軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十九話 意外な結末

戦闘の事後処理を終え、戦士と民兵たちに休息をとらせた後。自軍と敵軍の負傷者を野営地に預けた上で、エドウィンは残存兵力を率いて北へ――戦場からそう遠くない位置にある、タイウェルの拠点の村へ前進した。

タイウェルには既にまともな兵力が残っていないため、大きな戦闘は起こらないはず。おそらく彼は、残りの配下と共に金目のものをまとめて逃走しようとしているか、あるいは既に逃走した後だろう。そう考えながら村に迫ると――事態はエドウィンの予想外のかたちで進展していた。

リンダム王国軍の到来を受けて村から出てきたのは、タイウェルではなく、彼の配下でも家族でもなく、この村に暮らす幾人かの農民たちだった。彼らの話によると、タイウェルは村の住民や逃げ帰った民兵たちの手で捕縛され、彼の家族や配下の生き残りたちは皆殺しにされたという。

「なるほど、つまりは反乱を起こしたわけか」

「反乱……はい、そういうことになるかと思います」

村の住民を代表して話す初老の男は、エドウィンの言葉に頷いてさらに語る。

戦場から散り散りに逃走したタイウェルの軍勢のうち、この村に帰ってきたのはタイウェルの他に三十人ほど。そのうち彼の配下は僅か五人ほどだったという。

帰還したタイウェルは、共に逃げ帰った配下たちや、留守を守っていた数人の配下たちと共に、金目のものをまとめて逃げる準備をし始めた。これまでの高圧的な振る舞いや、午前の堂々とした出陣の様が嘘のようにみすぼらしくなったタイウェルを見て、村の住民たちは考えた。今ならば彼に勝てるのではないかと。

住民たちは話し合い、帰還した民兵たちも話に加わり、農具を持った数十人がタイウェルとその配下たちに襲いかかった。戦いに敗れて疲れ果て、なんとか拠点の村まで逃げ戻ったことで気を抜いていたタイウェルたちは、住民たち曰く「拍子抜けするほどに弱かった」という。

瞬く間に配下の半数ほどが殺され、タイウェルは残る配下と家族と共に館に追い詰められると、扉や窓を塞いで立てこもった。しばらく睨み合いが続いた後、住民と民兵たちが館の屋根に火を放つと、タイウェルたちは慌てて飛び出してきてついには捕縛された。

その後、住民と民兵たちの手でまずは彼の配下たちが殺され、次いで彼の妻と成人している一人息子も、これまでタイウェルと一緒になって領民たちへ理不尽を振りまいていたために恨まれており、命乞いを聞き入れられることもなく殺された。

そしていよいよタイウェルも殺そうとなったところで、リンダム王国軍が接近してくるのが見えたので、村の住民のうち年配の者たちが「タイウェルを打ち破った王様」への説明役を担うためにこうして出てきたのだという。

「私たちはタイウェルを火炙りにでもしようと話していましたが、王様が奴をお求めであれば差し上げます。なのでどうか、私たちのことはご容赦いただきたく……私たちは、タイウェルに力ずくで従わされていただけで……」

「ああ、そこは心配しなくていい。私の敵はタイウェルと、彼に積極的に従属していた配下どもだけだ。奴に無理やり支配されていた諸君に何か害を為すつもりはない」

エドウィンがそう語ると、村の住民たちは顔を見合わせ、安堵の表情を浮かべる。

「タイウェルの身柄はありがたくもらい受けよう。せっかくなら彼と一度話してみたかった……ひとまず今日はこの村に泊まるとしよう。タイウェルの館は焼け落ちたそうなので、誰かの家を宿として貸してくれ」

楽しげに笑いながら言ったエドウィンは、戦士と民兵たちを率いて村に入る。

村の住民や逃げ込んだ民兵たちはやや怯えた様子で、馬上の王を遠巻きに眺めていた。エドウィンは彼らに向けて、先ほど住民の代表者たちに説明したように、民に害を為す意思がないことを穏やかな口調で語りかけながら、説明役を担ってくれている初老の住民の家まで進んだ。

戦士と民兵たちを家の周辺で待機させ、自身は側近と護衛の古参戦士たちを連れて屋内に入ったエドウィンは、早速タイウェルと対面する。

「さて、タイウェル・ドゥムノス殿。こうして間近で会うことができて幸いだ」

あまり上等とは言えない椅子を玉座代わりとしながら、エドウィンは微笑を浮かべて言う。

後ろ手に縛られて床に座らされているタイウェルは、戦場で遠目に見たときとは人相が大きく変わっていた。瞼も頬も唇も腫れ上がり、ちゃんと前が見えているのか、まともに喋れるのか疑問に思ってしまうほどだった。しかし服装は、戦場から馬で逃げていった彼と確かに同じだった。

「どうやら随分と痛めつけたらしいが、彼は捕らえられる際に激しく抵抗を?」

「いえ、火を放たれた館から出てきて私たちに取り囲まれると、家族や配下たちと一緒にあっさり降伏したのですが、その……村の皆も民兵たちも、タイウェルたちへの恨みを晴らそうと、それはそれは激しく暴力を振るったので」

エドウィンが尋ねると、引き続き説明役を担っている初老の住民が少々気まずそうに答える。

話によると、元々横暴な支配者として民から恨まれていたタイウェルは、今回の戦いに備える段になると、リンダム王国の軍勢に勝てるようにとかなり強引に兵を徴集した。特にこの村とその周辺の人里が理不尽な目に遭ったそうで、男はほとんど根こそぎ動員され、抵抗した者が見せしめに殺されるようなことも起こったという。

これまで積もり積もった恨みに加え、そのような度を越した振る舞いへの怒りも合わさった結果が、タイウェルのこの有様。彼と共に降伏した家族や配下たちも、ただ殺されるのではなく、皆から壮絶な暴行を受けてなぶり殺しにされたという。

「なるほど……彼が圧政を敷いていたことは私も聞いている。君たちの気持ちは理解できる。なあタイウェル殿、自分でも当然の報いだと思うだろう?」

エドウィンが話を振ると、タイウェルはびくりと肩を揺らした。顔が腫れすぎて表情はよく分からないが、どうやら怯えているようだった。

「……お、お願いです。命だけは……」

そして、膨れ上がった血まみれの口元から意外にもよく聞き取れる声を発しながら、エドウィンの足元へじりじりと近づき始めた。

エドウィンの後ろに控えていたレオフリックが歩き出て、床に膝をこすりつけるようにしてにじり寄るタイウェルの前に立ちはだかる。そして、彼の頭を蹴り飛ばす。

「ぶぎゃあっ!」

タイウェルは豚の鳴き声のような悲鳴を上げながら、地面に転がる。さらに蹴りを見舞おうとしたレオフリックを、エドウィンは手で制する。

「まあ待て、レオフリック。タイウェル殿は私から離れてくれたのだから、それ以上は不要だ……彼には然るべき場を用意する。人生最後の晴れ舞台を。彼の敗北の証として公式に処刑されるまでは、生きていてもらおう」

「ひ、ひいっ! そんな! どうかお許しください! あなたの家臣になります! いや、召使いにでも犬にでもなります! 何でもしますから、どうかお助けください!」

「ふむ、命乞いというものは、誰が言ってもあまり内容が変わらないものだなぁ。ジェラルド、タイウェル殿をどこか適当な小屋にでも入れておいてくれ。彼の出番はもう少し後、おそらく明日になる」

「承知しました」

傍らに立っていたジェラルドは、王の呼びかけを受けて厳かに頷くと、数人の戦士に命じてタイウェルを運ばせる。

なおも命乞いをするタイウェルの喚き声が離れていった後、エドウィンは再び口を開く。

「ああそれと、戦士や民兵たちには、くれぐれも村の中で乱暴狼藉をはたらかないよう言っておいてくれ。これから我が国の民になる者たちに、併合前から恨まれたくはない」

「では、皆に厳命してきましょう」

生真面目な表情で言い、ジェラルドは家を出ていった。