作品タイトル不明
転生者の面汚し?
物作り妖精の皆は、 揺(ゆ) り椅子をしっかり観察した後、どこかに駆けていった。
ひょっとして、 揺(ゆ) り椅子を作りに行ったのかな?
ほんと、スローライフが出来ないおじいちゃん達だなぁ。
そんな事を考えつつ、白いモクモクを解除し、椅子から降りる。
そして、屋根裏への入り口、その近くまで行くと、足から出した白いモクモクを階段状にして上る。
そして、まあ、礼儀としてコンコンってノックをする。
入り口が開くと、妖精メイドのウメちゃんが顔を覗かせて、そこで待っててと言うように、身振り手振りをした。
ウメちゃんが顔を引っ込めてからすぐに、シャーロットちゃんが顔を覗かせた。
「サリーお姉さま、どうしたの?」
「ヴェロニカお母さんがお茶にしようって。
下に戻ろう?」
シャーロットちゃんは少し躊躇したけど、「また、上れば良いよ」と言うと「うん」と頷いてくれた。
席に着くと、シルク婦人さんと妖精メイドのサクラちゃんがお茶の準備をしてくれる。
それを横目に、シャーロットちゃんに訊ねてみる。
「シャーロットちゃん、屋根裏はどういう状態になってた?」
わたしの問いに対して、可愛い妹ちゃんは嬉しそうにしながら「凄かった!」と答える。
「凄かった?」
イメルダちゃんが訊ねると、妖精メイドのウメちゃんが慌てた感じに飛んできて、シャーロットちゃんの前で”シィー! シィー!”と言うように身振り手振りをする。
シャーロットちゃんは慌てて自分の口を両手で押さえると「内緒だって約束してたんだ」と言っている。
えぇ~!
「ちょっと、ウメちゃん!
屋根裏で何をやってるの!?」
わたしが訊ねても、ウメちゃんは”何も無い! 前見た時と変わらない! ほんと、ほんと!”とか焦った感じに身振り手振りをしている。
いや、妖精ちゃんのそういう所、全然信用できないんだけど!
イメルダちゃんも「一度、確認した方が良いんじゃない?」と冷めた目で言っているし。
すると、ニコニコ顔のヴェロニカお母さんが、「まあまあ、まずはお茶を頂きましょう」と取りなす様に言う。
まあ、シルク婦人さんがせっかく用意してくれたお茶が冷めたら、申し訳ないのはある。
視線をテーブルに向けると、ティーカップと共に、小皿にのせられた固めのパンがあった。
この固めのパン、わたしが作ったものではない。
シルク婦人さんが時々作ってくれる物だ。
皆は白パンって言っているけど、これ前世で言うスコーンじゃないかと思っている。
これにジャムを塗って食べると、凄く美味しい!
ヴェロニカお母さん達が手慣れた様子で食べているのを横目に、イチゴジャムを塗りつつわたしも食べる。
うん、主張しすぎないスコーンと甘いイチゴジャムの組み合わせ、最高!
とはいえ、転生者なのに、前世知識チートでドヤっ! っと余り出来ていない気がする。
もうちょっと頑張らないと、『この転生者の面汚しめ!』とか言われそうだ。
……やはり、そろそろあれを投入する頃ではなかろうか?
満を持して、最強のあの料理を……。
少なくとも、シャーロットちゃんには喜んで貰える、最強のあの料理を!
「ふっふっふ」
わたしが胸中に野望をたぎらせていると、イメルダちゃんが冷めた感じに言う。
「サリーさん、今日はのんびりするんでしょう?」
「え?
そうだけど?」
「だったら、大人しくしてなさい。
すろーらいふ? ってのをするんでしょう?」
えぇ~!
お茶を終えると、ヴェロニカお母さんとイメルダちゃんは刺繍の続きを、シャーロットちゃんはエリザベスちゃんとお昼寝をするためにゴロゴロルームに行ってしまい、わたしはまたしても、 中央の部屋(食堂) の椅子を 揺(ゆ) り椅子にして、座っていた。
ゆれ~る、ゆれ~る。
まあ、白いモクモクで作っているので、微妙な感じはするけど、それでも慣れてきたので、気持ちが良くなってきた。
でも、このまま寝るのはちょっとマズイよね。
気づいたら、白いモクモクが消えていて、ぶっ倒れるという恥ずかしい事になりそうだ。
なんて考えていると、部屋の中で何かをする音が聞こえてきた。
ん?
視線を向けると、物作り妖精のおじいちゃん達が部屋の端の方に敷物を敷いたりして何かやっている。
「え?
何やってるの?」
と訊ねると、物作り妖精ちゃん達の何人かが、部屋の中に椅子を運び入れてきた。
って!
「えぇぇ!
もう作ったの?」
それは、木で出来た 揺(ゆ) り椅子だった。
まだ、仕上げはされていないようでニスなどは塗られていないようだけど、見た目はほぼほぼ完成しているように見えた。
すると、物作り妖精のおじいちゃんが身振り手振りで言う。
え?
調整中?
座って見ろ?
わたしは白いモクモクを解除すると、今まで座っていた椅子から立ち上がり、近づいてみる。
思ったより、立派なものだ。
まあ、物作り妖精のおじいちゃんが作る物なんだから、当たり前と言えばそうなんだけど。
おじいちゃんが”さっさと座れ!”と言うように、足をペチペチ叩いてくるので「はいはい」と答えつつ、腰を下ろす。
体がぐわんと傾き「わっ!」って声を上げちゃった。
怖い怖い!
後ろに転がるかと思っちゃった。
すると、下の方から床を叩く音が聞こえる。
視線を向けると、物作り妖精のおじいちゃんが”さっさと下りろ!”と言うように身振り手振りをする。
えぇ~!
すると、椅子が傾き、体が勝手に起き上がり始める。
ん?
視線を足下に向けると、物作り妖精ちゃん達が起こしてくれている所だった。
……善意と言うより、さっさと退かすためだろう。
”早く! 早く!”と言うように急かしてくる。
えぇ~!
揺(ゆ) り椅子から下りると、物作り妖精ちゃん達が殺到し、凄い勢いで調整し始める。
物を作るこの情熱、一体どこから湧いてくるのだろう。
などと、テーブルに備え付けられている椅子に戻り、呆れつつ眺めていると、天井から下りてくる気配を感じる。
視線を向けると、スライムのルルリンだった。
白色ボディーがわたしの肩に下りてきた。
「なに?
どうしたの?」
訊ねるも、わたしの膝の上に移動したルルリンはぽよぽよ揺れるだけだ。
手のひらで触ってみる。
スライムのぽよぽよボディーなかなか、気持ちが良い。
すると、玄関の扉が開き、視線を向けると近衛兵士妖精の青空君に入れて貰っただろう、ケルちゃんが中に入ってきた。
そして、わたしの背後に回ると頬ずりしてくる。
ふふふ、少しくすぐったくて気持ちよい。
これぞ、スローライフって感じだ。
そんな、まったり気分でいると、足下で物作り妖精のおじいちゃんが”さっさと、あれに乗れ!”と指示を出してくる。
「えぇ~!
もう、おじいちゃん達ももっとスローな生活をしようよ!」
そう言っても、せっかちなおじいちゃん達は、”早く早く”と急かしてくる。
困ったおじいちゃん達だ!