作品タイトル不明
ワイバーン君を運ぼう!
「ただいま!」と言って抱き上げて上げると、嬉しそうに「きゃっきゃ!」と笑っている。
可愛すぎる!
そんな事をやっていると、物作り妖精のおじいちゃんがちょこちょこと駆け寄ってくる。
そして、”部屋の窓ガラス、付けておいた”と身振り手振りで言ってくる。
「早いね!」
と驚愕するわたしに、”大したことではない!”と身振り手振りをしつつ、照れくさそうにする。
おじいちゃんも可愛い!
朝、起きた!
ベッドから抜け出し、遮光用の厚手のカーテンを開けてみると、ガラス越しに柔らかな陽光が入ってくる。
う~ん、素晴らしい。
前までは、窓が無かったんだよね。
こちらの面は軽運動室があったし、他の面も部屋があったり、二重壁になってたりして付けられなかったのだ。
冬ごもりの時は、冷気が入るので窓なんて開けないからそれで良かったし、むしろ、ガラス一枚だと冷気が入ってきて大変だったと思う。
けど、今は春、そこまで心配する必要は無い。
むしろ、空気の入れ換えが必須の夏が来る事を考えたら、早めに改築できて良かったと思う。
妹ちゃん達がまだ眠っているので、カーテンを閉め直す。
そして、静かに部屋から出る。
中央の部屋(食堂) に行くと、興奮気味のケルちゃんが「がうがう!」言いながら詰め寄ってきた。
はいはい、天気が良いもんね!
外に出ようね!
わたしの顔に頬ずりしてくるケルちゃんを撫でながら、玄関から外の扉を開ける。
ケルちゃんはわたしの横をすり抜け、階段を飛び降りて駆け回り始めた。
その余りの勢いに、妖精姫ちゃんの花壇近くを飛んでいた妖精ちゃん達が、慌てて近寄らせないよう警戒している。
「ケルちゃん!
姫ちゃんの花壇やイメルダちゃんの畑を荒らしちゃ駄目だよ!」
わたしが注意すると「がう!」「ごう!」「が!」と返事が返ってくる。
まあ、なんやかんや言って、ケルちゃんはそういうことはちゃんと守るから大丈夫でしょう。
わたしは家の中に入る。
ん?
わたしの小さい家の前に、小さい揺り椅子が二つ、置かれている。
一つは姉姫ちゃんで、もう一つは姫ちゃん用かな?
姫ちゃん達が使っていたら、凄く可愛らしい絵になりそうだ。
少しほんわかしていると、屋根に付いている屋根裏用の窓が開いた。
そこから、姉姫ちゃんが顔を覗かせ、嬉しそうに手を振っている。
……完全に、姉姫ちゃんの自宅になってたりしないよね?
大丈夫だよね?
内心の疑念をぐっと堪えつつ、ニッコリ微笑みながら手を振り返しておいた。
顔を洗い、妖精メイドのサクラちゃん達に髪を結って貰いつつ、身支度をする。
すると、サクラちゃんが身振り手振りで言う。
え?
三つ編みが長くなった?
邪魔になってない?
う~ん、そうだね……。
髪、結構長くなっていて、背中を越えてしまっている。
だから、結い方を変えようとは思っていたんだけど、なんやかんや言って、先延ばしにしていたんだよねぇ~
本当は切った方が早いんだけど、ヴェロニカお母さんが許してくれないし……。
すると、サクラちゃんが身振り手振りで”わたし達が考えておく!”と言ってくれる。
そうだね、多分わたしが考えるよりは、サクラちゃん達にお願いした方が良いよね。
「じゃあ、お願いできる?」
と応えると、サクラちゃんは嬉しそうに頷いてくれた。
可愛い!
サクラちゃんと、下りてきたスライムのルルリンを肩に乗せ、飼育小屋に向かう。
ん?
何やら、騒々しい?
中に入ると、 雛(ひよこ) ちゃんが二匹、ピヨピヨ言いながら駆け回っていた。
あ、赤鶏さんの卵、 孵(かえ) ったんだ!
それはめでたい!
ただ、元気いっぱいの雛ちゃんに対して、山羊さんが不満そうにメェ~! メェ~! 言っている。
羊さん夫妻は我関せずって感じでイチャイチャしてた。
「あ、こら雛ちゃん!
山羊さんの方に向かっていかない!」
白いモクモクで雛ちゃんを捕まえると、赤鶏さん達の方に戻す。
なにやら、不満げにピヨピヨ言ってるけど、君らよりは山羊さんの方が強いから、下手すると蹴られちゃうからね!
大麦を与えつつ、赤鶏さんを宥める。
雛ちゃんや赤鶏さん達は嬉しそうにそれをついばみ始める。
え?
おかわり?
はいはい、沢山食べて元気に育って!
しかし、これで卵が三つ手に入るようになるのかな?
そんな事を考えつつ、卵を一つ手に入れる。
続いて、山羊さんの乳を頂く。
赤鶏さんの方を鼻で指しながら”あれ、うるさい!”と言うようにメェ~メェ~言うので、「まあまあ、しばらくしたら落ち着くから!」と背中を撫でて上げる。
羊さんにもご飯を上げて、山羊さん夫妻と共に、外へ出して上げた。
中央の部屋(食堂) に戻り、シルク婦人さんに卵と乳を渡す。
「赤鶏さんの卵が孵っていたから、そのうち、卵が三つになると思う」
と伝えると、どことなく嬉しそうに、こくこくと頷いた。
籠を受け取り、食料庫に向かい、シルク婦人さんにお願いされた物を取り出していく。
スライムのルルリンがスライムボディーでライチを指したので、それを上げつつ 中央の部屋(食堂) に戻る。
龍のジン君を体に巻き付かせたイメルダちゃんが、テーブルを拭いていた。
「おはよう」と言いつつ、シルク婦人さんに籠を渡しに行く。
「おはよう、サリーさん。
今日はワイバーンを届けに行くんだったわよね」
「うん。
町には寄らないから、早く帰ってくるよ。
それから、葡萄酒作りだね」
「ええ、お願い」
そんな話をしつつ、視線をわたしの小さな家に向ける。
姉姫ちゃんが家の前に置いてある揺り椅子に座って気持ちよさげにしていた。
なんだか可愛い!
妖精姫ちゃんが飛んできて、そんな様子を呆れた顔で見ている。
そして、わたし達の方に視線を向けると”おはよう!”という様に笑顔で手を振ってくる。
こちらも可愛い!
「おはよう!」
「おはよう」
とわたしとイメルダちゃんも手を振り返す。
姫ちゃんは、姉姫ちゃんに視線を戻すと、一言二言何かを言っている。
ただ、姉姫ちゃんはまるで聞いていない様子で、揺り椅子を小さく揺らしている。
妖精姫ちゃんは一つため息を吐くと、自分も揺り椅子に座った。
そして、姫ちゃんものんびりした顔で椅子を揺らし始めた。
合わせて、可愛い!
朝ご飯を食べて、洗濯を終える。
外に出ると、 ワイバーン(偽竜君) を解凍し、荷車に乗せる。
ぬ?
このサイズで三匹を乗せるのは流石に厳しいか。
妖精ちゃん達にも手伝って貰い、無理矢理乗せて、縄で縛り、これまた無理矢理カバーを掛ける。
因みに、羽、一枚分は既に切り取ってある。
あと、切り口が綺麗すぎると問題かと思い、わたしが無理矢理引きちぎり、しかも、その周りを白狼君に囓って貰った。
人為的に斬られたものではないと思わせるための小細工だ。
まあ、大丈夫だとは思うけど、変な勘ぐりはされたくないしね。