作品タイトル不明
ユニコーン君、なんでクルクル回ってるの?
う~ん、困ったなぁ~
ユニコーン君を突き返すのが正しい気もする。
ただ、ママとかに甘いと言われそうだけど、頼ってきた子を見捨てるようで心苦しい。
はぁ~
仕方がないなぁ。
わたしは右手から白いモクモク刀を出すと、岩バッファロー君の右後ろ足の太もも部分から大きく切断し、それをサーベルタイガー君に投げた。
警戒するように、避け飛んだサーベルタイガー君だったけど、肉と分かり、慎重に近づく。
『それと交換して!』
とがうがう言うと、こちらを探るように見てくる。
そして、致し方が無いと思ったのか咥えると、離れていった。
これで良し。
視線をユニコーン君に戻す。
白毛の一角獣は、何故かその場をぐるぐると回っていた。
前世の動画で見た、自分の尻尾を追いかける犬みたいだ。
え?
どうしたの?
「止まって良いんだよ?」
と言っても、泣きそうな目でこちらを見つつ、足を動かし続けている。
お尻や背中に酷い切り傷をしているのに、血を流しながらもだ。
ケルちゃんも、どうすれば良いのか分からないというように、こちらを見てくる。
いや、わたしも分からないから。
わたしが困惑していると、悪役妖精がユニコーン君の首を指さし、身振り手振りをする。
え?
首の?
あ、首輪?
これが原因なの?
ユニコーン君の豪奢な首輪――よく見ると、首の裏ぐらいに魔石っぽい石が見える。
魔術的何かで操作されてるのかな?
いや、考察はあとでいいか。
「あの首輪を外せば良いの?」
と確認すると、悪役妖精が頷く。
結構丈夫そうだけど、上手く外れるかな?
そんなことを考えていると、近衛兵士妖精の青空君がユニコーン君に向かって飛んでいく。
そして、剣を抜くと、慎重に見つめつつ振るう。
首輪がユニコーン君の足下にぼとりと落ちた。
その首には切り傷一つ付かなかった。
青空君は首輪を拾うと、こちらに持ってきてくれた。
「おお!
ありがとう!」
お礼を言うと、〝大したことない〟と言うように、近衛兵士妖精君は照れた感じに手を振る。
可愛い!
って、危ない!
くるくる回っていたユニコーン君がふらりと揺れ、力尽きたように倒れ始めた。
わたしは白いモクモクで慌てて支える。
ユニコーン君は荒い息をしながら、口から泡を出している。
ゆっくりと、地面に寝かせ、右手から出した白いモクモクで体力回復魔法をかけて上げる。
あと、頂けるものかと近寄ってきた白狼君達を追っ払う。
君たちには、さっきあげたでしょう!
ユニコーン君が苦しそうに口をパクパクさせている。
水が飲みたいのかな?
左手から出した白いモクモクで水を出すと、飲ませて上げる。
どれだけ走っていたんだろう、白いモクモク桶に顔を突っ込み必死になって飲んでいる。
あ、塩も上げた方が良いんだっけ?
一応持っていた、腰の袋に入れていた塩を取りだし、息をさせるために離したモクモク桶の中の水に入れて混ぜる。
それを再度飲ませて上げる。
しかし、一体、どうしたんだろう。
怪我も酷い。
所々にひっかき傷がある。
足のひっかき傷は、サーベルタイガー君にやられたのかな?
太ももや腰、前足の上部に付いている傷は、鉤爪っぽい……。
ひょっとしたら、 軍隊雀(ぐんたいすずめ) 君辺りに狙われたのかもしれない。
怪我も、治療魔法で回復して上げる。
所々、毛がハゲてるけど、まあ、すぐに綺麗になるでしょう。
立ち上がったユニコーン君がお礼をするように、ペロペロと顔を舐めてきた。
ふふふ、くすぐったい!
……しかし、この子、どうしよう。
改めて全身を見てみる。
凄く立派なユニコーン君だ。
背が高いので立ち上がった今は上の方まで見えないけど、 鞍(くら) とかの馬具も立派なものだ。
何かの弾みで、逃げちゃったのかな?
いや、魔術なのか魔道具なのかよく分からないけど、この子、無理矢理走らされていたんだよね。
だとしたら……。
よく分からないな。
とはいえ、ここに置いていく訳にもいかない。
「家にくる?」
と首を撫でて上げると、〝是非とも!〟という様に「ブルル!」と鳴いた。
なんだか、可愛い!
お肉を運びつつ、何とか我が 家(国) に到着!
岩バッファロー君の肉の量が、量だけに大変だった。
悪役妖精が家の方に何やら声をかけている。
すると、家や大木から妖精ちゃん達が飛んできた。
そして、冷凍肉を運んでくれる。
「ありがとう!」
お礼を言うと、悪役妖精は少し、むすっとした顔でユニコーン君を指さし、身振り手振りをする。
え?
やっかいごとになる前に、皆に相談しろ?
おっしゃる通りです。
悪役妖精は家の方に飛んでいく。
近衛兵士妖精の青空君達も、肉を持ちつつ、食料庫に飛んでいく。
「皆も、付き合ってくれてありがとうね!」
そう言うと、振り返った近衛兵士妖精君達はニッコリしながら手を振ってくれた。
「ケルちゃんもありがとう!」
と撫でつつ、ユニコーン君を先導しながら、家に向かう。
ん?
玄関からヴェロニカお母さんが出てくるのが見えた。
わたしに気づくと、早足でこちらに向かってくる。
側には、妖精姫ちゃんと悪役妖精、近衛兵士妖精の白雪ちゃんが飛んでいる。
悪役妖精が伝えてくれたのかな? なかなか、気の利く妖精だ。
近寄ってきたヴェロニカお母さんは、ニコニコしながらユニコーン君を見る。
「なかなか、立派なユニコーンね」
「うん、多分、領主様の所の子だと思う」
「そうなのねぇ~
……ねえ、首輪をしてたと思うんだけど」
と言いつつ、ヴェロニカお母さんはわたしの手元を見た。
先ほど、青空君達が取ってくれたのを持ってきていた。
高価そうだし、返却する時に必要だと思ったからだ。
「これ、付けてたよ」
と差し出すと、ヴェロニカお母さんは受け取り、一瞥するだけで、すぐに畳んだ。
ん?
どうしたんだろう?
妖精姫ちゃんもヴェロニカお母さんが手に持つそれに近づいたけど、興味を失ったようにユニコーン君の方に向かった。
「ねえ、この子、どういう状態だったの?」
ヴェロニカお母さんが訊ねてくるので、説明する。
怪我のことや、魔道具か何かで、走るのを強要されていた事も含めて。
話ながら、視線を向けるとユニコーン君の口元から紐が垂れているのに気づく。
これ、手綱、かな?
馬を操作する時に手に持つ部分、だと思う。
あれ、でも、これ切れてる?
よく見ようとすると、視界に金色のものが割り込んだ。
ヴェロニカお母さんの後頭部だった。
見るのに一生懸命なのか、わたしの邪魔をしたのに気づいていないらしく「この部分は安物ね」とか何とか批評している。
もぉ~
苦笑しつつ、ヴェロニカお母さんを避けようとすると、美人系お母さんはくるりと振り返った。
そして、苦い顔をしながら言う。
「余り、サリーちゃんや娘達には話したくないことなんだけど……。
この、ユニコーンは処分されたようね」