作品タイトル不明
餌が不満?
心なしか大きくなった雛君(ちゃん?)達が纏わり付いてきたので、「危ないよ」と言いつつ、足でどける。
赤鶏君が〝腹、減った!〟と騒々しいので「はいはい」と鶏冠を軽く引っ張ったりしつつ、赤鶏さんから卵を頂く。
餌を上げた後、牛さんに視線を向ける。
牛さんは静かに尻尾を揺らしつつ、こちらに視線を向けていた。
お腹がすいたのかな?
「まずは乳を取らせてね」
と乳房を丁寧に洗った後、壺をセットし搾る。
昨日も思ったけど、出が凄く良い。
牛乳が壺の八分目ぐらいになったら止めて、もう一度、乳房を洗った後、ご飯を用意する。
大麦と牧草を餌箱に入れていると「もぉ~! もぉ~!」と頬でわたしの腕を叩いてくる。
え?
何?
「どうしたの?」
と訊ねても、当然のことながら「もぉ~!」としか返ってこない。
しまったなぁ~
羊飼いさんに飼う上で必要なことをきちんと訊いておくんだった。
「餌が不満なの?」
と訊ねると、〝そう!〟という様に「もぉ~!」と鳴く。
えぇ~!
牛って何を食べるんだろう?
前世、Web小説では食べさせるものまでは描写されてなかったからなぁ~
仕方がない、倉庫にあるものを見せてみるか。
「ごめん、今はこれで我慢して」
と牛さんの首を撫でると、〝仕方がない……〟というように「もぉ~」と鳴いた。
山羊さんの元に向かうと、〝狭い! 狭い!〟という様に不満そうにされる。
あの牛さんはともかく、ユニコーン君はなかなか大きいからね。
それに、外に出られないってのもあるか……。
この辺りもどうにかしないとと思いつつ、背中を撫でて宥めつつ、山羊乳を頂き、ご飯を上げる。
終わった後、ユニコーン君にも、牧草を上げる。
……不満なのか、悲しげな目で見られた。
君もなのぉ~
えぇ~
困ったなぁ~
「今はこれで我慢して」
と足を撫でつつ宥めると、何とか餌箱に顔を入れてくれた。
中央の部屋(食堂) に戻ると、ケルちゃんの側を龍のジン君がくねくねしながら飛んでいる。
時折、ケルちゃんのモフモフの体に巻き付いて、何やら機嫌が良さそうだ。
ケルちゃんも特に嫌では無いらしく、三首してその動きを追っている。
なんだか、ほのぼの可愛い光景だ。
そんなことを考えつつ、シルク婦人さんに牛乳の入った壺などをわたしていると、側に近寄ってくる気配を感じる。
そして、腰に何かが巻き付く感触を感じる。
ん?
視線を降ろすと、ジン君がわたしの腰にくっ付いていた。
更に足で服を掴みながら上がっていき、胸の辺りでわたしをじっと見つめてくる。
いやぁ~来たばかりのことを考えると、ずいぶんと慣れてくれたなぁ~
感慨無量になりつつ、その小さな頭を撫でて上げる。
うろこで覆われている体は冷たいけど、頭部から背中に駆けて伸びている青い毛はフサフサして、触り心地が良い。
ジン君は撫でられると気持ちが良いのか、目を細めている。
ふふふ、可愛い。
おっと、そんなことをやっている場合じゃなかった!
シルク婦人さんに必要なものを聞き、籠を受け取ると食料庫に向かう。
ジン君は途中で離れ、多分、イメルダちゃんの元に向かい、寝室の方に飛んでいった。
ちょっと寂しい……。
などと思いつつ、食料庫の中で言われたものを籠に入れて行く。
う~ん、牛さん達って林檎とかなら食べるかな?
あ、ユニコーン君は人参かな?
いや、あれは馬の好物かな?
そんなことを考えつつ、スライムのルルリンにサクランボをあげつつ 中央の部屋(食堂) に戻る。
中ではいつものように、イメルダちゃんがテーブルを拭いていた。
ジン君もその側を飛んでいて――あ、妖精メイドの黒バラちゃんがその体の中間辺りにしがみ付いていた。
ジン君が進むたびに、くねくね揺すられているけど、黒バラちゃんは何やら嬉しそうだ。
「おはよう」とわたしに挨拶をしたイメルダちゃんが、わたしの視線で気づいたのか、「ちょっと、黒バラちゃん! ジンから離れなさい!」と目を険しくさせた。
でも、流石は黒バラちゃんというか、怒っているイメルダちゃんにも全く動じず、むしろ、嬉しそうに手を振ってすらいる。
ジン君も、特に気にしていないのか、気にせずイメルダちゃんの側を回っている。
「嫌がっているならともかく、特に気にしてないみたいだから、そっとしておいたら?」
わたしが言うと、イメルダちゃんは苦い顔をしながら「まあそうね」と言う。
そして、ジン君に向かって「嫌なら言うのよ」と声をかけた。
ジン君は嬉しそうに「きゅ~!」と鳴いた。
可愛い!
イメルダちゃんも表情を緩めながら、その背を撫でた。
パンを作っていると、寝室に向かう為の扉が開き、きちんと着替えたシャーロットちゃんが、ヴェロニカお母さんと共に 中央の部屋(食堂) に入ってきた。
その側には妖精メイドのウメちゃんもニコニコしながら飛んでいる。
可愛らしい妹ちゃんはわたしを見つけると、嬉しそうな表情で側に駆けてくる。
「サリーお姉さま!
風邪、治った!」
念のために「喉とかも痛くない?」と訊ねると「痛くない!」という元気良い返事が返ってくる。
良かった!
完治したみたいだ!
イメルダちゃんも「良かったわね」と表情をほころばしている。
シャーロットちゃんの後ろから入ってきたヴェロニカお母さんも、ニコニコしている。
ホッとしていると、シャーロットちゃんがわたしの腰に抱きついてくる。
「サリーお姉さま、治ったからはんばーぐ!」
「ああ、そうだね。
今晩はハンバーグにしようか」
「うん!」
嬉しそうにするシャーロットちゃんにほんわかしていると、ニコニコ顔のヴェロニカお母さんが言う。
「良かったわね、シャーロット。
サリーお姉様のことだから、ハンバーグだけでなく、甘い物も作って下さると思うわよ」
「ちょ!」
それ、自分が食べたいだけでしょう!
でも、シャーロットちゃんが「わぁ~」と言いながらキラキラした目をこちらに向けてくるので、わたしとしては「な、何が食べたい? プリンとか?」と引きつった笑顔のまま訊ねるしかない。
「えぇ~っと……。
あ、ぱうんどけーきが食べたい!」
うっ!
もう少し、お手軽なものが良かった……。
しかし、シャーロットちゃんの完治祝いだ、仕方がない!
「じゃあ、パウンドケーキも作るね」
と答えると、シャーロットちゃんは満面笑みで「うん!」と頷いた。
側ではろくでもない大人なヴェロニカお母さんが「パウンドケーキ、久しぶりだわぁ~ 楽しみねぇ~」とかニコニコしながら言い、妖精姫ちゃんが〝うん、楽しみ〟と身振り手振りで言っている。
人に作らせて置いて、ほんと、お気楽な人たちだ!