作品タイトル不明
姉姫ちゃんと狩りに行こう!1
「うん、甘酸っぱくて美味しい!」
すると、興味深そうに見てきたシルク婦人さんが、自分用のコップを差し出してくる。
はいはい、シルク婦人さんも毒味がしたいのね。
作って上げると、それに口を付けた婦人さんはこくこくと頷いた。
そして、言う。
「お茶に入れる」
ああ、蜂蜜レモンをお茶に入れたら美味しいかもね。
「今度作ってみて」
と言うと、こくこくと頷いてくれた。
楽しみだ!
さて、次はシャーロットちゃんに作って上げよう。
そう思っていると、シルク婦人さんに「代わる」と言われてしまった。
え?
いや、うん、じゃあ、お願いしようかな?
え?
ああ、氷は作っておけば良いのね。
了解しました。
シルク婦人さんが手際よく作っていくのを横目に、いつもの席に座る。
妖精メイドのサクラちゃんが妖精ちゃん用の為か、シルク婦人さんにお願いして蜂蜜レモンを分けて貰っている。
うむ、しかしこの時期にレモンが手に入ったのは僥倖と行っても良い。
蜂蜜レモンやレモンティもそうだけど、レモン水もさっぱりして美味しいだろう。
あと、お肉料理のアクセントとしても最高だ。
そんなことを考えていると、シャーロットちゃんが一口飲んだコップをこちらに向け、ニッコリ微笑む。
「サリーお姉さま!
これ冷たくて美味しい!」
ふふふ、それは良かった。
イメルダちゃんも嬉しそうに「そうね、甘さの中に酸味があって美味しいわ」と言ってくれる。
わたしが「暑い外から帰ってきた時、出来れば飲んで。疲れが取れるから」というと、以前から熱中症の話をしていたからだろう、イメルダちゃんは真剣な表情になって「分かったわ」と頷いてくれた。
ヴェロニカお母さんは頬に手を置きながら「美味しいけど、もっと甘くても良いんじゃないかしら?」とか言い、妖精ちゃん達が同意するように頷いている。
いや、あなた達に合わせていると、蜂蜜レモンの趣旨から絶対、外れていくからね!
そのうちレモンも要らないとか言い出しかねないからね!
そんなことを考えていると、ニコニコ顔のヴェロニカお母さんがとんでもないことを言ってくる。
「それで?
何やら、サリーちゃんが陰で作っていると耳にしているんだけど……。
それはいつ、披露してくれるのかしら?」
「……いや、作っているのは間違いないけどね!
でも、あれはヴェロニカお母さん達には全く関係ない代物だからね!」
きっぱり言っても、厚顔無恥系の大人は「凄く楽しみにしているわよぉ~」とニコニコしている。
もう!
すると、シャーロットちゃんが訊ねてくる。
「サリーお姉さま、何を作ってるの?」
「ふふふ、シャーロットちゃんは楽しみにしていて!
伝説の甘味を食べさせて上げるから!」
「わぁ~い!」
シャーロットちゃんが嬉しそうにする。
可愛すぎる!
わたしがほんわかとしていると、蜂蜜レモンを飲み終えた姉姫ちゃんが、すーっと飛んできた。
格好は白地に金の模様がらの上着に、同色ハーフパンツ姿だ。
そんな姉姫ちゃんが勢いよく身振り手振りをする。
え?
いい加減、外に出たい?
いや、守護神の仕事は?
え?
敵が一向に来ない?
あ~ついに気づいてしまったかぁ~
姉姫ちゃんは〝退屈! 退屈!〟というように手足をバタバタさせる。
えぇ~
呆れつつ妖精姫ちゃんに視線を向けると、疲れた顔でため息を吐いた姫ちゃんに、身振り手振りで〝連れて行って上げて〟と言われてしまった。
う~ん、まあ、そうだなぁ~
「じゃあ、狩りにでも行く?」
わたしが言うと、駄々っ子のようにテーブルの上で転がっていた姉姫ちゃんの動きが止まった。
そして、嬉しそうに飛び上がると、わたしの頬にくっ付いてくる。
可愛らしいけど姉姫ちゃん、以前、わたしより姉とか言っていた気がするんだけど……。
それで良いの?
そんなことを思いつつ、嬉しそうにわたしの小さな家に飛んでいく姉姫ちゃんを見送るのだった。
フェンリル帽子を被り、荷車を出していると、用意が出来たのか姉姫ちゃんが飛んできた。
いや、それは良いんだけど……。
何故か、姉姫ちゃん、龍のジン君に跨がっていた。
えぇ~!
ジン君も何やら嬉しそうに「キュ~! キュ~!」と鳴いている。
すると、玄関から出てきたイメルダちゃんが、慌てた感じに降りてくる。
その後ろには、近衛兵士妖精の 黒風(こくふう) 君と黒バラちゃんが付いてきている。
「ちょっと!
ジンも連れて行くつもり!?」
イメルダちゃんが姉姫ちゃんに詰め寄るも、姫騎士系妖精ちゃんは自信満々な顔で〝大丈夫! わたしがいるし!〟とか身振り手振りをしている。
そんな姉姫ちゃんに、イメルダちゃんはより一層不安そうにしながらこっちを見る。
うん、その気持ち、凄く分かる。
姉姫ちゃんはうっかりが多い妖精ちゃん達の中でも、ずば抜けて迂闊そうだもんね。
「ジン、止めておいた方が良いんじゃない?」
イメルダちゃんがジン君に視線を向け、そう言うと、龍君は悲しそうに「キュ~」と鳴いた。
姉姫ちゃんが〝大丈夫って言ってるのに!〟と身振り手振りでプリプリ怒っているけど、イメルダちゃんは「ジンはまだ子供なの!」と言っている。
そりゃ、心配だよね。
すると、すーっと近づいてくる気配を感じ、視線を向けると妖精姫ちゃんと白雪ちゃんを初めとする何人かの近衛兵士妖精ちゃん達が飛んでくるのが見えた。
すぐ側まで来ると、妖精姫ちゃんはにこやかに身振り手振りをする。
え?
近衛兵士妖精ちゃんを4人付けるから大丈夫?
まあ、ジン君もいずれ立派な龍(?)にならないと行けないんだし、連れて行って上げようかな?
「イメルダちゃん、大丈夫だよ。
わたしもいるし、姉姫ちゃん、白雪ちゃん達もいるわけだし。
そもそも、遠くまで行くつもりもないしね」
「まあ、そうかもしれないけど……」
イメルダちゃんは心配そうに、龍のジン君に視線を向ける。
ジン君は〝大丈夫!〟というように「キュ~!」と鳴いた。
「じゃあ、行ってくるね!」
とイメルダちゃんに手を振り、荷車を引きながら出発する。
「気をつけてね!
ジンをよろしくね!」
とイメルダちゃんが心配そうに手を振ってくる。
最終的に、イメルダちゃんは折れることになった。
姉的妹ちゃんとしても、ジン君もいずれは独り立ちをする必要があると分かっているのだろう。
それでも、不安なのか「ジン! サリーさんの言うことをちゃんと訊くのよ!」と念を押していた。
ジン君はイメルダちゃんに前脚(手?)を振りつつ、嬉しそうに飛んでいる。
それに乗っている姉姫ちゃんもニコニコ顔だ。
今回、向かう先は西の方だ。
今まで町に向かう南や大河のある東には何度か行っていたけど、西には行ったことがない。
なので、そちらに向かうことにした。
個人的には北の岩肌が露出している箇所に、使えそうな鉱物があるんじゃないかと見に行きたい気持ちもあったけど……。
北ということはつまり、ママの洞窟に近づくということ……。
つまり、強力な魔獣が現れる危険性も上がる事になる。
そんな場所に、ジン君を連れて行く訳にはいかないので、取りあえず、行ったことのない、それでいて強者がいなさそうな西に向かうことにした。