作品タイトル不明
姉姫ちゃんと狩りに行こう!2
「確か、ここら辺に獣道っぽいのがあったはず……」
と皆に説明しつつ、荷車で通れそうな場所を探す。
弱クマさん辺りの大きさでも、うろちょろしていると自然と、道が出来るのだ。
因みに、いつも通り白狼君達が近寄ってきたけど……。
姉姫ちゃんを見て固まり、結局退散していった。
いや、姉姫ちゃんが乗っている龍のジン君に怯えたのかな?
まあ、彼らは正直、居ても居なくても良いので、どちらでも構わないけどね。
そんな事を考えつつ、キョロキョロしていると、付いてきてくれる近衛兵士妖精ちゃんが左手に向かってすーっと飛んでいく。
そして、〝こっち!〟と指さしてくれた。
「ありがとう!」とお礼を言いつつ、そちらに向かう。
因みに、この妖精ちゃん、黒いモコモコした帽子を被る頭――その襟元から微かに出ているのは、黄緑色の髪だ。
なので、最近は彼女の事を 緑風(りょくふう) ちゃんと呼んでいる。
少し垂れ目がちの目に、白い肌をした、落ち着きのあるお姉ちゃん系妖精ちゃんだ。
その側で黄金色の長い髪を揺らしながら〝早く! 早く!〟と満面笑みで身振り手振りをしている褐色肌の妖精ちゃんがいる。
彼女の事は 山吹(やまぶき) ちゃんと呼んでいる。
なんとなく、スポーツ部の元気な先輩って感じの妖精ちゃんだ。
わたしの左頬辺りに、何かが飛んでくる気配を感じた。
視線を向けると、近衛兵士妖精の潮ちゃんだった。
青髪の妖精ちゃんはニコニコしながら飛んでいる。
この三人プラス、さっさと進もうとしている姉姫ちゃんや龍のジン君の側にいる、白雪ちゃんの四人が、今回付いてきてくれる近衛兵士妖精ちゃんだ。
姉姫ちゃん達を追いかけながら、横に居る潮ちゃんに話しかける。
「潮ちゃんと出かけるの、ずいぶん久しぶりだね」
すると、青髪の妖精ちゃんはキリッとした顔で身振り手振りをする。
え?
未熟さを痛感したので修行をしていた?
もう、あの頃のわたしではない?
超ぉぉぉ潮ちゃんになった?
……何かしらのフラグっぽい。
だけど、得意げな顔をしながら、〝今のわたしなら、ワイバーンもヤれる!〟とか前世、誰かの台詞っぽいことを身振り手振りをしている潮ちゃんに、そんなことは言えず、「う、うん、頼もしい!」と言っておいた。
しばらく進むと、開けた場所――荒野に出た。
硬い土質のせいかな? 木が所々にしか生えて無く、代わりにサボテンっぽい物が色んな所に顔を出している。
こうやって見ると……。
違和感がある。
後ろを振り返ると、 鬱蒼(うっそう) とした森が広がっている。
木や草のせいで荷車があると移動しづらく、持ってきたのを後悔したぐらいだ。
だけど、線を引いたように境界線があり、荒野が広がっている。
何かあるのかな?
が、考え込んでいるわたしを置いて、姉姫ちゃん達はさっさと進んでいく。
ちょっと!
慌てて、わたしも一歩、足を踏み入れる。
んんん?
靴裏ごしに感じる土が――なんか変な感じがする。
う~ん、妖精姫ちゃんとか魔術師系の妖精ちゃんなら分かるかもしれないけど、姉姫ちゃんじゃあ、分かるはずが無いだろうしなぁ。
なんて、失礼な事を考えていると、近衛兵士妖精の緑風ちゃんがすーっと飛んでくる。
そして、ニコニコしながら身振り手振りをしてくる。
え?
魔力?
この土地にはそれが残ってるの?
ああ、だからただの植物は育たないのね?
そんなやり取りをしていると、前方から微かに嫌な気配を感じる。
視線を向けると、前を行く姉姫ちゃん達――その脇に灰色の何かが微かに動くのが見えた。
「あ?」
とわたしが漏らした間に、巨大なトカゲが大口を開けてジャンプした!?
あれ、地竜モドキ君だ!
そんな彼が姉姫ちゃん達を飲み込まんばかりに飛びかかっていった。
あ、危ない!
だけど、姉姫ちゃんが左手の人差し指をそれに指すと、パンッ! という破裂音と共に、真っ赤な肉片が飛び散った。
……わぁ~お。
……いや、分かっていたけどね!
悪役妖精も言ってたから、分かっていたけどね!
だけど、なんというか……。
姉姫ちゃんって……。
本当に強いのね。
ジン君は四散した地竜モドキ君に顔を引きつらせているけど……。
姉姫ちゃんは気にする様子も無く振り返り、〝早く進もう!〟と急かすのだった。
地竜モドキ君はママの洞窟近辺にも生息している魔物だ。
硬い肌や強靱な顎、素早い身のこなしもさることながら、隠密に優れ、あの超強者達が闊歩するあの森を生き残った強者だ。
勿論、モドキはモドキだ。
本物の地竜さんの足下にも及ばない。
及ばないんだけど……。
彼、あの岩バッファローさんを主食にしてたんだよね。
弱くは、全然無いんだけどね。
っていうか、わたしにあの地竜モドキ君をあそこまで見事に肉片に変えるなんて、出来ないんだけどね。
う~ん……。
姉姫ちゃんって、わたしが思っていた以上の強者なのかもしれない。
すると、ジン君に乗った姉姫ちゃんがわたしの側に飛んできた。
そして、身振り手振りをする。
え?
強いのが居ない?
退屈?
いやいや、地竜モドキ君が居れば、十二分だと思うよ?
っていうか、こっちの方、強者がいないと思っていたのに、思ったより危険かもしれない。
え?
地竜モドキ君(あんなの) なんて弱すぎる?
本物の地竜がいい?
ジン君がいるのに、そんなフラグを立てないで!
すると、巨大な何かが動く気配を感じる。
まさか本物の地竜さん!?
肌がゾワリとなった。
倒せなくはない。
倒せなくはないけど、積極的にやり合いたい相手ではない。
慌てて、視線を向けて――ホッと安堵の息を吐く。
なんだ、棘鎧トカゲ君か……。
前世の何かで見た、アン――何とかとか言う恐竜っぽい彼は、トカゲにとげとげの全身鎧を着せたらこんな感じっていう姿をしている。
体長は8メートルぐらいかな。
強いといえば、そうだけど……。
地竜さんどころか、地竜モドキ君より弱い。
視線を向けると、姉姫ちゃんが明らかに、がっかりした顔になる。
なら、わたしが狩ろうかな? と思ったけど、よくよく考えたら、棘鎧トカゲ君……。
美味しくないや。
ミスリルトカゲ君とどっこいどっこいだったはず。
あ、でも、町に持っていったら喜ばれるかな?
そんな事を考えていると、棘鎧トカゲ君が地面を這いながら、そこそこの速度で近寄ってくる。
ふむ。
わたしが蹴り倒そうと思い、前に出ようとすると、その前に姉姫ちゃんとジン君が割って入った。
そして、姉姫ちゃんは左手で持った槍を棘鎧トカゲ君に向け、右手でジン君の背中を叩いた。
ジン君は頷くと、何やら力み出す。
お?
魔力が膨れ、閃光と共にバチンという雷撃が棘鎧トカゲ君の背中を打った。
なかなかの威力だ。
弱クマさん辺りなら一発で、炭化しそうだ。
さらに、追い打ちとばかりに、バチバチと攻撃する。
……だけど、棘鎧トカゲ君にはちょっと厳しいかな?
二発目以降は、素早く身を翻し、躱していく。
そして、猛然と突っ込んで来る。
ふむ、やっぱり前に出ようかな?