作品タイトル不明
兄弟の密談
庶民的な酒場の、半個室で兄弟は落ち合った。弟は実家住まいで、兄は恋人と同棲中だ。
手早く注文を済ませて、乾杯をする。
「兄貴、騎士爵おめでとう」
「いや、まだ内定だ。今回の祭典を無事に終えることができたら、という話だからな」
そう訂正しながらも、期待に口元が緩む。
弟はジョッキを置いて、紙の束を鞄から出した。
「姉貴に嘘告した奴らが判明した。こいつら六人だ」
調査資料を兄に手渡す。
「王都から少し離れた町の剣術場で、子どもの頃に出会った連中らしい。このうちの二人は武芸大会に参加できたが、早々に敗退。他の四人は応援のために来ていた。
つまり、俺たちが試合をしている間、暇を持て余して悪さをしていたってことだ」
弟は軽蔑するように言い、豆を口に運んだ。
「主犯の男は、町の剣術場で才能があると言われて、自信を持ったと。
実家は裕福な地主で、母親は美人で有名な没落寸前の貴族か。本当に才能があったのか、おべっかかわからんな」
兄は忌々しげに、骨付き肉を噛み千切った。
「普通は武芸大会で勝ち進めない時点で、実力を知るんだけどね。
そこで諦めるか、死に物狂いで励むか――。子ども部門では通用しても、少年部門には出場もできなくなってる。それなのに自分は強いって自信があるのは、なんでだと思う?」
「……お前にもそのうちわかるだろうが、言葉が通じない奴はいる。相手の力量を測れない馬鹿は、予想外の行動をすることがあるから要注意だぞ」
「それ……三ページ目の姉貴への勘違い発言、気持ち悪くてムカムカするよ」
「……俺はあの魔術師が義弟になってくれたら、楽しそうだと思っていたんだ。こんな馬鹿のために、男性不信になったのか」
兄は調査資料を丸めてテーブルを叩いた。
「魔術師って、姉貴に告白したのに気付いてもらえなかった人? 嘘告を調べるきっかけになった功労者だね」
弟がジョッキを軽く上げて、感謝を示した。
「恋人が、お袋と同居するなら結婚しないと言うんだ。仲良くやっていけそうにないって」
兄は二杯目に口をつけた。
「そうなのか」
「あいつの自己評価が低いのは、お袋のせいだろうって。もし娘が生まれたら、子育てに口を挟ませるなってさ」
「……へえ」
弟は肘をつき、手のひらに顎を載せた。
「それから、武芸大会の手伝いもさせたくないって。子どもなのに働かせすぎで、見ていて可哀想だったとよ」
「うちって、もしかして変わってる?」
「武芸への拘りが異常らしいぞ」
二人は目を合わせた。どちらからともなく視線を外し、同時にため息を吐いた。
「俺、帰ったら兄貴と何を話したか訊かれるんだけど。めんどくせー」
弟はテーブルに突っ伏した。
「俺の分までお袋の関心が行っちゃって、悪いな」
「悪いと思ってるなら、奢ってよ」
弟は突っ伏したまま、顔だけ上げる。
「調子のいい奴め」
兄は、その額を小突いた。