作品タイトル不明
海に行ってみたいんだけど……。
厳密には前世で給食とかに出ては来たとは思う。
だけど、記憶にほとんど残っていない。
それに……。
「あと、魚醤を作りたいの」
「ぎょしょう?」
「うん、魚を使った調味料なの」
確か、醤油の代わりになるって前世Web小説に書いてあった。
ヴェロニカお母さんは首を傾げながら「魚の内臓漬けの事かしら?」などと言っている。
この異世界にもあるのかな?
なら、買った方が手間が省けるかな?
そんな事を考えていると、ヴェロニカお母さんがニッコリ微笑んだ。
「ぎょしょう――というのはよく分からないけど、魚を捕るなら西がお薦めよ」
といいつつ、白くて細長い人差し指を、北東の島との境を指さす。
「そうなの?」と言いつつ、ヴェロニカお母さんの指した箇所を見ていると、イメルダちゃんが「お母様、そこ――」と話し始めて、不意に途切れた。
?
「どうしたの?」
と顔を上げてイメルダちゃんを見ようとすると、ヴェロニカお母さんが話し始める。
「ほら、よく見て。
島と島の間にあるでしょう?
なので、巨大な魔魚や海魔獣が少ないとされているの」
「そうなんだ」
わたしは視線を戻しつつ頷く。
イメルダちゃんが少し呆れた感じに言う。
「ねえ、サリーさん。
まさか、一人で魚を獲るつもりじゃないでしょうね?
海での漁は特殊だから、専業の漁師以外は出るべきではないって言われているそうよ」
「ん?
まあ、そうだろうけど……」
ママの洞窟近辺には水場があまりなかったので、海どころか、川での経験も正直乏しい。
とはいえ、白いモクモクがあれば何とかなる気もするんだけどなぁ~
チラリ、とイメルダちゃんを見ると、眉を怒らせた姉的妹ちゃんに「少なくとも、経験のある人の話を聞いてからにしなさい!」とぴしゃりと言われてしまった。
う~ん、正論過ぎて言い返せない。
ヴェロニカお母さんからも「そのほうが良いわね」とニコニコしながら言われるし、う~ん。
「漁村の人の話を聞くとか……。
あ、そもそも、漁村があれば、そこで魚を買えば良いのか」
我が家にはお金なら結構ある。
ただ、ヴェロニカお母さんに「漁村は多分、南部にしかないと思うわよ」と言われる。
北部には強力な魔物が多いからだとか。
まあ、今日進んだ限りでも、そこそこなのがいたから、仕方がないのかなぁ。
う~む……。
そんな事を考えていると、わたしの膝の上にいるシャーロットちゃんがヴェロニカお母さんに訊ねる。
「お母さま、テュテュさんが行ったって国はどこ?
東にあるの?」
ヴェロニカお母さんはニッコリ微笑みながら「ええ、東の大陸にあるの」と言いつつ、黒板の更に先に指で線を引く。
「この辺りから大陸になるわ。
海岸線には北部からオールマ、フレコ、オラリル、そして、セヌ……。
オールマ王国の国土はフレコ、オラリルを海と挟む様に広がり、大陸北西から中部の多くを領土としているわ。
そこをずっと東に進んだ場所にあるのが、ガラゴ王国ね。
ガラゴも結構大きくって、更に東の先に進むと、テュテュさんが行ったシンホンとなるわ」
「ふ~ん」とシャーロットちゃんが言い、イメルダちゃんが「改めて聞くと遠いですね」と頷いた。
シンホンかぁ~
何となく、前世アジアっぽい国なんだよね。
お米とか大豆とか有ったりするのかな?
機会があったら、行ってみたい国なんだよねぇ。
――
朝、起きた!
ベッドから体を起こすと、手芸妖精のおばあちゃん達が作ってくれたタオルケットっぽいものを隣でスヤスヤ眠るシャーロットちゃんにかけ直して上げる。
更に隣に――イメルダちゃんはいない。
夏になった頃から、姉的妹ちゃんはついに、自室に設置したベッドで寝起きをするようになった。
龍のジン君も当然のようにそちらに移動している。
いずれはそうなるとは分かっていたものの、やっぱり寂しい……。
いや、そんな事をやっている場合じゃなかった!
寝間着を着替えて外に出る。
中央の部屋(食堂) に入ると、いつものようにケルちゃんが嬉しそうに待ち構えていた。
はいはい、外は天気が良いんだね。
ハグをして、三首プラス尻尾ちゃんを撫でる。
ケルちゃんの毛、夏前に 換毛(かんもう) していき、以前より少し硬めの毛になっている。
とはいえ、相変わらず触り心地は良く、毎朝のハグは欠かさずやっている。
なんだか幸せな気分になるのだぁ。
すると、ケルちゃんに〝早く外行きたい!〟というように「がうがうがう!」と吠えられてしまった。
もうちょっといいでしょう~
ケルちゃんを玄関から、外に出して上げようとする。
扉をくぐろうとするケルちゃん、以前の成長速度はないにしても大きくはなっているようで、玄関を出るのも窮屈そうにしている。
物作り妖精のおじいちゃん達に、玄関を直して貰おうかな?
そんな事を考えつつ、ようやく出る事の出来たケルちゃんの背を撫でて上げる。
嬉しそうなケルちゃん、飛び降りるように階段をスキップすると、「がうがう!」吠えながら外を駆ける。
晴天の空には陽光がギラついている。
今日も蒸し暑くなりそうだ。
わたしはともかく、イメルダちゃんは大変かも。
そんな事を考えつつ、地面を横切る妖精ちゃんに視線を向ける。
物作り妖精のおじいちゃん達だった。
相変わらず元気なおじいちゃん達は木材を皆で運んでいる。
あ、そうだ!
「ねえねえ、おじいちゃん!
船用の水槽、もう使わない?」
こちらに視線を向けた物作り妖精のおじいちゃん達は少し考え込んだ後、〝仕方がない〟というように頷いた。
実は、物作り妖精のおじいちゃん達、船を作るために、模型を浮かべるための水槽を 工場(こうば) の前に作っていたのだ。
わたしは密かに、あそこをある事に使おうと狙っているのだ。
ふふふ、妹ちゃん達も喜んでくれるかな?
物作り妖精のおじいちゃん達と手を振り別れた後、家に入る。
国歌を口ずさみつつ奥に進んでいると、わたしの小さな家に気配を感じる。
視線を向けると小さな家の玄関前に何故か、近衛兵士妖精の緑風ちゃん、山吹ちゃんが彼女たちの体からしたら巨大な槍を持って立っていた。
「?
何してるの?」
訊ねると、緑風ちゃんが少し困った顔で身振り手振りをする。
え?
ここはしばらく閉鎖?
姉姫ちゃんは大木で謹慎中だから?
な、なるほどね。
まあ、あれは本当に危なかったから、わたしとしても擁護できないなぁ~
「お疲れ様」とねぎらうと、近衛兵士妖精ちゃん達はニッコリしながら敬礼を返した。
勇まし可愛い!
そんな事を考えつつ、洗面所に向かう。
顔を洗い、妖精メイドのサクラちゃん達に髪を結って貰いつつ、身支度を整える。
スライムのルルリンが天井から下りてきたので、右手でキャッチし、左肩に乗せる。
白のポヨポヨボディ、冷たくて気持ちが良い!