作品タイトル不明
65.袖振りあって酒盛り
現場はイェーメール。
場所は鍛冶通り。イェーメールの南西にあたる、鍛冶屋が多い場所。自然とドワーフの数が多くなる。
そこで、2人のドワーフが感動の再会となる。
「久しぶりだなぁ! レラント」
「お久しぶりです親方!」
こんなところで合うなんて、とニコニコしているところへセツナ登場。with柚子。
「あれ、親方にレラントさん。なんでイェーメールに?」
「ちょっと野暮用でなぁ」
「私は皮の買い付けがてら良い刃物を探しに」
と、(ひげがもさってて分からんが)笑った。
「ちょうどよかった。お土産のお酒、ここで渡してしまってもいいですか?」
鍛冶場が併設された店舗が並んでいる。店舗部分の間口は小さく、奥に長く作業場があるのがイェーメールの一般的な店舗の構え方だそうだ。
トンテンカン、本格的にするような店から、金属加工の店、たくさんの店が並んでいるが、その店頭にいるのはほとんどが 小人族(ドワーフ) だった。
セツナの酒、と言うワードに四方八方から視線が集まる。
親方たちの話を聞かずに、すっと取り出したるは一升瓶。
「せっちゃん!! ニホン酒ではないかっ! 私にも飲ませるのじゃっ!」
「おおお! ローレンガの酒じゃないかっ! あそこは遠いからなかなか商品がこっちまでこないんだよ」
「レラントさんの分もありますよ」
ひげに隠れててもわかる笑顔。
「せっちゃ~ん、我慢出来ないのじゃ。今、今飲みたい……」
「ええ……クランハウス帰ってからにしようよ」
「やだやだ、せっちゃん、今飲みたい!!」
「おちょこがないって……」
子ども(ドワーフですので大人)にせがまれてる親みたいなことになっている。
すると、親方がそっと鞄から銀色のコップを出す。
「ほらよ」
「ほらよじゃないんですよ親方!! 甘やかしたら……」
「やったーっ!!! はよ! はよ注ぐのじゃ!!」
もう歯止めが効かない!
それは甘露。至高の盃。
うっとりとした表情で飲み干した柚子は、言い放つ。
「うまい! おかわりっ!!」
「おいセツナ、俺にもちょっとくれ」
「親方!? お行儀悪いですよ!?」
「セツナさん……私にも」
「レラントさんまで!?」
そして、とうとう第三者の声。
「ほら、このテーブル貸してやるよ。その代わり俺にも一杯寄越せ!」
我慢できなくなった 小人族(ドワーフ) 一号。テーブルと椅子を店先に出して俺たちに勧める。
「いや――」
「おお、ありがてえ! ほら、座った座った。セツナ、その瓶寄越せ」
「おい、抜け駆けはずるいだろ!」
「あの――」
「せっちゃん、ポーチに入ってる酒もっと寄越すのじゃ」
「セツナさんごちそう様です」
あっという間に店先にテーブルが次々現れ、ジョッキを持った 小人族(ドワーフ) であふれかえる。
「あーあ……」
計画通り。通りなんだけど、ちょっと多過ぎやしないか?
「せっちゃんつまみが欲しい!」
俺はぶりの照り焼きとキンキの煮付け、クラーケンのバター醤油を出す。あとは、カツサンドか。
「これじゃあ足りないよ。一瞬じゃん」
俺がこぼすと、すぐさま後ろの 小人族(ドワーフ) が怒鳴る。
「おい! 食べもんもってこーい!!」
その言葉を聞くや否や、食べ物とともにジョッキを持ったドワーフが増える。
「ああああ……酒足りないよさすがに」
「酒足りないぞ!」
酒は増えるが 小人族(ドワーフ) も増える。
「ニホン酒は一杯までな! ジョッキになみなみ注ぐのはなしだ!」
なんかお約束も飛び交ってる。にしても、足りないよ……。
俺は泣きながら、クランハウスに戻ってアイテムポーチに残りの酒を詰めた。
アランブレからイェーメールまではダッシュしましたよ!!!
「柚子さん……俺ちょっと用事があって来たんだよ」
「あ、そういえばそうだったのじゃ~」
すっかりNPC 小人族(ドワーフ) に溶け込んでる柚子だ。
イェーイとか言いながら乾杯してる。
「用事? 鍛冶通りにか?」
「実はアクセサリーを作ってもらいたくてきたんですよ」
「アクセサリーか! どんなやつだ」
周りの酒臭い 小人族(ドワーフ) たちもなんだなんだと俺の話に聞き耳を立てている。
「宝珠が手に入ったのでアクセサリーにしてもらいたくて」
「おお、なんなら俺んところでやってやるぞ!」
隣のテーブルの赤毛のひげが言う。俺のところでもいいぞと、いくつも声が上がるが、セツナが宝珠の名前を口にした途端ピタリと止んだ。
「十二神かぁ。それは、力量不足だ。すまんなセツナ」
「こんな旨い酒を振る舞ってくれて、お礼がしたかったんだが……俺もまだ十二神には手を出せるほどじゃない」
「一応紹介状はもらってきたんですけど、なんでも仲違いしてるとかで……手土産にせめてお酒をと思ったんですけど」
そこら中に散らばる空き瓶たち。みんなが気まずそうに目を反らす。
「誰に頼むつもりだったんだ」
先ほど自分がと声を上げた 小人族(ドワーフ) に尋ねられて、俺は紹介状を取り出す。
「ルンゴさんです」
ざっとみんなの視線が1つの方向に流れる。
これまた立派なひげもじゃの男がいた。
「まあ、十二神と聞いてから俺じゃないかとは思ってたが……」
ルンゴは目を細める。
「俺と仲違いってえと、ファマルソアンのクソヤロウか?」
うわぁーまだクソヤロウなんだ……全然わだかまり溶けてません。
「クソヤロウさんですね」
「あの野郎じゃなけりゃ、こんだけ楽しい酒の場を提供してくれたお礼くらいしてやりたかったんだがなぁ」
え、紹介状、邪魔になったやつ!?
俺ちゃん涙目だよそれぇええ!!
と思っていたら、隣に座っていた親方がこっそり俺の太ももを叩く。いたっ。え。何?
「おい、ルンゴ、そんなつれないことを言うなよ」
「お前、1人1杯のニホン酒、2杯飲んでたろ」
「クラーケンの醤油バター、バクバク食ってたよな」
「酒の席の頼み事は聞き入れてやるもんだぜ」
「しかも宝珠のアクセサリーなんて、なかなか出来る仕事じゃねえ」
「お前の腕の見せ所がやっときたんじゃねえか」
なんか、お酒仲間さんたちからの援護射撃があったけえ!!!
さすがのルンゴもこれにはたじたじで、あと一押しを感じた俺は彼に向かってガバッと腰を折る。
「あの人、伝手の先ほとんどと喧嘩しちゃってるみたいで、頼める方が全然いないんです! お金ならいくらでもって言われてます! そのお金でローレンガからお酒を買って来てもいいですし。 作ってもらえませんか!?」
お金ならの下りでちょっと顔が険しくなったが、その後の酒に換算でにやりと笑う。
「ふうん……なら、あいつを呼んで来てもらおうか?」
あれ……一筋縄じゃいかない……。