軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

多毛作法と養蜂場!?

「今年から多毛作法を取り入れようと思うの!」

急にディーナに呼び出されたと思ったら、知らないワードが出てきて皆固まった。

「「「「多毛作法!?」」」」

パウルも何も聞かされていないようで、ディーナの言葉に首を傾げている。

「そうよ! 多毛作法。今まで土壌改良をしてきたでしょ? この一年で土地の状態はとてもよくなったわ。そこで次の段階よ。今までは収穫した後、何もせず放置している時間が多かったと思うんだけど、その“何もせず放置する時間”をなくすのよ。」

ディーナが前もって準備していたであろう資料を皆に配っていく。

あとで領民にも説明しなければならないからか、絵を付けてわかりやすくなるようにまとめてあった。

資料をまとめたり、新しいことを考えたり、一体どこからこんな知識が次々と生まれるのか。

正直気になる所ではあるが……本人が言うまでは敢えて聞かないでおこうと心に決めている。

もし本人が話す気がなくても、その時はその時だ。

今更ディーナが自分の知識を悪用するつもりがないことくらいわかっているからな。

資料を軽く読みながら、フィリベールが気になったところを質問していく。

「以前、土に栄養がないから作物が育たない。同じ作物を繰り返し植えてはいけないと仰っていたと思うのですが……」

ディーナがフィリベールに「よくぞ聞いてくれました!」とでもいうような満面の笑みを浮かべる。

「そうなの! ただ、今回はそこに目を付けたわ! 資料を見て頂戴。まず畑を大きく三つに分けます。一つ目はメイン畑。二つ目はサブ野菜。三つ目は花畑に分けるようにするのよ!」

そこからは多毛作に対する話を色々と聞いた。

要するに、それぞれの畑を順番に回しながら連作障害が起きないようにするというのが、この取り組みのようだ。

そうすることで一年通して収穫できないことがないようにするということなのだろう。

「例えば北側の領地。今は大豆を育て終わると、小麦を植えるようになっているわね。ただ、一年に一回ずつの収穫がやっとだと思うのよ。それを一年で二回ずつ収穫できるように変えるわ。」

確かに他の領地でも、いいとこ一年に一回の収穫がやっとだ。

それが一年に二回ずつ収穫できるように変わるとなると、収穫率は大幅に増えるし、何より領民たちの収入源が増える。

そうすれば今のようなぎりぎりの生活にはならない……ということだろう。

フィリベールはディーナの話を食い入るように聞いている。

昔から研究などが好きなフィリベールにとっては、今回の話が興味深いのだと思う。

「なるほど。それで花畑というのは?」

確かに二つの作物を交互に植えるのは分かったが、花畑だけは謎だった。

「やっぱり土も人と一緒で、お休みがないと働けなくなってしまうのよ。その時にお花を植えようと思っているの。それでお花だけじゃもったいないから、養蜂場を始めようと思っているわ!」

待て待て待て……畑の話をしていたと思ったら、次は蜂だと!?

しかも蜂なんて害虫指定されていて、刺されたりしたら死に至るケースもあるんだぞ。

「ようほうじょうですか? それは一体何なのでしょう。」

フィリベールはディーナの言葉一つ一つに質問していく。

そんなに興味があるなら二人だけで話してほしいものだし、その方が話が進むんじゃないか。

まぁ、今後の領地経営のためでもあるから、俺も聞いていかなきゃいけないのは分かるんだが……。

「フィリベール様! よくぞ聞いてくれました。養蜂場とはその名の通り蜂を育てるところですわ! 蜂は花から蜜を取ってくるんですが、蜂の巣には蜂蜜が多く含まれているんです。そしてその蜂蜜がとても甘くて身体にとてもいいのです!」

身体にとてもいいって。

食べたこともないのに、どうしてそんなことを知っているんだよ!

思わず突っ込んでしまいそうになったが、一度心を落ち着かせてから二人の会話を聞く。

「なるほど……それは実に興味深いですね。是非ともその多毛作法と養蜂場については私にお任せいただけないでしょうか。これだけわかりやすい資料がありますし、私でもできると思うのですが。」

いや、お前はこの領地と関係ないだろう!

なぜお前が出しゃばっていくんだ!

しかもディーナはディーナで、「フィリベール様ならそう言ってくれると思っていました!」みたいな目で見ているし……。

ラルフに関しては関係ないと思っているのか、欠伸をしている始末だ。

俺はツッコミたい気持ちを必死に落ち着かせてから、ディーナとフィリベールに声をかけた。

「ちょっと待て。フィリベール。お前はそもそもこの地と関係がないだろう? 色々首を突っ込んでいるが、構わないのか? それにディーナもディーナだ。仮にもフィリベールは別領地の領主になる男だぞ? ホイホイと秘密を教えていいのか?」

「「あぁ、それなら問題ないわ!/ございません!」」

そう言うと否や、二人は契約書を出してくる。

「トンネル工事をする際に、すでにジェラルディーナと契約を結んでいるんですよ。それに領主の地位はすでに父上に伝えてベルリックに譲ることになっておりますので。ベルリックはフレデリクと仲がいいので、フローライト領と契約を結んでホワイトベリル領でも稲の栽培を始めましたし、特に問題ないでしょう。」

いつの間に、裏でそんなに話が進んでいたなんて全然知らなかったが……。

そもそもスフェレライト領のためだけに領主の地位を弟に渡すとは、昔から領主に興味がないことは知っていたがここまでとは……。

「そうなの! だから大丈夫よ。それに、スフェレライト領の領主代行としてホワイトベリル領とも契約を結ぶ予定なの。ホワイトベリル領は鉄鉱石が取れる鉱山があるらしくてね。何に使っていいか迷っていたと言っていたから。その鉱山の所有権をもらう代わりに、新しいことを始める時は共同開発させてほしいと言われているのよ。」

まさか、宰相までもがそこまで考えて動いていたなんて……。

この間、父上と謁見が終わったあと遅くまで話していたと思ったら、そんなことまで話していたのか。

確かに鉄鉱石は固い石というだけで、そこまで使い道がなかったしな。

使い道があると知れば、宰相のことだ、話に乗り気になるとは思っていたが……。

「そ、そうか……」

「そうなの!」「そうです!」

二人とも今までに見たことのないような笑顔でこちらを向いた。

「あぁ、心から楽しんでいるんだろうな」と感じた俺は、あとのことを二人に任せようと思い、二人の話を見守るだけにした。