊服を纏った男が、悠然と姿を現す。

だが、その顔に見覚えはない。

「黒蝕か…」

剣を、強く握る。

「我らは“浄火”!」

男は両手を広げ、陶酔したように叫ぶ。

「偽りの王が支配するこの国を、聖なる炎で浄化する!」

恍惚としたその表情は、正気とは思えない。

「…アリステラはどこだ」

ルシエルドは、冷え切った目で男を見据えた。

「貴様が、我々に協力するなら花嫁は返してやろう。

この国を粛清するまで傀儡の王として置いてやる」

ニヤリと嗤うその顔に虫唾が走る。

「必要ない。貴様らは今日ここで終るからな」

その言葉を聞くと同時に、

壁影から敵が複数襲いかかる。

ルシエルドは剣で薙ぎ払う

一人。

さらにもう一人。

血飛沫が、瓦礫を濡らす。

状況は、確実にルシエルドが優勢だった。

――その時

「もう一度聞く!」

“黒蝕”の男の声が響く

「…っ!!」

ルシエルドは息を飲んだ。

男の手元には人影。

首元を掴み、吊るし上げられたその人物

(アリステラ)

ぐったりとしているが、

その足は弱々しく動き抵抗をみせている

(―生きている)

「剣を捨てよ。抵抗するな」

アリステラの首元を強く掴んだまま

ニヤリと嗤いそのまま続ける。

「右後ろに剣を投げ、両手を上げろ」

剣を利き手から離した位置に捨てるよう指示する。

数秒の沈黙。

そして——

ルシエルドは、静かに剣を手放した。

遠くに、剣の交わる音がする。

アリステラは揺らぐ意識の中、周りの音を拾う。

徐々に音がハッキリする。だが、まだ瞼が重い。

知らない男の声。

「――なら――この国」

「――傀儡の王として置いてやる」

力をこめて、瞼をこじ開ける。

アリステラは周りの様子を探る。

(土、瓦礫…観客席?)

地面に横たわっていた。

視線をあげると、騎士の隊服の男。

しかし、様子がおかしい。

(この男が、誘拐犯のリーダーか)

ふと男の視線の先を見る

瓦礫の隙間から

(…殿下!)

剣を振るうルシエルドの姿。

敵に囲まれているが、ルシエルドが押している。

安堵したのも束の間

―――っ!!

突然、首元を強く掴まれ、持ち上げられる。

息が出来ない。

苦しい。

抵抗しようにも痺れた身体は、足先をわずかに動かすのが限界だった。

男が嬉々として叫ぶ

「剣を捨てよ。抵抗するな」

(ダメ!!)

アリステラは、心の中で叫ぶが声が出ない。

自分の事は気にせず戦えと伝えたい。

なのに…

(動け!動け!動け!)

後ろに縛られた手も、そして足にも

全く力が入らない。

男は、ルシエルドが剣を捨てると

アリステラを後方に投げ捨てた。

ドサッと音がし全身に衝撃が走る

土ぼこりが舞う。

勝利を確信したのか、

男はアリステラを意識の外に出した。

こちらを見ていない。

それに気づいたアリステラは、痺れる手足を懸命に動かし、なんとかルシエルドを視界の先に収めた。

その時

ルシエルドの後方に、弓矢を構えた男を捉える。

矢の先には――炎

「そうか、我々を拒むか!ならば!聖なる炎で偽りの血ごと焼き尽くしてくれる!」

男の叫びが響く。

(合図だ!)

(――炎矢が放たれる)

その瞬間。

脳裏に、不意に蘇る。

『……ほんとにやばい時は』

『俺の名前、呼べよ』

——気づけば、叫んでいた。

「レオ!!」

痺れる喉から、無理やり声を振り絞る。

「ダンじい、後ろ! 水やり!!」

かつて“レオと2人”で決めた暗号。

―逃げろ、後方に伏兵あり。視界を遮れ。

『必ず、助けに行く』

あの日の声が、脳裏を過る。