軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

姉姫ちゃんと狩りに行こう!4

ジン君だけでも、白いモクモクで確保しておいた方が良いかも――そんな事を考えていると、ふと気づく。

周りに魔力が充満している事に……。

なにこれ?

なんだか、空気に魔力が溶け込んでいるような――不思議な感じがする。

白いモクモクも霧状に薄く出来るんだけど、なんとなく、これは更に細かいような――。

猛烈に嫌な予感がする。

「皆、わたしの後ぉ――!」

と叫びつつ、両手から出した白いモクモクを盾にする。

背後に飛び込む気配と共に視界が真っ白になる――その刹那、モクモク盾の裏側で爆音と熱風が吹き荒れた。

地面が揺れる。

青羽根ハゲタカ君らしき悲鳴が空で響く。

これ、あれだ!

悪役妖精が飛び猿君の群れにやった、あれだ!

こんな至近距離でやるとか、なに考えてるの!?

魔力で起きただろう風が、白い盾の脇を黒煙と熱気と共にすり抜ける。

――煙の中から現れた、姉姫ちゃんはご満悦な顔で、〝やっつけたぞぉぉぉ!〟という様に、槍を掲げている。

あれだけいた青羽根ハゲタカ君は消え失せ、彼女を乗せているジン君は呆然としている。

「ちょっと!

なんて危ない事をするのよ!」

わたしが苦情を言っても、姉姫ちゃんは〝大丈夫! ジンはわたしが守ったし。他の皆は、この程度でどうにかならないでしょう?〟と言うように、暢気に身振り手振りをしている。

いやいや、そういう問題じゃないでしょう!

確かに、見たところ、ジン君は平気そうだし、わたしの後ろから苦笑しながら出てきた白雪ちゃんや緑風ちゃん、山吹ちゃんも平気そう――。

「あれ?

潮ちゃんは?」

辺りを見渡しても、青髪の妖精ちゃんの飛んでいる姿が見えない。

皆も〝え?〟と言うようにキョロキョロするが、見つからないようだ。

……。

顔を見合わす、姉姫ちゃんを含む皆の顔色が青ざめていく。

「嘘、ちょ!

潮ちゃん!?

潮ちゃぁぁぁん!」

慌てて四方に散り、探し始めるのだった。

――

「ああ、もう!

なんだかぐっと疲れた!」

我が家、 中央の部屋(食堂) のテーブルにて、アイスレモンティーを飲んだ後、愚痴ると、ヴェロニカお母さんがニコニコ顔を困らせながら「お疲れ様」と労ってくれた。

あの後、百メートルほど飛ばされ、失神した潮ちゃんを何とか見つけた。

気を失ってはいたけど、怪我自体はそこまで酷くなくて、治療しながらホッとしていたんだけど……。

今度は、姉姫ちゃんが突然、ジン君の上でぐったりし始めて、わたし達を驚かせた。

困った顔の白雪ちゃんが身振り手振りで言うには、張り切りすぎて疲れたんだろうという事らしく、取りあえず、二人をフェンリル帽子の中に寝かせると、急いで家に連れて帰ることにした。

したんだけど……。

青羽根ハゲタカ君の肉片狙いか、各種トカゲやら蜘蛛やら犬やらの魔物が群がってきて、それに襲われたり、青羽根ハゲタカ君の残党らしき一団に襲われるやらで、なかなか大変な帰路だった。

結局、棘鎧トカゲ君を運ぶ暇が無かった事もあり、狩りなのに獲物無しという悲しい結果に終わってしまった。

因みに、潮ちゃんは家に着いた辺りで意識を取り戻した。

「大丈夫?」と訊ねると、〝だ、大丈、夫……〟と身振り手振りをした妖精ちゃんは白雪ちゃんに背負われ、大木に運ばれていった。

心配だけど、妖精姫ちゃんが笑顔で〝大丈夫〟と身振り手振りをしてくれたので、そう思う事にしている。

因みに、姉姫ちゃんは冷めた目の姫ちゃんに頭をペチンと叩かれ、首根っこを掴まれ、大木まで連れて行かれた。

「もう!

姉姫ちゃんはやっぱり駄目よ!

ジン、次は姉姫ちゃん以外と行くのよ!」

イメルダちゃんはプリプリ怒りながら、体に巻き付いているジン君の背中を撫でている。

そんな、姉的妹ちゃんを、ジン君は困った顔で見ている。

まあ、ジン君は守ったとはいえ、やっぱり危なっかしいからね。

保護者としては怒るのも無理からぬことだ。

とはいえ、最近仲の良い姉姫ちゃんと出かけるのを禁止されると、ジン君としても寂しいんじゃないかな?

今は、お怒りモードなので止めておくとして……。

落ち着いた頃に、その辺りをイメルダちゃんと話をしないといけないなぁ。

なんて思いつつ、ヴェロニカお母さんに訊ねる。

「ねえねえ、ヴェロニカお母さん。

西の先に海っぽいのがあったんだけど知ってる?」

怒っているイメルダちゃんを少し困った顔で見ていたヴェロニカお母さんが、こちらを向きながらにこりと微笑んだ。

「ええ、知っているわよ。

アールイス海ね」

「やっぱり海なんだ。

わたし、東に大河があるから、海はそっちにあると思ってた」

わたしが言うと、ヴェロニカお母さんは、ふふふと笑った。

「そちらにもあるわよ。

わたくし達が住むここは、大きいとはいえ島だから、四方に海があるの」

「え?

そうなんだぁ~」

なんと、わたしは前世日本に引き続き、異世界でも島国生活をしてるって事なんだ。

そんな事を考えていると、ヴェロニカお母さんが「せっかくだから、描いて教えて上げるわ」と言いつつ、立ち上がった。

ヴェロニカお母さんは、以前町で買った携帯用の小さな黒板を持ってきてくれて、そこにチョークで描き始めた。

島は一つでなく、二つある。

一つは、北海道と本州をくっ付けた感じの島、もう一つは、一つ目を三分の一のサイズぐらいの楕円形の島だ。

一つ目の島の北西辺りに二つ目の島がある。

ヴェロニカお母さんは一つ目の島の、前世日本で言う青森辺りを指しながら言う。

「ここが今、わたくし達がいる場所ね」

わたしやイメルダちゃん、わたしの膝に座らせたシャーロットちゃんと覗くと、それを確認し、ヴェロニカお母さんは続ける。

「北にあるのは山岳地帯は竜の里や神獣の巣と呼ばれる場所ね。

南にあるのは、サリーちゃんがいつも行っているセルサリの町、更に南に行けば帝都になるわ。

更に南に行くと、クリスタリ領の――」

などと説明が続く。

わたしはシャーロットちゃんを抱きかかえながら考える。

帝都とかってのも行ってみたいけど、今の段階では正直、興味ないなぁ。

すると、シャーロットちゃんが不満そうな顔で振り返った。

「サリーお姉さま、暑い!」

「あ、ごめん」

冬や春の時にはそうしてたけど、冷房の魔道具があるとはいえ、真夏に抱きついたらそりゃそうだよね。

でも、ちょっと、寂しい。

そんな事を考えつつ、妹ちゃんを支えるのは白いモクモクで行いつつ、訊ねる。

「ねえねえ、ヴェロニカお母さん。

西と東の海、どちらが近いかなぁ」

ヴェロニカお母さんは何故か少し、残念そうに眉を寄せたけど、すぐに教えてくれた。

「余り変わらないと思うわよ。

サリーちゃんは、ひょっとして、魚を捕りたいの」

「うん。

海の魚って食べた事が無いから」