作品タイトル不明
ひどい女
俺は昔の過ちを詫びて、すっきりとした気分で眠りにつくことができた。
あの赤いバラを見ながら、彼女も幸せな気分に浸っているだろうか。そんなことを考えながら……。
朝食を取るために食堂に行くと、なんだか視線を感じる。
寮を出ようとして、玄関ホールにバラが飾ってあるのに気がついた。昨日俺が贈ったバラも、こんなふうに赤くきれいに咲いていたな。
今日は祭典を妨害されそうな場所を確認する。
大通りから路地に入り、置かれている荷物があったら持ち主を特定したり、撤去したりする。
襲撃されそうなポイントは、念入りにチェックだ。
なんとも泥臭い仕事だ。手やズボンの裾を汚しながら、割り当てられた区画を確認していく。
「あのさ。君、昨日、有給休暇を取っただろ。もしかして、花束を買いに行ったのかい?」
同じチームの、田舎者が木箱を持ち上げながら尋ねてきた。風雨にさらされた箱は、黒ずんで苔のような汚れがついている。
「なんだよ。お前には関係ないだろ」
少し咎められている気がして、返事が尖ってしまう。
「……うん。関係ない」
人の良さそうな表情を消して、田舎者が顔を背けた。小さく「知らない方が幸せか」と呟いているのが聞こえた。
「だから言ったろ。親切にするだけ無駄だって」
別の男が、そいつを慰めていた。ふん。田舎者同士で仲良くしていればいいさ。
その日は仕事が終わったらすぐに風呂に入り、寮の入り口近くでうろつくことにした。
彼女が、俺に会いに来るかもしれない――そう思って。
だが、彼女は来なかった。次の日も、その次の日も。
普通、お礼の一言くらいするものじゃないか?
いつしかバラは枯れ、玄関ホールに次の花が飾られることはなかった。
俺は……気のせいかもしれないが孤立していた。
賑やかに話しているところに行くと、会話が中断する。飲み会に誘われないこともあった。
何かマズいことをしただろうか? 心当たりはないが。
嫉妬されたか何かで、くだらないイジメを受けているのかもしれない。
朝礼で「地方から派遣された者は文官棟に立ち入らないように」と通達されたため、彼女に会いに行くことができない。運良く見かけても、同僚と一緒にいて声を掛けにくい。
彼女の父親や兄の目に留まるような活躍もできなかった。
俺はこのまま田舎の勤務地に戻るしかないのか?
苛立ち、焦り、孤独――それらを娼館に行って紛らわせた。
何もかも、上手くいかない。俺は優秀なのに、チャンスに恵まれないだけだ。
子どもの頃は子分と一緒にいろいろなことをやれたのに。あいつらも軍に入って上を目指せばいいものを、家業を継ぐからって臆病者どもめ。
ひとしきり吐き出し、俺は煙草に火を付けた。
娼婦に強請られて一本やる。美味そうに煙草をふかしながら、俺の話を聞いてくれた。
「ふ~ん、お客さん、大変だネ。その女の子、素直になれないだけかもヨ」