作品タイトル不明
実はお高い死蔵品!
ベビーベッド代わりの籠だけど、そろそろ狭くなってきたかな?
一応、大きめには作ってくれているけど、もう無い方が良いかな?
そのことを話すと、ヴェロニカお母さんが頷いて見せた。
「実は大分前から籠から出して寝かそうとしていたのよ」
「そうなの?」
そこで、ヴェロニカお母さんは苦笑する。
「でも、その籠が気に入ったみたいで、その中じゃないと寝てくれないのよ」
「なるほど……」
ヴェロニカお母さんと籠を挟む位置に腰を下ろす。
そして、エリザベスちゃんのぷっくりした頬を突っついてみる。
柔らかくて可愛い!
可愛らしい妹ちゃんにほんわかとしていると、ヴェロニカお母さんが面白そうに言う。
「サリーちゃん、また面白いものを買ってきたわね」
「金色羊さんの事?
イメルダちゃんの前では言いたくないけど、ちょっと、失敗しちゃったかも。
手芸妖精のおばあちゃんも、金色の羊毛は使い勝手が悪いって感じだったし」
「ふふふ、この家で言えば、確かにそうね。
でも、 金羊毛(きんようもう) は高額で取引されるから、仮に一頭でも金貨二十枚は破格の金額よ」
「え!?
そうなの!?
でも、毛が金色なだけだよ?」
なんとなく、ヴェロニカお母さんの 黄金(こがね) 色の髪に視線を移した。
金色のシルクのように輝いていて、相変わらず綺麗だ。
わたしの視線に気づいたのか、ヴェロニカお母さんは柔らかく微笑みながら答える。
「美しいのもあるけど、魔道具の材料としても優秀なのよ。
確か、魔方陣を作る時にも重宝するって訊いたわ。
サリーちゃんのお母様なら、差し上げたら喜ぶんじゃないかしら」
「ママに?」
なんか、羊毛を貰って喜ぶ フェンリル(ママ) の絵が余り思い描かないんだけど……。
なんとなく、肉の方を送りなさい! とか言われそう。
あ、でも、何かに使うかもしれないし、いくらか送ってみようかな?
「そういえば、 金羊毛(きんようもう) って売れるのかな?」
わたしが訊ねると、ヴェロニカお母さんは何故か、クスクスと笑う。
「勿論売れるわよ。
相当高値でね。
でも、暖炉の上に置いてある大きな魔石どころじゃなく、目立つわよ」
「……そりゃそうかぁ。
そうすると、結局は意味の無いものを買ってしまった事になるなぁ~」
「手芸妖精さんに敷物とかにして貰ったら?」
「金ピカの?」
ヴェロニカお母さんは「フフ!」と吹き出しそうになりながらも頷く。
「金ピカ、良いじゃない!
国宝級の絨毯になるわよ!」
「なんか嫌!
落ち着かない!」
「ふふふ、そうね。
でも、敷物にしないにしても、将来、必要になるかもしれないから、ある程度、取って置いたら?」
まあ、そうか。
恐らく将来、ママから魔方陣関係の事を教わるだろうから、念のためにとっておこう。
「ヴェロニカお母さんはいる?」
「わたくし?」
「刺繍とかで使わないかなって」
「……そうね」
ヴェロニカお母さんは視線を宙に向け、少し考える。
そして、わたしに微笑みかける。
「売りに出す分には使えないけど、皆の分でひょっとしたら使いたくなるかもしれないから、いくらか貰っておこうかしら」
「うん、後で刈るつもりだから、渡すよ」
「お願いね」
「うん。
あ、あと、さっき生地屋の店長さんに会ったんだけど、特別の 手巾(しゅきん) 、喜んで貰えたって!」
「あら、良かったわ」
とヴェロニカお母さんは嬉しそうにする。
「でもちょっと変な事があって」
「変な事?」
「うん、なんか予想と違ったというか……。
何故か、金髪の女の子が赤い花の 手巾(しゅきん) を、赤髪の女の子が黄色い花の 手巾(しゅきん) を買ったらしいの」
「まあ」
ヴェロニカお母さんは口元に手をやり、楽しそうにする。
「ヴェロニカお母さんには、何故か分かるの?」
わたしの問いに、ヴェロニカお母さんはニッコリ微笑みながら「二人は仲良しさんって事よ」と言った。
「……いや、仲は悪そうだったよ?」
といっても、「そういうものよ」と面白そうに言うだけだ。
いや、意味が分からないんだけど!?
朝、起きた!
隣で寝ていたシャーロットちゃんがわたしの腕を掴みながら「……サリーお姉様、ケルちゃんの尻尾ちゃんが踊ってる!」とかムニャムニャ言っていた。
可愛い!
わたしの腕から、そっと手を外し、ケルちゃんぬいぐるみを持たせて上げる。
そして、ベッドから抜け出ると、服に着替え、部屋の外に出る。
入り口でお座りしながら待っていたケルちゃんのモフモフ温かい毛皮をハグしつつ堪能し、外に出して上げる。
今日は晴天だ。
幸先良い!
今日はイメルダちゃんと町に行く。
前回とは違い、冬の寒さに震える事もないから、順調に往復できそうだ。
いや、逆に暑くて熱中症とかになっちゃうかな。
まだ春なので、そこまで気にする必要は無いと思うけど……。
水は魔法で出せるから良いとして、念のために、塩を多めに持っていこう。
あと、オレンジもいくつか入れておき、休憩中に食べて貰うのも良いかもしれない。
そんな事を考えつつ、家に戻る。
顔を洗っていると、いつものようにスライムのルルリンが上から降ってきた。
そして、わたしの肩に着地し、ビヨンビヨン伸び縮みをしている。
何、ご機嫌だね。
え?
今日はおじいちゃんに棚を作って貰うの?
え?
側にいて、ルルリンの望む通りに作って貰うつもり?
あんまり無理を言っちゃ駄目だよ。
え?
言った事はない?
もう!
自覚しなさい!
などと言いつつ、ルルリンの白色ポヨポヨボディをペチペチ叩いていると、妖精メイドのサクラちゃんともう一人の妖精メイドちゃんがすーっと飛んできた。
そして、わたしの毛を持ち上げる。
え?
サクラちゃん達が編み込んでくれるの?
片方をお願いして、もう片方は自分で行う。
サクラちゃん達、ちっちゃいのに綺麗な三つ編みにしてくれた。
ありがとう!
ルルリンとサクラちゃんを肩に乗せ、飼育小屋に向かう。
相変わらずやかましい、 雄(おす) の赤鶏君を「そろそろ、焼き鳥にしちゃうぞぉ~」と脅しつつ、 雌(めす) の赤鶏さんから卵を頂く。
次に山羊さんの元に向かうと、不満そうな山羊さんが「メェ~! メェ~!」言いながら、太ももに頭を擦ってきた。
「はいはい、羊さんと仲良くね!」
と言いつつ、山羊さんの首を撫でる。
そして、羊さんに視線を向ける。
毛が刈られて、すっきりした羊さん夫妻は、寄り添いつつ、二人の時間を楽しんでいた。
ラブラブだなぁ~
この二頭は。
因みに金色羊さん、昨日、わたしが羊さん夫妻の毛を刈るために準備をしていると、顔を顰め、嫌がっていた。
だけど、「ほらほら、暑いでしょう? さっぱりしようね!」と手で招くと、”仕方が無いなぁ~”という様に「メェ~」と鳴き、近づいてきた。
そして、わたしが白いモクモクハサミでシャキシャキ切っている間も”わたしの毛を手に入れられるのだ、ありがたいだろう?”と言うような 横柄(おうへい) な感じに「メェ~」と視線を寄越してきた。
いや、お高いのか何なのか、知らないけどさぁ~
君の毛は、死蔵が決定しているからね?