作品タイトル不明
黄金の部屋?
あ、どちらにしても、今日はのんびり過ごそうと思っていたんだ。
忘れていた。
そう、今日はスローライフの日にするのだ!
うん、そうしよう!
玄関前でそう決意をしていると、物作り妖精のおじいちゃん達がテクテクと近寄ってきた。
そして、身振り手振りで言ってくる。
え?
今日は向こうで手伝って欲しい事がある?
建物を作るの?
いやあのね、今日はのんびりするから、お仕事は無しなの。
え?
そういうのは、いいから?
いや、休みなものは休みなの!
わたしがはっきり言うと、物作り妖精のおじいちゃん達は顔を見合わせ、仕方がないというように首を振る。
「おじいちゃん達もたまには休んだら?」
と言って上げるも、”我らにはそういうのは不要!”と主張しつつ、去って行く。
おじいちゃん達、なかなかの仕事の鬼っぷりだ……。
……まあ、おじいちゃん達なら、働き過ぎを心配する必要はないのかな?
そんな事を考えつつ、家の中に入る。
いつも食事とかをする大テーブル、その隣にあるわたしの小さな家に視線を向ける。
物作り妖精のおじいちゃんが作ってくれた専用のテーブルにのせられていて、見てるだけでわくわくしてくる!
家の前にはネタでポストとが設置されたり、柵も作られていたりとだんだん、本当に人が住めるんじゃないかってものになっていた。
ん?
あれ?
屋根裏の部屋にある窓って、まだカーテンを付けていなかったはずだけど、なんか、しっかりと閉じられているように見えるんだけど?
……。
嫌な予感がして、家の後ろを確認する。
家を開くための抓みに、 錠(じょう) の様なものが取り付けられていた。
これ、”やった”んだよね?
やるんじゃないかとは半ば思っていたけど、やっぱり”やった”んだよね?
うぉぉぉい!
胸の中に湧き上がるそれを何とか抑えていると、目の前に何かが飛んできた。
妖精姫ちゃんだった。
なにやら、眠たそうな顔で”おはよ~”という様に手を振っている。
「ちょっと、姫ちゃん!
言ったよね!
小さい家を使っても良いっていったけど、占領しちゃ駄目だって、言ったよね!」
わたしの非難の声に、妖精姫ちゃんは目を丸くした。
そして、何やら焦りながら、身振り手振りで”占領なんかしてない! 起きている時に、使っているだけ!”とか言っている。
「じゃあ、これはなんなの!?
それに、屋根裏も勝手に使って!」
姫ちゃんは慌てた感じに、わたしが指さした抓み部分と、屋根裏を確認する。
そして、”ちょ、ちょっと待ってて!”と身振り手振りをすると、小さな家の玄関前まで飛んで行き、中に入っていく。
小さい家の中を駆ける音が上に登っていくと、屋根裏の部屋でガタガタと音が聞こえた。
そして、音が下りてくる。
玄関の扉が開くと、ぷりぷり怒っている妖精姫ちゃんと、姫ちゃんに首根っこを掴まれた姉姫ちゃんが、引きずられるように出てきた。
長い髪はボサボサで、明らかに寝ぼけた感じの姉姫ちゃんは”ふにゃ?”って言いたげに視線を泳がせている。
服装は、例の白いワンピース姿だ。
そんな姉姫ちゃんを、女の近衛兵士妖精ちゃん達が飛んできて、回収していく。
まったくもう!
小さな家がどうなっているのか確認したいけど、シルク婦人さんが籠と壺を持って待っているので、取りあえず、急いで顔を洗う。
あ、妖精メイドのサクラちゃんが今日も三つ編みにしてくれるの?
ありがとう!
手早く、身支度を整えた後、屋根裏から下りてきたスライムのルルリンとサクラちゃんを肩に乗せ、シルク婦人さんが黙って見てくる視線から逃れるように壺と籠を受け取り、飼育小屋に向かう。
戻ってきてから、それをシルク婦人さんに渡した後、食料庫に向かう。
シルク婦人さんに頼まれたものを持って戻ってくると、龍のジン君を体に巻き付けたイメルダちゃんが、小さな家の様子を確認していた。
誰が開けたのか、家は開かれていた。
「イメルダちゃん、おはよう。
なんか、小さい家の屋根裏部屋で姉姫ちゃんが眠っていたみたいなんだけど」
すると、イメルダちゃんが苦笑しながらこちらを振り返った。
「おはよう。
今、中を確認しているんだけど、屋根裏はすっかり、姉姫ちゃんの部屋になっているわよ」
「えぇ~!」
と言いつつ、シルク婦人さんに持ってきた食材などを渡すと、イメルダちゃんの隣に移動し、中を覗く。
もう「うぁ~!」という声しか出ない。
部屋の中は金ピカになっていた。
壁や家具、ベッドまで黄金一色なのだ。
さらに、布団や近くに置いてあるソファー、その上に置いてある物まで輝いている。
いやいや、これひょっとしなくてもさぁ~
「黄金羊さんの毛で出来てるよね」
「でしょうね」
「よもやと思うけど、家具とかに使っている金、こないだ蟻さんが持ってきたのを使ってなくない?」
「その可能性は大いにあるわ」
「ちょっとぉ~!」
わたしが頭を抱えていると、シュンとした感じの姉姫ちゃんが、近衛兵士妖精ちゃん達に連行されるようにやってきた。
近衛兵士妖精の白雪ちゃんが身振り手振りで”弁明したい事があるらしい”と言ってくる。
姉姫ちゃんが、身振り手振りする。
え?
大木の上は退屈?
ここで、皆といたい?
……いや、弁明になってないんだけど?
え?
金色はわたしが好きな色?
だから、弁明になってないって!
「確かに、金鉱石も黄金羊さんの毛も持て余してはいたけど……」
と言いつつ、改めて屋根裏の部屋を見る。
金ピカのインパクトが強すぎて気づかなかったけど、家具にしても、ベッドにしても、凄く凝ったデザインをしている。
これを数日で作るとか、物作り系の妖精ちゃん、半端ない!
とはいえ、金鉱石にしても黄金羊さんの毛にしても、言わば、国有財産――こんな使い方をして良いものではないんだけどなぁ。
そのことを話すと、イメルダちゃんは大きく頷いた。
「全くその通りね。
だけど、このようにも考えられなくない?
金をそのまま売るより、加工したものの方が高く売れると」
「なるほど、確かに」
ここまで小さくて、精巧に作られているものだ。
結構な値段で売れるかもしれない。
姉姫ちゃんが”やだぁ~! 売らないでぇ~!”と顔にくっ付いてくるのを追っ払いつつ、頷くのだった。
パンを作り、シルク婦人さんが作ってくれた料理をテーブルに並べ、食前の祈りをした後、「頂きます」をする。
因みに、姉姫ちゃんが勝手に使っていた屋根裏部屋だけど、取りあえずはそのままとなった。
あの後やってきたシャーロットちゃんが「キラキラしてて綺麗だし、可愛い!」と嬉しそうにしていたからだ。
それに、元々手付かずだった事もあり、あえて今、かたづける必要もないかって事になったのだ。
……なし崩し的に、姉姫ちゃんの部屋になりそうな予感はしているんだけど。
近衛兵士妖精ちゃん達に連れて行かれた姉姫ちゃんを見ながら、”どうしようもない子でごめんね!”と妖精姫ちゃんは呆れた感じに首を横に振っていた。
だけど、わたしは言いたい。
似たもの姉妹だと!
いや、姉妹と言うより、妖精ちゃん達まるっと、大概、こんな感じだと!