軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スローライフに必須の椅子?

そんな事を考えつつ、パンを食べる。

わたしの正面にいるイメルダちゃん、その隣には龍のジン君用の止まり木が置かれている。

せめて食事中はそこに掴まって貰い、イメルダちゃんの負担を軽減させようと思って、物作り妖精のおじいちゃんに相談して作って貰ったものだ。

ジン君はちょっと嫌がったけど、イメルダちゃんが宥めつつもお願いしたら、仕方がないと言った感じに、移動した。

食べさせるのも、例の水をこれまた物作り妖精のおじいちゃんに作って貰った水差しで飲ませるのも 楽(らく) そうだ。

それに、ジン君としても、イメルダちゃんの顔がよく見えるからか、嬉しそうになった。

そんな様子を眺めていると、わたしの隣に座るシャーロットちゃんが訊ねてくる。

「サリーお姉さま、今日は何をするの?」

「今日はね、のんびりする日なの」

「のんびり?」

「スローライフだね」

イメルダちゃんが眉を寄せる。

「すろ? なにそれ?」

「ゆっくりとした時間を過ごす、って意味だね」

「また、よく分からない言葉を使うわね」

イメルダちゃんに少し呆れた顔をされてしまった。

まあ、前世の、しかも英語だから分からなくても無理はないかな?

あれ?

和製英語なんだっけ?

よく分からないけど。

イメルダちゃんが続ける。

「それで?

具体的には何をするの?」

「何をする?」

あれ?

何するんだっけ?

スローライフ系なら前世のWeb小説で、さんざん読んだんだけど……。

あれ?

沢山の女の子を 侍(はべ) らせ、凄い凄い! 言われている内容しか思い出せない。

「とりあえず、のんびりすれば良いんだと思うけど……」

わたしが言うと、ニコニコ顔のヴェロニカお母さんが「なんだったら、刺繍でもやる?」と言ってくれる。

なるほど、刺繍かぁ。

確かに、スローライフっぽい感じはするけど……。

う~ん。

冬ごもり期間に一応、習っているけど、苦手なんだよねぇ。

手元をチクチクするのって……。

あと、ヴェロニカお母さんみたいに上手くないし……。

「考えておく」とだけ答えておいた。

朝ご飯を終え、出たがったケルちゃんを外に出して上げる。

洗濯をしていると、シャーロットちゃんが妖精メイドのウメちゃんに「屋根裏、行く!」とか言っている。

そういえば、そんな話をしていたね。

「シャーロットちゃん、ちょっと待ってて。

これが終わったら、わたしも行くから」

と言うも、ウメちゃんが飛んできて何やら、身振り手振りをする。

え?

連れて行くのは、シャーロットちゃんだけ?

わたしは駄目なの?

えぇ~!

何で!?

え?

シャーロットちゃんは仕方がないけど、他は駄目?

でも、シャーロットちゃんは一人では上まで行けないよ?

すると、 潮(うしお) ちゃんを始めとする近衛兵士妖精ちゃん達が五人ほど飛んできて、身振り手振りで妹ちゃんに椅子に座るよう指示をする。

シャーロットちゃんが「これでいい?」とか言いつつ座ると、近衛兵士妖精ちゃん達がそれを持ち上げた!?

しかも、結構なスピードで上がっていく!?

「ちょちょちょ!」とわたしが驚き、シャーロットちゃんが「きゃ~!」と嬉しそうに悲鳴を上げている間に、可愛い妹ちゃんの姿は屋根裏に消えていった。

こ、こ、怖い!

「ちょっと、ウメちゃん!

わたしが上に行けないのは、まあいいとして。

シャーロットちゃんを上げる時はわたしにさせてよ!」

どうやら、あの連れて行き方はウメちゃんにとっても想定外だったらしく、引きつった顔でコクコクと頷いた。

シャーロットちゃんを下ろす時には、必ず声を掛けるよう厳命した後、さて、何をするか?

イメルダちゃんはゴロゴロルームで刺繍をするとの事だった。

う~ん、シャーロットちゃんがいないのはのんびりする場合、辛い。

もう一人の妹ちゃんであるエリザベスちゃんはお昼寝中らしいし、なにをするか?

中央の部屋(食堂) の椅子に座り考える。

ママの洞窟なら、ママやお兄ちゃん、お姉ちゃんのもふもふな毛に埋もれてのんびりするのが最適解なんだけど、残念ながらここにはいない。

前世ではのんびりってどうしてたっけ?

寝転がる、かな?

ゴロゴロルームなら気持ちが良いだろうけど、現在、ヴェロニカお母さんやイメルダちゃんが刺繍をやっている。

その前でってのは、流石に体裁が気になる。

そんな事を背もたれにもたれつつ考える。

ん?

背後から少し、きしむ音が聞こえる。

そういえば……。

Web小説にのんびり生活に必須とか言う椅子があったな。

なんだっけ?

ゆりかごみたいなの。

えぇ~っと、ロックチェア? だっけ? いや、ロッキングチェア、だったかな? 和名は 揺(ゆ) り椅子だったかな?

なんだか気になって図書館で調べたんだけど、本に載っていたその椅子、面白い形をしてたなぁ。

確か……。

両足から出した白いモクモクを使って、左右の椅子の脚、それぞれをその前と後ろを繋げる。

繋げているのをカーブした形にする。

ちょっと持ち上げないと駄目だよね。

おっと!

後ろに倒れそうになり、慌てて体を起こす。

ふふふ、ゾクッとしたけど、ちょっと面白かった。

バランスを上手く取りつつ、ん~こんな感じかな?

少し、後ろに体重を掛ける。

おぉ~揺れる。

でも、まだバランスが悪い。

もう少し、調整して……。

そんな事を、試行錯誤していると隣から「何をやってるの?」という呆れた声が聞こえてきた。

視線を向けると、イメルダちゃんが眉を寄せながらこちらを見ている。

その後ろには、ヴェロニカお母さんが面白そうに立っていた。

「スローライフに必須な椅子を作ってるの」

「いや、これ、椅子なの?」

「 揺(ゆ) り椅子っていうの?

見た事ない?」

「無いわよ」と言いつつ、イメルダちゃんは視線をヴェロニカお母さんに向ける。

ニコニコ顔のヴェロニカお母さんは「わたくしも無いわね」と言いつつ、近づいてくる。

「なんだか、倒れそうなんだけど、大丈夫なの?」

「その辺りを上手く調整された椅子なの。

本物だと、座るだけでゆったりとした気持ちになるんだけど……。

白いモクモクで再現するのは、ちょっと無理があるかな?

そういえば、刺繍はどうしたの?」

わたしが訊ねると、ヴェロニカお母さんはわたしの様子を興味深げに見つつ、言う。

「少し、休憩する事にしたの。

サリーちゃんも、お茶にしない?」

もう、そんなに時間が過ぎていたんだ。

「そうしようかな?

そろそろ、シャーロットちゃんも屋根裏から戻ってきて貰って……」

わたしが白いモクモクを解除しようとすると、下の方で床を叩く音が聞こえた。

え?

何?

視線を向けると、物作り妖精のおじいちゃん達だった。

なにやら、”しばらくそのままでいろ!”というように身振り手振りをしてくる。

えぇ~