作品タイトル不明
悪役妖精と一緒に狩りに行こう!1
寝室をサクラちゃんに開けて貰い入ると、シャーロットちゃんは体を起こしていて、その前に妖精メイドのウメちゃんが飛んでいた。
「どうしたの?」
とわたしが訊ねると、シャーロットちゃんは不満そうに、ウメちゃんは困った顔でこちらを向く。
「シャーロット、もう治った!」
う~ん、声もしっかりしているし、大丈夫のようにも見える。
ただ、病み上がりで動き回るのも良くないってWeb小説に書いてあった気がする。
サクラちゃん達にお盆を持ってもらい、シャーロットちゃんに近づく。
そして、「少なくとも、もう半日は大人しくしてようね」と言いつつ妹ちゃんの柔らかな髪を撫でて上げる。
唇を尖らせつつだけど、「うん……」と頷いてくれた。
シャーロットちゃん、良い子!
シャーロットちゃんには部屋に備え付けられている机で、朝ご飯を食べて貰うことにする。
もりもり食べていて、大丈夫そうにも見える。
葡萄もフォークに刺してパクリと食べ、「美味しい!」と嬉しそうにした。
それは良かった!
「パン、もう少し食べられる?」
と訊ねると、シャーロットちゃんはニッコリしながら「ジャムがあれば食べられる!」と言った。
可愛い!
「ちょっと待ってて」
と言いつつ、部屋を出て、 中央の部屋(食堂) に戻る。
テーブルで食事をしているヴェロニカお母さんが、心配そうに訊ねてくる。
「シャーロット、どうかしら?
食べてる?」
「うん、もっと食べられるって言うから、パンのもう半分を持っていく所!」
明るく応えて上げると、「そう」とヴェロニカお母さんは嬉しそうに頷いた。
イメルダちゃんも安心したように「良かった」と呟いた。
そのようにやり取りをしている間に、サクラちゃんが先ほど切ったパンの残りを皿に乗せ、持ってきてくれる。
他の妖精メイドちゃんも、ジャム入りの壺を持ってきてくれる。
ありがとう!
まあ、気にしすぎかもしれないけど、ジャムは壺から少し分け、皿に乗せる。
共同で使うので、風邪の菌とか付いたら困るしね。
……あと、そうだなぁ~
「ごめん、ちょっとやることがあるから、サクラちゃん達が持って行ってくれるかな?」
何かを察したのか、サクラちゃん達は頷き、寝室に戻っていく。
さて……。
「一応、薬も飲ませないと、ね」
呟いていると、シルク婦人さんがコップを持ってきてくれた。
その中には、あらかじめ作って置いてくれたのだろう、どろりとした 液体(薬) が入っている。
いかにも不味そうな臭いがする。
……さて、これをどうやって飲ませようかな?
少し、頭を悩ますのだった。
シャーロットちゃんを 宥(なだ) めに 宥(なだ) めた後、何とか薬を飲ませることに成功した。
その後、速やかに林檎ジュースを飲ませたので、口の中に苦いものが残っていると言うことはないだろう。
それでも、不満そうなシャーロットちゃんをベッドに寝かし、体力回復魔法をかけて上げる。
後をウメちゃんに任せた後、 中央の部屋(食堂) に戻り、手と食器を洗い、少し遅い朝ご飯を食べる。
今日もシルク婦人さんのオムレツ、美味しい!
味わって食べていると、イメルダちゃんが寝室の方から出てきた。
寝室というより、食料庫からかな?
何かを書き留めた木板を持っている。
わたしに気づくと、話しかけてくる。
「念のために、在庫を調べたけど、取りあえずは町に行く必要は無さそうよ」
「そうなの?」
「ええ、布や糸関係も揃っているし、薬もあるし……」
そこまで言うと、イメルダちゃんは真剣な表情で言う。
「あと、わたくし思ったんだけど、あえて、セルサリに行く必要は無いんじゃないかなって」
「ん?
どういうこと?」
「一番近いのはセルサリだけど、サリーさんの足なら、別の町や村まで行って、帰ってくることも可能じゃないかしら?」
「ああ、なるほどぉ~」
この世界で初めて行った町がセルサリで、なんとなくそこばかり利用していたけど、当然のことながら、他にも町や村は存在する訳だ。
セルサリに入り難いのであれば、別の所に行っても問題ないというのは、有るかもしれない。
前に行ったことがあるのって、セルサリ以外は……。
何だったっけ?
あの、白大猿君の時に行った村って。
あそこなら、日帰りで帰ろうと思ったら帰れるかな?
「そうだね、そういうのも考えられるね」
わたしが同意すると、イメルダちゃんも頷く。
あ、でも……。
「生地屋さんの件があった。
確か、出来るだけ作って欲しいって言われていたんだ」
わたしの 言(げん) に、イメルダちゃんは渋い顔をする。
「今の状態なら行かなくても良くない?」
「う~ん、でもようやく売れ始めたんだよねぇ」
せっかく、銅貨一枚から銀貨一枚まで値が上がってきたのになんだか勿体ない。
最悪、赤鷲の団のアナさんに事情を言って売ってきて貰うか。
あ、町に入れないのであれば、林で面識のある冒険者を捕まえて、お願いするとか。
そんなことを考えつつ、イメルダちゃんがテーブルに置いた木板に視線を向ける。
道具関係だけでなく、食料についても書かれていた。
あ、そういえば!
「 弱(じゃく) 水牛君の肉、余ってたっけ?」
「水牛の肉?
確か、ケルちゃんが最近、好んで食べてたからもう、残りは無いわよ」
「あぁ~
ハンバーグを作るのに必要なんだよねぇ~」
前はティラノサウルス君の肉で作ったけど、あれはもう無い。
そうなると、牛関係の肉で作りたいと思ったからだ。
「ちょっと、探してくるよ。
狩りだから町に行く必要も無いし」
町に持っていけば、皮とか角とかが売れて、いくらか現金収入を得ることが出来るが、今、どうしてもお金が必要かと言われれば、そうでもない。
まあ、勿体なくは思うけどね。
そのことをイメルダちゃんに話すと、「取っておける分は取っておけば?」と言う。
まあ、それもそうか。
朝ご飯を食べた後、洗濯物を終えて、シャーロットちゃんの事をウメちゃんにお願いしつつ、外に出る準備をする。
ゴロゴロルームからヴェロニカお母さんが出てきたので「ちょっと狩りに行ってくる」と言うと「気をつけてね」とニッコリ頷いてくれた。
町に行く必要は無いので、ケルちゃんも連れて行こうかな?
そんなことを考えつつ、フェンリル帽子を被っていると、悪役妖精がすーっと飛んでくる。
そして、何やら偉そうな表情で身振り手振りをする。
え?
付いて行ってやる?
いや、狩りをするだけだし、いらないよ?
え?
悪役妖精(わたし) の気分転換になるし?
はぁ。
姫ちゃんの警護はどうするの?
ん?
ああ、姉姫ちゃんがいるから大丈夫なのね。
でも、姉姫ちゃんの方が行きたがるんじゃないかな?
え?
今、大木で検査を受けてるから、そっと行けば大丈夫?
そうなのね。
別に、悪役妖精が一緒に来ても、わたしとしては問題ない。
「別に構わないよ」
と了承しつつ、外に出る。