作品タイトル不明
お気楽?
朝、起きた。
机に伏せていた上半身を、静かに起こす。
肩にかけていたコートをハンガーに掛け、衣装ダンスに仕舞う。
そして、ベッドの上を覗く。
妹ちゃんはスヤスヤと眠っていた。
辛そうな感じはしない。
そっと、のせていた手ぬぐいを外し、おでこに手を当てる。
熱も下がったかな?
一応、白いモクモクを鍋型にして水を張り、手ぬぐいを浸して、しっかりと絞る。
そして、それをおでこに乗せ直す。
服を着替えると、そっと部屋から出ようとする。
扉を開けると、妖精メイドのウメちゃんが飛んでくるのが見えた。
ウメちゃんは、ニコニコしながら身振り手振りで〝代わる〟と言ってくれる。
ありがとう!
中央の部屋(食堂) に行くと、いつも通りケルちゃんがお座りをしていた。
三首揃って嬉しそうだから、天気が良いのだろう。
とはいえ、まずは手を洗いたい。
「ちょっと待ってて!」
と言いつつ、洗面所に急ぐ。
そして、そこに置いてあるアルコール度数の高いお酒を、白いモクモクで掴む。
まあ、一応ね。
お酒で手を洗い消毒をしていると、天井から気配を感じる。
チラリと視線を向けると、スライムのルルリンが天井から降りてくる所だった。
何やら嬉しそうに、わたしの手からこぼれてボールに溜まったお酒に着地すると、 吸収して(飲んで) いる。
……いや、まあ良いけどね。
ゴロゴロルームから気配を感じ、視線を向けるとヴェロニカお母さんが寝間着にカーディガンを羽織ったまま、出てきた。
わたしに気づくと、心配そうな表情で近づいてくる。
「シャーロットの様子はどうかしら?」
「もう、大分治ったみたいだよ。
今は、ウメちゃんが見ていてくれている」
「そう、それなら良かった」
とヴェロニカお母さんは心底ホッとした顔をする。
「明日には元気いっぱいになりそう。
あ、ハンバーグの準備をしなくちゃ」
ハンバーグは挽肉にしないといけないから、美味しいけど、地味に大変なのだ。
ヴェロニカお母さんはフフフと笑いながら「わたくしも楽しみにしているわ」とか言っている。
もう、お気楽だ!
そんなことを話していると、後ろから「がう!」「がが!」「がうう!」と抗議の声が聞こえてくる。
あ、ケルちゃんのことを忘れていた!
「ごめんごめん!」
と言いつつ、手を水で流し、拭いていると、ヴェロニカお母さんが代わりにケルちゃんをハグしていた。
「柔らかいわぁ~!」
とか嬉しそうにしている。
ちょっと!
早く代わって!
もふもふな3首、プラス後ろの1首を撫でて上げた後、外に出して上げようとする。
ただ、ヴェロニカお母さんが「わたくしが出して上げるわ」と言ってくれたのでお任せして、身支度を整える。
余り、遅くなるとシルク婦人さんに怒られるからだ。
飛んできた妖精メイドのサクラちゃんとルルリンを肩に乗せ、シルク婦人さんから壺と籠を受け取る。
今日から壺は山羊さんと牛さんの二つになるので、両手では持ちきれない。
籠を手に、白いモクモクで壺を二つ持ち、飼育小屋に向かう。
騒々しい赤鶏君の鶏冠を籠を持っていない方の手で軽く引っ張り、大分大きくなった雛ちゃん達が突っかかってきたので、右足で出した白いモクモクで追っ払い、卵を頂く。
赤鶏さん達に餌を上げつつ山羊さん夫妻に視線を向けると、昨日同様、壁にくっ付き固まっている。
そんなに、牛さんが怖いのかな?
先に牛さんに近づくと、のんびりした感じの鳴き声を上げながら、迎えてくれた。
怖がる必要は無いと思うけどなぁ~
なんて思いつつ、背中を撫でて上げ、牛乳を頂く。
牧草と大麦を上げた後、山羊さん達に近づく。
壁にくっ付いていた山羊さんだったけど、わたしがすぐ側まで近づくと――頭突きをしてきた。
まあ、そうだろうね。
わたしは掌でそれを受け止めつつ、更に、背中を撫でつつ「牛さん、怖くないよ?」と言って上げる。
だけど、〝分かってない!〟という様に「メェ~メェ~」と抗議をしてくる。
えぇ~
何とか宥めつつ、山羊乳も頂き、餌を上げる。
そして、外に出して上げる。
牛さんも外に出して上げようとするも、〝今は良い〟という様に「モォ~」と鳴いた。
まあ、扉は開けておくから、気が向いたら出るかな?
そのままにして、家に戻った。
壺と籠をシルク婦人さんに渡す。
その時、「山羊乳はチーズにするかも」と話しておく。
それを聞いたシルク婦人さんは「期待してる」と頷いた。
いや、前世の知識があるとはいえ、初めてやることだから、余り期待されても困るけどね。
そんなことを思いつつ、シルク婦人さんに指示されたものを食料庫まで取りに行く。
スライムのルルリンが体をとがらせスモモを指す。
今日は、スモモが食べたいのね。
渡して上げると、取り込んでいく。
わたしもちょっと食べたいかも。
一個取りだし、皮を剥く。
口止め料に白いモクモク包丁で切った一欠片を、サクラちゃんに上げると、残りをパクリとする。
うむ、甘酸っぱくて美味しい!
サクラちゃんもニコニコしながら美味しそうに食べている。
可愛い!
皮や種はルルリンに消化して貰い、食料を持って 中央の部屋(食堂) に行く。
いつものように、イメルダちゃんがテーブルを拭いていた。
龍のジン君はその回りをくねくねと飛んでいる。
イメルダちゃんはわたしに気づくと「おはよう」と挨拶をする。
「おはよう!」と返しつつ近寄ると、ジン君がこちらに飛んできて、わたしが持っている籠の辺りを旋回する。
お腹がすいたのかな?
だけど、行儀にうるさいイメルダちゃんが眉を寄せて「ジン、駄目よ!」と注意する。
ジン君はビクっと震えると、イメルダちゃんの方を向き、くねくねと近寄ると悲しそうな顔でくるくると体に巻き付く。
そして、姉的妹ちゃんの細い腕に頬ずりをする。
そんな龍君をイメルダちゃんは「朝ご飯の時に食べさせて上げるから、我慢しましょうね」と撫でている。
……わたし達は先ほどつまみ食いをしたからなぁ~
少し、気まずい……。
サクラちゃん達と顔を見合わせ、そそくさと、台所に移動するのだった。
手早く、パンを作った後、先にシャーロットちゃん用のすり下ろし林檎(蜂蜜入り)を作る。
そればっかりだと飽きちゃうかもしれないので、葡萄の皮を剥いたのも5個ほど小鉢に入れる。
あと、ひょっとしたら食べられるかとパンをいつもの半分にしたものと、牛乳を温めたものも用意してお盆にのせる。
イメルダちゃん達には「先に食べていて良いから」と断り、寝室に戻った。