作品タイトル不明
ホワイトベリル領へ。
今日から数日間ホワイトベリル領に行くことになっている私は、馬車に荷物を詰め込んでいた。
今回はそんな大人数で行くつもりはなく、エルダとフィリベールを連れていく予定だ。
昨日まで、いい大人が「俺も行く」と騒いでいたが……。
何とか説得した。
ずっと「どうしてフィリベールを連れていくんだ? フィリベールのことが好きなのか!?」って騒いでいたけど、何故そこでフィリベールが出てくるのか……。
もしかしてフィリベールが私を選んだことに嫉妬しているということなのだろうか。
「側近を取りやがって!!!」的な。
もしそれなら何故フィリベールに直接言わなかったのか、謎すぎる。
ある程度馬車に詰め込み終わると、こちらに向かって走ってくる子供たちを、手を広げて迎え入れた。
「カイくーん! アルくーん!! スゥちゃーん!!」
「「ままぁ!! またでかけるのぉ?」」
「まんまっ! で?」
ドスンドスンと勢いよくしがみついてくる三人を抱きとめる。
「いつもごめんね。寂しい思いをさせて……。すぐ帰ってくるから、お祖母様と一緒に待っていてね?」
「うん。ばぁばとまってるから、おしごとがんばってね。」
「がんばって。」
「て!!」
こうやって見ると、双子でも性格が全然違う。
カイトスの方が話すし、人見知りもしないし、外で遊んでいる方が好きで活発な男の子という感じだ。
逆に、アルナイルは外で遊ぶのも嫌いじゃないが、どちらかというと本をゆっくり読んでいたいタイプで、人見知りが激しかったりする。
そして、お祖母様大好きっこだ。
ステラは好奇心旺盛で、なんでも口に入れようとしたり、興味がある物に近づいて行こうとしてしまう。
前世でも子供を育ててきたけど、同じように育てても全く違うように育つんだから不思議だ。
それがまた子育ての楽しい所なのだけど。
「ありがとう! お土産買ってくるからね! 行ってきます。」
三人の頭を撫でると馬車に乗る。
お母様と、何故かお父様が子供たちの後ろに立って手を振っている。
私がホワイトベリルに行っている間、無理やり休みをもぎ取ってきたそうだ。
皆に手を振ると、馬車がゆっくり出発した。
ホワイトベリルまでの道は馬車で四日ほどかかる。
間に小さい領地がいくつかあって、どこもスフェレライト領の南領地に近い状態だと、フィリベールが教えてくれた。
「フィリベール。スフェレライト領からホワイトベリルの間にある領地の人たちは、恐らく……この間の国王陛下との謁見に来ていた領地よね。」
「えぇ、そうですね。」
馬車で通っていて思っていたが、やはりこの間の謁見の時は、南領と同じような状態で急いで改善していかなければならない領地が集まっていたようだ。
あとは、南領地とは違うけど何かしら問題がある領地……というところだろう。
「そう。できればフィリベールからホワイトベリルまでの間にある領地と契約を結びたいのよ。それがこれからの計画にとても大事なことになるわ。契約の内容はこれから考えるけど、こちらが出せるのは土壌改良の仕方と、流通経路の確保といったところかしら。」
スフェレライト領からホワイトベリル領までの道に機関車が通るようになれば、流通経路が確保できるようになる。
それに土壌改良法を人を派遣して伝えることができれば、収穫率アップも見えてくるだろう。
「ただね……この間私が伝えた成果を笑った人や馬鹿にした人たちには絶対渡したくない情報なの。どうかしら……この間の領地にそんな領主がいたりする?」
私が覚えてるのは、ブヒブヒうるさかったマラカイト子爵とその仲間たちといったところだ。
マラカイト子爵家と繋がりがあるのは……恐らくスフェレライト領とフローライト領の間にある北側の領地ではないかと思うのだけど。
「そうですね……私が覚えている限りはなかったと思います。それにこの辺りは元々土地が痩せている関係で、お互いの領地で助け合っているんですよ。辛い時を知っているからこそ、笑ったりしないですし、できることは何だってやるというような精神的に強い方々が多いです。」
見た感じ、男爵領や子爵領、大きくても伯爵領くらいの領地の大きさしかないし、皆が皆、家のように王宮で働いているわけではないから収入に差があったりもするのだろう。
前世で食べるものがない時に周りの人と助け合ったのと似ているかもしれない。
「そう。精神的にも強くて、周りの領地と助け合えるのであれば、きっと領民のことを大切に考えられるいい領主たちばかりだと思うわ。フィリベール、この辺の領地の領主たちを一度スフェレライト領に招待したいのだけど、可能かしら? できれば内密にね。オディロンたちに見つかると厄介だから。」
「承知いたしました。ホワイトベリルから戻り次第、話を進めましょう。その前にまずはホワイトベリル領で商談ですね。今回は父上も帰ってきていると聞いておりますから。」
フィリベールが指を指す方を見ると、ホワイトベリル領が見えてきていた。
「そうね。気を引き締めていきましょう。なんて言ったって相手はあの宰相なのだから!」