軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

農家のおじさんが行方不明?

「興味がなくても、売れば良いんじゃない?

これ、ひょっとすると、銀で出来ているかもしれないよ」

「ぽいけど、売る伝手もないし、それを探すの面倒じゃない。

飽きたら捨てても良いし、伝手を探して売っても良いからね」

「はぁ。

まあ、なら貰っておくけど……」

前世だって、縦笛ならともかく、横向きの笛なんてやった事はない。

だけど、ヴェロニカお母さんならひょっとしたら吹けるかもしれない。

一応、持って帰ろう。

ひょっとしたら、凄く高いものかもしれないと思い、残りの葡萄のドライフルーツを袋ごと上げた。

「サリーちゃんって、律儀だよね」

と小白鳥の皆に笑われてしまった。

えぇ~

だって、気になるじゃない!

小白鳥の皆と別れ、受付嬢のハルベラさんに組合長のアーロンさんを呼んで貰う。

組合長室から出てきたアーロンさんは何人かの職員さんに「サリーの荷車まで運んでやってくれ」と指示してくれた。

そして、手招きをしてくる。

わたしが近づくと、アーロンさんは言う。

「冷房の魔道具については、明後日辺りには用意できる。

取りに来てくれ」

そして、そっと囁くように「明日、頼んだぞ」と言う。

「うん、予定通りに?」

「ああ、予定通りに」

頷くと、手を振ったアーロンさんは引っ込もうとする。

わたしはそれに待ったをかける。

そして、そっと囁く。

「わたしの森の近くだけど、 赤大獅子(あかおおしし) の雄のはぐれがいたよ」

息をのんだアーロンさんは、大きく頷く。

「こちら側に近づいてくる様子が見えたら教えてくれ」

と囁いてきたので、頷いておいた。

外に出ると、荷車に窓ガラスを積んでくれた職員さんにお礼を言い、門に向かう。

すると、「サリーちゃん!」という女の人の声に呼び止められた。

「ん?」と視線を向けると、前に農業の事を教えてくれた農家のおばさんが慌てた感じに近づいてきた。

「久しぶり」

と手を振ると、農家のおばさんは「ええ、久しぶりね」とニッコリ微笑んでくれる。

そして、その表情を曇らせ訊ねてくる。

「ねえ、ジョンを見かけなかった?

以前、サリーちゃんが教わるはずだった男の事なんだけど」

最初、名前を聞いてもよく分からなかったけど、話を聞く内に思い出した。

農業の話を聞きに行った時に、働かせるだけ働かせた上に、嫁に来いとか言ってたおじさんの事だ。

「ううん、見かけてないけど、どうしたの?」

「ここ数日、姿を晦ましてしまったの」

「そうなの?」

「ええ、こんな事は初めてで、皆心配しているのよ」

そんな事を言われても、あれ以来、会っていないどころか、思い出す事すらなかった。

そのことを話すと、心配そうにため息を吐いた。

「サリーちゃんの件がある前から、少し変だったのよ。

あの子、昔から虚勢を張る所があったの。

ただ、気が弱いから、わたし達周辺だけで留まっていたんだけど……。

冒険者組合の組合長に怒られた時も、らしくなく反発していて、驚いちゃったわ。

いなくなった前日なんか、誰かに殴られたみたいで顔を腫らしていたんだけど、”俺は神を降臨させられるんだぁ~”とかブツブツ言っててね」

えぇ~

神を降臨とか、前向きに考えれば 中二病(あっち) に目覚めたのかな? とか思えるけど、真剣に言っているのなら、相当ヤバくない?

あと、組合長のアーロンさんに怒られたって、わたしの件だよね?

他人事(ひとごと) じゃないよね。

なんて思っていると、表情に出たのか、農家のおばさんは微笑みながら首を振った。

「サリーちゃんが気にする事じゃないのよ。

あの件はジョンが完全に悪いのだから。

でも、もし、見かけたらで良いので教えて欲しいわ。

門から出たのを見た人もいたから、ひょっとすると別の町や村に行ってしまったのかもしれないけど……」

「うん、分かった」

わたしは頷いた。

結界を抜けて、我が 国(家) に到着!

麦わら帽子を被り、龍のジン君を体に巻き付けたイメルダちゃんが畑の様子を見ていたので「ただいまぁ~」と手を振りつつ、近づく。

顔を上げたイメルダちゃんは「お帰り」と応えてくれた。

そして、荷車に視線を向けつつ訊ねてくる。

「窓ガラスは出来てた?」

「うん、出来てたよ。

今から、物作り妖精のおじいちゃんにはめ込んで貰うよ」

そんな話をしていると、妖精メイドのサクラちゃん達がすーっと飛んできた。

そして、身振り手振りで”ガラスを持っていく”と言ってくれる。

助かります!

わたしの胸元から出てきた白雪ちゃんを含む、小さい妖精ちゃんが軽々とガラスを運ぶ様子を感心しつつ見送っていると、物作り妖精のおじいちゃんが歩いている姿が見えた。

あ、ちょうど良い。

「おじいちゃん、ちょっと見て貰いたい物があるの!」

こちらに視線を向けた物作り妖精のおじいちゃんの元まで、荷車を引きつつ近寄る。

そして、荷台に置いてあった袋から、例の笛を取り出した。

「ねえねえ、おじいちゃん。

これ、綺麗に出来る?」

物作り妖精のおじいちゃんは興味深げにわたしが持つ、黒ずんだ笛を見る。

そして、”寄越して見ろ”と言うように身振り手振りをした。

渡すと、しばらく眺めた後、”試してみる”と言うように身振り手振りをした。

そして、家の方に駆けて行く。

「あ、先に窓を付けてね!」

とその背に声を掛けると、”分かってる!”と言うように振り返らないまま手を振ってきた。

大丈夫かなぁ~

終わった後に見せた方が良かったかなぁ~

なんて、心配していると、後ろから、イメルダちゃんが近寄ってきて「あれ、何なの?」と訊ねてきた。

「笛だよ。

もらい物なんだけど、ひょっとしたら、銀で出来てるんじゃないかって思ってる」

「銀の笛?

良くそんなもの貰えたわね」

「売る伝手がないとか言ってたし、黒ずんでいるから、そんなに良いものじゃないって思ったんじゃないかな?」

「まあ、確かに酷くくすんでいたわね」

「イメルダちゃん、笛って吹ける?」

わたしが訊ねると、姉的妹ちゃんは苦笑する。

「まだ習ってなかったわ。

お母様なら、吹けると思うけど……」

「じゃあ、綺麗になったら、ヴェロニカお母さんに吹いて貰おうかな?」

そんな風に話しつつ、二人で家に帰った。

荷車を置いた後、「ただいまぁ~」と言いつつ家の中に入る。

揺れ椅子に座るヴェロニカお母さんが「おかえりなさ~い」とのんびりとした声で返してくる。

ヴェロニカお母さんの膝の上には眠っているシャーロットちゃんが座っていて、風邪を引かないように、毛布が掛けられている。

揺れ椅子の隣には、籠が置かれていて、一番小さい妹ちゃんであるエリザベスちゃんがスヤスヤ眠っている。

わたしは近づくと、エリザベスちゃんのほっぺを指で突っつく。

柔らかくて可愛い!

ヴェロニカお母さんが「この椅子、良いわねぇ~」などと気持ちよさそうに言っている。

「気に入ったんなら、もう一つ作って貰って部屋に置く?」

「ん~

いや、これが部屋にあると、一日中、座ってしまいそうだから遠慮しておくわ。

ほら、シャーロット、サリーお姉さまが帰ってきたわよ」

ヴェロニカお母さんがシャーロットちゃんを揺すると、妹ちゃんは眠そうにしながらも薄く目を開ける。

そして、わたしを見つけると、嬉しそうに「お帰りなさい」と言ってくれる。

可愛い!