作品タイトル不明
真っ赤な獅子君登場!
妖精メイドのサクラちゃん達に三つ編みをして貰いつつ、身支度を整える。
そして、スライムのルルリンとサクラちゃんを肩に乗せ、飼育小屋と食料庫を回る。
戻ってくると、龍のジン君を体に巻き付かせたイメルダちゃんが、シルク婦人さんと何やら深刻そうに話をしていた。
姉的妹ちゃんはわたしに気づくと「おはよう」と近づいてくる。
「おはよう。
なにかあったの?」
わたしが訊ねると、イメルダちゃんは少し困った顔になる。
「実は、葡萄酒がこのまま行くと少し足りなくなりそうなの」
「葡萄酒が?」
「ええ、妖精ちゃん達が想像以上に頑張ってくれてるので、その報酬も多くなりそうだし、シルク婦人も料理用やお酢が欲しいって。
サリーさん、追加で作ってくれる?」
「前にテュテュお姉さんから聞いてるから作れるよ」
シルク婦人さんにお願いされていた食材を渡しつつ答える。
わたしがテュテュお姉さんの名前を出すと、イメルダちゃんの表情がさらに苦みを帯びる。
「あの葡萄酒、そもそもテュテュさんのものでしょう?
流石に何樽もは使えないと思うのよ」
「まあ、何かに使うなら、使い切っても良いとか言ってたけど」
「いや、流石にそれは申し訳ないわよ」
「まあ、そりゃそうだよね。
ひょっとしたら、楽しみにしてるかもしれないしね」
冬ごもりの時期に作ったワインは相当量あった。
流石のテュテュお姉さんも、あれが全部無くなっているとは思わないだろうしね。
「今日は町に行ったり、物作り妖精のおじいちゃん達の手伝いがあるから難しいけど、明日辺り作るよ」
「お願いね」
パンを作ったり、テーブルを拭いたりをした後、朝食を食べる。
その後、いつものように洗濯をしていると、物作り妖精のおじいちゃん達がやってきて、足をペチペチ叩いてくる。
「はいはい、ちょっと待っててね」
と答えつつ、乾燥させた洗濯物を畳もうとすると、妖精メイドのサクラちゃん達がすーっと飛んできて、身振り手振りで”やっとく!”と言ってくれた。
助かります!
おじいちゃん達に急かされ、早足で付いていく。
連れて行かれた場所は染色、裁縫工場の隣だった。
その地面に何やら四角い線が引かれていた。
え?
何これ?
すると、物作り妖精のおじいちゃんが身振り手振りで言う。
え?
建てる?
家を建てるの?
違う?
作るための 工場(こうば) ?
え?
水に浮かせる?
あ、ひょっとして、前に言っていた船をここで、作ろうとしてる?
そもそも、そんなもの作ってどうするの?
そう訊ねるも、よく分からないけど、”作りたいから、作るのだ!”と言うように、身振り手振りをするだけだ。
正直、意味が分からないんだけど……。
さらに、物作り妖精のおじいちゃんは身振り手振りで続ける。
建物と船で使用する木材が足りない?
それさえあれば、町に行けば良い?
さようですか。
え?
さっさと動け?
人使いが荒いなぁ~
でも、伐採する場所はイメルダちゃんに相談しなくちゃならない。
家に戻り、頼りになる宰相様にそのことを訊ねると、取りあえず、南西の方を 伐(き) っていって欲しいとの事だった。
なので、そこまで移動し、モクモク刀でサクサクと伐っていく。
あ、 黒風(こくふう) 君達も手伝ってくれる?
ありがとう!
わたしと近衛兵士妖精君達で結構な木材を積み上げた。
乾燥もやって上げたので、物作り妖精のおじいちゃんも満足げだった。
終わった後、軽くお昼を食べて町に向かって出発する。
ケルちゃんが付いて行きたそうにしていたけど、まだ許可は得ていない。
「家でシャーロットちゃんを守って上げて」
と背中を撫でて上げると、三首して渋々ながら同意してくれた。
荷車を用意し、近衛兵士妖精の白雪ちゃんを胸にしまい、玄関前まで見送りに出てきたヴェロニカお母さん達に手を振って出発する。
結界を出て、白狼君達が合流してくる。
川を越え、森を抜け、平原に出ると、サーベルタイガー君が駆けている様子が見える。
あ、灰色ウサギ君の集団を追いかけているようだ。
あの一メートル級の灰色ウサギ君、春先になると大量に現れるんだよね。
そして、集団で行動する。
彼らが進んだ後は草木が食い散らされて、一見すると、やっかいな存在なんだけど……。
彼らの糞は栄養豊富なのかよく分からないけど、すぐに草が育っていくから、一概には言えないんだよね。
ひょっとしたら、農業をする上でかなり良質な肥料なのかもしれないけど……。
我が家に持っていくのはちょっと、遠慮したいなぁ。
……一応、イメルダちゃんに聞いてみるだけ、聞いてみようかな?
そんな事を考えていると、脇にそれた灰色ウサギ君達に、サーベルタイガー君の一頭が追いすがり、後方の一匹に噛みついた。
あ、あれは悪手だな。
そんなサーベルタイガー君に、反転した灰色ウサギ君達が飛びかかり噛みついていく。
「ぎゃん!」と叫ぶも、サーベルタイガー君は灰色ウサギ君を噛みついている自身の牙が取れないので追い払えずにいる。
灰色ウサギ君は草食だけど、なんやかんや言って魔獣だ。
それなりに鋭い牙を持つ。
あっという間に血まみれとなり、サーベルタイガー君の仲間が慌てて助けに駆け寄るも、時既に遅し、絶命してしまったようだ。
灰色ウサギ君は一匹一匹は弱いけど、相手が単体になった場合は取り囲み、捨て身で殺しに来るのだ。
弱い魔獣でも油断すると痛い目を見る――その典型例だね。
白狼君達が、狩りに行かないのですか?
って顔を向けてきたけど、あの乱戦の中に入っていくのは――流石に危険とは思わないけど、漁夫の利を狙うようで気が進まない。
『行かないわよ』
と応えた。
ん?
嫌な気配を感じ、視線を向けると、少し驚いた。
遠方に真っ赤な毛をしたライオンが立っていた。
赤ライオン君だ。
人間の間では確か、 赤大獅子(あかおおしし) とか呼ばれているはずだ。
あそこまで立派なたてがみなら、雄だと思う。
彼らは群れで行動するのだけど、彼は一頭だけ――はぐれかな?
だけど、威風堂々といった感じの立ち姿をしていて、なかなか格好いい。
そんな、赤ライオン君がこちらを凝視していた。
こちらの動きを警戒しているのかな?
わたしとしては、赤ライオン君なんかには用がないので、そのまま町の方に駆けて行く。
そんなわたしに目を細めた赤ライオン君が――駆けた。
狙いは灰色ウサギ君やサーベルタイガー君の集団にだ。
真っ赤な体が矢のように突き進み、灰色ウサギ君の一体に食らいついた。
多分、一番大きい灰色ウサギ君だろう。
首に噛みつかれ、あっという間に絶命しているようだった。