作品タイトル不明
揺り椅子、完成!
……隣からわたしを呼ぶ声が聞こえる。
ん?
視線を向けると、シャーロットちゃんがわたしの手を引っ張ってた。
「……あれ?
ああ、寝ちゃってた」
一つ欠伸をする。
シャーロットちゃんが訊ねてくる。
「サリーお姉さま!
その椅子、さっきの?」
「うん、さっきの」
わたしが座っているのは揺り椅子だ。
恐るべきと言うか何というか、おじいちゃん、もう完成させた。
しかもこれ、ニスが塗られているだけでなく、クッションやらカバーやらが付けられている。
手芸妖精のおばあちゃんが、おじいちゃん達が作る姿を見て、必要になるだろうと作ってくれたのだ。
物作り系妖精ちゃん達、本当に半端ない!
今のものは、濃い緑色のカバーなんだけど、要望があれば別の色のものも作ると言ってくれた。
でも、わたしとしては特にこの色で問題ないと思っている。
「シャーロットちゃん、座ってみる?」
と訊ねると、妹ちゃんは満面笑みで「うん!」と頷いてくれる。
可愛い!
とはいえ、シャーロットちゃんをそのまま座らせるには、この椅子、大きすぎる。
なので、白いモクモクで持ち上げると、わたしの膝の上に座らせた。
そして、バランスを崩さないよう、念のために腰に手を回す。
もたれかかってくるシャーロットちゃんの温もりが、伝わってくる。
シャーロットちゃんが視線をキョロキョロさせながら言う。
「サリーお姉さま、なんか不思議な感じがする」
「そうでしょう?」と言いつつ、少し揺らしてみた。
シャーロットちゃんは「うわぁ~!」と嬉しそうにしてる。
可愛い!
そんな事をやっていると、「もう完成したの?」というイメルダちゃんの呆れた感じの声が聞こえてきた。
視線を向けると、イメルダちゃんとヴェロニカお母さんがゴロゴロルームから出てくる所だった。
「なかなか良いよ」
「うん、なかなか良いよ、お姉さま」
う~ん。
なんだか、シャーロットちゃんの温かさも相まって、また眠たくなってきた。
あ、でも、余り寝過ぎると夜に眠れなくなるかな?
それはちょっとマズイか。
などと考えていると、ヴェロニカお母さんがニコニコしながら近寄ってくる。
「面白そうね。
あとで、わたくしにも座らせて」
「ん?
ああ、今でも良いよ」
と言いつつ、起き上がる。
「あら、別に急がないわよ」
「ううん、余り寝過ぎると、夜に困るから。
ごめん、シャーロットちゃん、ちょっと下りて」
「うん」
と言いつつも、残念そうな妹ちゃんに申し訳ないと思いつつ、下りて貰うと、わたしも地面に立つ。
そして、体を伸ばした。
う~ん、久しぶりの昼寝、なかなか気持ちよかった!
あ、ヴェロニカお母さんを座らせないと。
「ヴェロニカお母さん、座るのにちょっとコツがいるから」
と説明しつつ、座らせて上げる。
あと、妹ちゃん達に危ないから、特に人が座っている時はむやみに近づかないように説明する。
ヴェロニカお母さんが目を閉じながら、気持ちよさそうな声を出す。
「この椅子、なかなか良いわね。
ねえ、サリーちゃん、時々座っても良いかしら?」
「それは構わないけど、座る時と立つ時、気をつけてね」
そう注意していると、妖精メイドのスイレンちゃんがすーっと飛んできて、”わたしが注意しておく”と言うように身振り手振りをする。
頼もしい!
体を揺さぶられて目を覚ます。
視界は暗い。
まだ夜、だよね?
視線を横に向けると、シャーロットちゃんが切迫した顔で「さ、サリーお姉さま……。お手洗い」と言っている。
……あ、トイレね。
そっと、ベッドから出ると、シャーロットちゃんもその後に付いてくる。
イメルダちゃんが眠そうに顔を上げ、こちらを見てきたので、顔を近づけ「シャーロットちゃんと小用に行ってくるね」とそっと伝えると、頷き、また枕に頭を置き直した。
「サリーお姉さま!
サリーお姉さま!」
と徐々に緊迫した様子になるシャーロットちゃんに焦りながら、妹ちゃんと手をつなぎ、白いモクモクで照らしつつ、トイレに向かう。
そして、中の明かりを付けて上げると、シャーロットちゃんを入れた。
だ、大丈夫だったかな?
心配しつつも、扉の真ん前で待っているのは少々気まずいので、少し離れた位置で立つ。
ん?
中央の部屋(食堂) で何やら気配を感じる。
妖精ちゃん達が何かやってるのかな?
なんとなく、中を覗くと揺れ椅子に座るシルク婦人さんと目が合った。
手には山羊乳が入っているだろうコップを持っている。
「……」
「……」
シルク婦人さんが椅子から起き上がろうとするので、それを止める。
「その椅子、いくらでも使って貰って良いから」
と伝えつつ、その場を離れた。
いや、全然問題ない。
問題ないんだけどね。
なんか、シルク婦人さんのプライベートを覗いてしまった気がして、ちょっと気まずかった。
すっきりした顔で出てきたシャーロットちゃんを急かし、 中央の部屋(食堂) を見ないように、部屋に戻った。
朝、起きた!
目を開けると、目の前に龍のジン君の寝顔があった。
彼の顔の下には、ケルちゃんぬいぐるみを抱きしめるシャーロットちゃんが、スヤスヤ眠る顔がある。
イメルダちゃんの側から離れたがらなかったジン君も、大分慣れてきたのかな?
でも、起きたら驚くだろうから、掌で体を持ち上げると、眠っているイメルダちゃんの元に移動させる。
これで良し!
ベッドから出ると、軽く伸びをする。
服を着替えると、部屋から出た。
中央の部屋(食堂) に入ると、ケルちゃんが嬉しそうな顔で座っていた。
そして、わたしを見ると、近寄ってきて頬ずりをして来る。
もふもふで温かぁ~い!
え?
外?
はいはい。
え?
早く?
ケルちゃんに急かされ、外に出ると、なるほど、空は快晴だった。
三首して嬉しそうに吠えると、階段を跳躍一つで飛び降り、駆け回っている。
今日はガラスを取りに行こうと思っていたから、晴れているのはありがたい。
などと考えていると、物作り妖精のおじいちゃんが何やら、わたしの側まで駆けてきた。
そして、身振り手振りで言う。
え?
今日こそ手伝え?
あっち?
はいはい、ガラスを取りに行ったらね。
え?
こっちが先?
いや、一日中かかると困るんだけど……。
え?
大丈夫?
本当かなぁ?
え?
付いてこい?
いや、後でね。
身振り手振りで”今すぐ!”とかやっているおじいちゃんを宥めつつ、家の中に入る。
ん?
部屋の隅に置かれた揺り椅子、その上にちっちゃい何かが置かれているのに気づく。
……。
「何やってるの、姉姫ちゃん」
白のワンピース姿の姉姫ちゃんが、いかにもリラックスしていますよぉ~って顔で、揺り椅子に乗っていた。
わたしに気づいた姉姫ちゃんは”これはなかなか良いね!”と身振り手振りをしてくる。
「……いや、とても言いにくいんだけど、姉姫ちゃんの体格では、揺り椅子の意味がないよ?」
と教えて上げると、ショックを受けた顔になる。
この妖精ちゃん、見た目は凜々しいお姫様なのに、お馬鹿さんっぷりが酷い!
「物作りの妖精ちゃんに、体に合ったのを作って貰ったら?」
と言うと、”その手があった!”と言うように、コクコク頷くと、飛んでいった。
……うん、まあ、やる事をやらねば。