作品タイトル不明
黄金色のって……。
お昼少し過ぎた辺りで、我が家に到着!
と同時に、畑の側にいたイメルダちゃんに見つかった。
そして、当然と言うべきか何というか……。
「わたくし、言ったわよね!
勝手に買ってこないように、言ったわよね!」
と凄い剣幕で怒られてしまった。
ううう……。
あの後、「ひょっとしたら買いたい人がいるかも」と羊君を肉に変えるのを待って貰い、組合長のアーロンさんの元に走り、「羊なんて買ってどうするつもりだ」と呆れた顔のおじいちゃん組合長を引っ張っていき、羊さん夫妻を購入した。
いや、買えないならともかく、買えるし、さらに言えば飼育する場所もあるしね!
これで買わなかったら、絶対、後悔しただろうしね!
購入後、牧場主さんに「え? この 白羊(子) はまだ子供を産んだ事無いから、乳は出ないよ? 大丈夫?」と言われ、冒険者組合に戻る道すがらアーロンさんにも「そもそも、羊の乳は飲むのには適してないぞ」と指摘され、さらに頭を抱えてしまったけど、これは仕方が無い事なの!
勿論、そんな話で優秀な宰相様が納得するはずもなく、無駄遣いをした貴族の末路等の逸話を交えてのお説教を受ける事となった。
その間、わたしが怒られている 元凶(げんきょう) たる羊さん夫妻は、イチャイチャしつつ畑とかを見渡していた。
解せぬ!
あと、籠から飛び出たスライムのルルリンと近衛兵士妖精の潮ちゃんは、さっさと家の方に向かっていった。
恐らく、物作り妖精のおじいちゃんに家具を作って貰うためだろう。
ご主人様が大変な目に遭ってるのに、それでいいの!?
ルルリン!
お説教に白熱するイメルダちゃんが身振り手振りを加え始めた所に、黄金色の羽が飛んできた。
妖精姫ちゃんだった。
姫ちゃんはわたしやイメルダちゃんに身振り手振りをする。
え?
あの羊さんの毛は素晴らしい?
ああ、白い羊さんは牧場主さんも絶賛していたからね。
え?
違う?
羊さん達に視線を向けると、薄茶色い羊さんの周りをいつの間にか現れた妖精ちゃん達が五人ほど、飛び回っていた。
妖精姫ちゃんが合図を出すと、妖精ちゃん達が魔法を行使する。
え?
何をするの?
妖精ちゃん達の小さな手から勢いよく水が吹き出る。
薄茶色い羊さんの毛が濡れ始め――あ、洗っているのかな?
しばらくすると、薄汚れていた羊さんの毛が綺麗に、輝きだした!?
「嘘!?」
イメルダちゃんも声を漏らした。
わたしも驚いた!
薄茶色い羊さんかと思いきや、黄金色の羊さんなのね!
白い毛の羊さんは惚れ直した! って感じにしなだれかかっているし、黄金色の羊さんは、何やら誇らしげにしている。
イメルダちゃんは「黄金の羊に白い毛の羊、金貨二十枚……まあ、そうね……」と納得した感じに頷いている。
……。
わたしはスススっと後ろに下がると、様子を見ていた手芸妖精のおばあちゃんの元まで行く。
そして、「あの金色の毛、どう思う?」とこっそり訊ねた。
手芸妖精のおばあちゃん、苦笑しながら身振り手振りをする。
金色の毛は使いにくい?
白い毛の方がやっぱり良い?
……だよね。
でも、それは口にしてはいけない事だ。
うん、イメルダちゃんが何とか納得してくれているんだから、買ってきてしまったわたしとしては 黙(もく) すが正しいってものだ。
うん、それで良し!
荷車を車庫に入れ、物作り妖精のおじいちゃん達に鰐革を渡した後、羊さん夫妻を飼育小屋に連れて行った。
やっぱりというか何というか、羊さん達を中に入れる事を山羊さんが凄い剣幕で嫌がった。
だけど、金色羊さんがギロリと睨んだ途端、山羊さん、怯えた感じになりわたしの後ろに隠れた。
金色羊さんの方が強いのかな?
「仲良くね」
と山羊さんの背中を撫でて上げたら、山羊さんは渋々な感じに「メェ……」と鳴いてた。
一応、スライムのルルリンに注意していて貰うようにお願いしたし、多分何かあったら、飼育小屋にいるスライムからの報告を教えて貰えるとは思う。
そんな事を考えつつ 中央の部屋(食堂) に戻ると、テーブルの上で何やら書いているイメルダちゃんに声を掛けた。
「ねえ、イメルダちゃん。
農家の人に話を聞く件、明日なら大丈夫なんだって」
「そうなの?
時間は?」
「お昼過ぎぐらいが良いんだって」
「そうなのね」
イメルダちゃんは万年筆を置くと少し考える。
「だったら、朝、町に行き、買い物を終えて、お昼過ぎにお話を聞いた後、帰る。
そんな予定で行きましょう」
「そうだね。
買う物って本以外に何かある?」
「インクが欲しいわ。
それと、手芸妖精さん達が顔料を欲しがっていたわ。
あとは……」
などと言いつつ、イメルダちゃんは立ち上がると 中央の部屋(食堂) の端にある、木版立てまで歩いて行く。
そして、一枚の木版を引っ張り出すと、確認し始める。
「布がもっと沢山欲しいんだって」
「布か……。
綿花があるから作れるのかな?」
わたしの呟きに、イメルダちゃんは苦笑する。
「町で売っているのだから、そちらで買えば良いと思うわ。
サリーさんにしても、妖精ちゃん達にしても、もっと別の事をして貰いたいし」
「まあ、そうだね」
わたしもなんやかんや忙しいし、妖精ちゃん達には普段の仕事に加えて、畑の面倒や家の拡張、そして、衣替え用の服の作成など、お願いしたい事は多い。
町で代替可能な分はそうする方が、無難だね。
因みに、服に関しても最近では町で買う事が無くなった。
手芸妖精のおばあちゃん達が”自分たちが作るから不要!”と言ってくれるから、それに甘えている。
それに、こういっては悪いけど、おばあちゃん達の作る服の方が可愛かったり、おしゃれだったりするので、もう、町の服屋さんには行けなくなっちゃった。
いや、まあ、そんな話は今は良いか。
「あと、そろそろ暑くなるから、涼しくなるような魔道具が必要じゃないかな?」
わたしが言うと、イメルダちゃんが頷く。
「そうね、それも必要だわ。
風が吹く魔道具とかかしら?
……値段は高そうだけど」
「多少、高くても買った方が良いと思う。
特にエリザベスちゃんだけど、暑すぎて体調を崩したら困るし」
「そうね……」
「あ、でも、値段が高いのであれば、冒険者組合の人に買って貰った方が良いかな?
目立っちゃうから」
特に、イメルダちゃんがいる時には、極力、高額な物は買いたくない。
そのことを話すと、イメルダちゃんは納得したって言うように頷いた。
「それに、まだ、そこまで暑くないし、明日は買わなくて良いわね。
どこかの機会に、組合長さんにお願いして貰えるかしら?」
「うん、そうするよ」
イメルダちゃんと明日の件について、いくらか話した後、ゴロゴロルームに入る。
気配に気づいたのか、刺繍をするヴェロニカお母さんが顔を上げ、ニッコリ微笑んでくれた。
エリザベスちゃんは――いない。
ヴェロニカお母さんの隣にある、籠の中かな?
エリザベスちゃんが入り口から出ないようにしている柵を開けて中に入る。
柵をきちんと閉めた後、静かにヴェロニカお母さんに近づき、視線を籠の中に向けると、可愛らしい妹ちゃんは籠の中でスヤスヤしていた。
可愛い!