作品タイトル不明
フィリベール…仲間になる!
「フィリベール様。農作物と養蜂については全てお任せしてしまって大丈夫ですか?」
「えぇ、構いません。それとジェラルディーナ。私の事は今後様付けでなくて構いません。あと、敬語も抜きで。エリオット殿下に話しているように話してください。」
フィリベール様と農作物、養蜂について話し合いを重ねて二週間。
途中まで話に参加していたエリーやラルフお兄様は、ついていけないと匙を投げ、二人でずっと話を詰めてきた。
元々、トンネルを作る時にフィリベール様から色々学ばせて欲しいと言われており、他の領地に口外しないのであればという契約書の基、トンネル工事を任せていたのだが、まさか領主の座を弟のベルリック様に明け渡すとは思ってもいなかった。
しかもここ二週間は、私の下で働きたいと何度もお願いをされている。
一応、第二王子殿下の側近なのだからと断っているんだけど、「貴方の元の方が面白そうだ。」と言われた。
全く引く気のないフィリベール様に、「エリーに聞いて良いと言ったら……」と無理やりエリーに押し付けたのだが……。
どうやらエリーを説得してきたらしい。
「フィリベール様がそこまで仰ると言うことは、エリーが折れたのね……。はぁ……わかったわ! フィリベール様……じゃなくて、フィリベール。これからよろしくね。」
手を差し出すと、フィリベールは私の手を握って固い握手を交わす。
なんだかどんどん大事になってきたけど、本当にいいのだろうか。
って、今更気にしても仕方がないのだけど……。
「とりあえず今年は南の領地でサトウキビと小麦をメインで作って欲しいわ。それとサツマイモと、あとキュウリと南瓜とか作れたらいいのだけど。花はナタネでお願い。ナタネからはナタネ油も取れるから、とてもいいのよね。」
南の領地で作れそうな野菜をピックアップしていく。
キュウリは夏バテにもいいし、あまり持ちがいいものではないけど、領民達が食べたりする分にはちょうどいいだろう。
「分かりました。北の領地はどうしますか。」
北と行ってもすごい寒いという訳でもないから、なんでも作れそうだけど……。
「そうね。麦と枝豆は絶対ね。あとは小松菜かほうれん草なんてどうかしら。それと玉ねぎにじゃが芋とか。出来れば人参も欲しいわね。花はナタネで統一で!」
「いいですね。そちらで進めてみます。一年様子を見て作物を決めていきましょう。それで……次は何をしようと考えているんですか?」
私が新しく持っている計画書を指さして聞いてくるフィリベール。
この計画書はまだ誰にも話していない。
ホワイトベリル侯爵にもだ。
「これはね……ふふふ。まだ秘密よ! 時が来たら必ず話すわ!!」
以前、ホワイトベリル公爵から鉄鉱石以外にも捨ててしまっているものがあると聞いたことがある。
鉄鉱石と似たような硬さで、燃えやすいものと言っていた。
私はそこに当たりをつけたのだ。
もしこれが当たっていれば……。
機関車も夢じゃなくなる!
「そのためにも一度ホワイトベリルの鉱山に行きたいの。フィリベールもついてきてちょうだい。」
ついてきてと言うだけで犬のしっぽのようなものが見えるのだけど、私は敢えて見えないふりをした。
***
「なに!? 俺の側近を辞めるだと!? お前それでどうするつもりだ……。」
元々トンネル事業に関わった時から、少し考えていたことがある。
それは、ジェラルディーナの下で働くのは楽しいということだ。
エリオット殿下の下で働くようになったのは、ただ単に父上が宰相だったということと、小さい頃からの幼なじみという理由だけだった。
もちろん、兄のように慕うラルフがいたこともあるのだが。
昔から人の補佐をするのは嫌いではないし、特に不満があった訳では無い。
ただ、なにか物足りなかったのだ。
言われた仕事をただただこなす。
しかもエリオット殿下は急に一年帰ってこない……なのに仕事だけ回ってくる。
正直少し嫌気を指していた所に、ジェラルディーナの領地改革の話を聞いた。
しかも出てくるのは知らない言葉ばかり。
トンネル、土壌改良に、チョコレート。
そしてコーヒー。
色々考えて結果を出していくジェラルディーナを見て、この人の下で働けば“つまらない”なんて思うことはなくなるのではないかと思った。
決して、エリオットの下で働くのがつまらない訳では無いが……。
「私は、ジェラルディーナの下で働きたいのです。」
「はぁ!? ちょ、おま、もしかしてジェラルディーナのことが好きなのか!?」
「好き……!? えぇ。これは恋かもしれませんね。(ジェラルディーナの作るものは好きですし……。)」
私の言葉に、一度声を詰まらせるエリオット殿下。
そんなに変なことを言っただろうか。
今回の件だって、連作障害をさらに応用して行くというのだ。
恐らくそれらは簡単に教えられない内容でもあるだろう。
なのに私が違う領地の貴族子息だし、エリオット殿下の側近では、ジェラルディーナも任せてくれないと思ったのだ。
それに他にもなにやら考えているようで、父上とコソコソ話をしていたのを聞いている。
ここまで来たらジェラルディーナがどれだけの事を成し遂げてくれるのか。
それを近くで見届けたいと思ってしまった。
家族として……ではなく、仕事の中でという意味だが。
「そ、そうか……わかった。今日からお前もライバルだな……正々堂々と戦おうじゃないか。側近の件は、私から父上に伝えておこう。今は王子の仕事をサミュエルがしてくれているし、ラルフがいれば何とかなる。」
王子の仕事を弟にさせてる時点で、最近のエリオット殿下は何をしているのか不思議だけど。
あえてそこは聞かないでおこう。
それにライバルってことは、エリオット殿下もジェラルディーナの下で働きたいということなのだろうか。
まぁ王族だから簡単には人の下で働けないもんな。
私はてっきりジェラルディーナのことを慕っていると思っていたんだが、見当違いだったのかもしれない。
「分かりました、正々堂々と戦いましょう。(どちらがジェラルディーナの側近として相応しいか……)」
エリオット殿下に手を差し出すと、固い握手を交わした。