軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

428.さわり屋へ

今日も問題なくお仕事を終わらせてログインですよっっ!! 早くあがれたのでゲーム内は夕方前。

目を開けて天井を眺める。そして横を向くと……なんだよなんの罰ゲームだよおお!!

張り出した二階の窓辺に座り、着流し姿に団扇で己を扇ぎながら外を眺めるヴァージルとか、イケメンの押しつけ反対!! いや、親衛隊の皆様にご満足いただくべきか? 安定供給しないと暴動が起きそうで怖い。

と、俺の視線に気づいたのか、ヴァージルが振り返って笑った。

いい男だな、おい。

キャラメイクって大切だね……。

「おはようセツナ」

「おはよー、着物買ったのか」

「面白くて色々見て回っていたら買うはめになった」

まあ、ヴァージル二日間近く一人で遊んでいたんだもんなあ。

「領主の屋敷の敷地が猫だらけなの知ってたか?」

「ああ、にゃんにゃんパラダイスな」

「にゃん?」

最近俺も行ってないなあ。

「ヴァージル猫好きなんだねって、そいやシュヴァルツ……」

「ああ、とても可愛かったよ」

ソーダ:

おいwww ヴァージルちゃんと飼っておけよwww

ローレンガの猫屋敷に出没して猫と戯れてるって話が回ってきたぞwww

セツナ:

今ログインして話を聞いてるところだよ。

こいつ、俺が寝てる間に着物買ってうろついてるっぽいぞ。

アリンさんたち来るのかなあ。人でごった返さないうちにカクさんちに触媒をお願いしに行こうと思う。

「よし、出掛けるぞヴァージル!」

「それならこれを、セツナの分を買っておいた」

と、着物を渡されました。

きゃーっと少し遠くで悲鳴が上がっている。

もう到着してるのか。

パーティーを作り直したので会話はパーティーチャットにする。

『今日は人も多いし、ささっと触媒を作りに行きたいかなと思ってる。ヴァージル、湧き水亭行った?』

『ああ、美味しかったよ。通い詰めたくなるね』

団扇を片手に歩く姿はまるで絵のようだった。

「渡し船に乗るよ~」

カクさんちへの最短航路を行くことにする。

渡し船は基本的に行き先を言わないと動かないので多少まくことができるだろう。

地図を出してここに行きたいんだと言えば、任せてくれと、乗船を促された。

まさか、前の船を追ってくれの方式で来るとも思えない。きっとないと願いたい。

『今更だが、俺が一緒に行ってもいいのか?』

『今更だろ。それに、秤を知ってるし、大丈夫だよ』

ヴァージルはべらべら喋るタイプじゃないって知ってるからね。

一番近い船着き場に降ろしてもらうと早足で進む。

「こんにちは」

店内はごちゃごちゃとしている。奥の方から答える声があがった。さらに、追いかけて男の子の声がする。

「はーい、あ、セツナさん。こんにちはっはっはああ……ヴァッえっと、いりゃっさいませっ」

お久しぶりの管ブラウンさんが挨拶途中で大慌てしてる。

「カクさんはご在宅?」

「あ、はい。師匠もおりますよ」

「 細剣(レイピア) のをお願いしたくて」

一応錬金術師だということは内緒なので、言葉を濁して伝えると、彼は何度も頷いた。

「こちらへどうぞ」

右手と右足同時に出てるよ。ヴァージルファンか?

カクさんはいつも通りの定位置に座っていた。

「こんにちは~」

「おうよ、なんだ、べっぴんさんを連れてるな」

「友人のヴァージルです。俺に、えーっと、秤を教えてくれた人」

カクさんの眉がぴんと跳ね上がる。

「そうか」

とだけ。とりあえず隠さねばならぬということを知っていると教えておくのだ。

「それで、聖属性の触媒を増やしておきたいのでお願いします」

「聖属性が必要とは、キナくせえな……第六都市の仲間がよ、近々こっちに引っ越してくる」

「えっ!?」

「身の危険を感じるとさ」

ニコニコしていたヴァージルが真剣な表情になっていた。

「まあ、ミュスは闇属性ですからね」

獅子座の神様が乙女が堕ちたって言ってたしな。

「これからもバリバリ狩るつもりですよ。本当は……第六都市で大規模討伐したい……」

「セツナ……やめておけ」

「まあ、指名手配犯だし?」

「はあ!? お前何やってきたんだ?」

かくかくしかじかしたら、カクさんに呆れられたよ。

そんな風に三人で会話をしているところを、管さんが、ふぁーっ!! みたいな顔して見ている。ヴァージルファンだとはつゆ知らず。

「まあ、仕事するか。どうだ、弟子に作らせてみていいか? 品質チェックはやるし、無理そうなら俺が手を出す」

「最終的にできあがる触媒がきちんとしていれば問題ないですよ」

試験かな! お師匠様から出されるテスト!!

……大丈夫か? おーい、正気か?

ぽやーっとしていた管さんの背中をカクさんがバンッと叩いた。

「ふぁ、ふぁい!! 頑張らせていただきます!!」

ビシッと構えてさらに奥へ。今日はヴァージルいるしここで待っていようと思っていたら呼ばれた。

「それでは、失礼して」

管さん真面目に頑張っているようだ。手際よく触媒を作っていく。

できあがった触媒の品質は問題なかったようだ。

「お納めください」

「ありがとうございます」

お金を払うのはカクさんに。

お、触媒に名前がついてる! ポーションと同じ仕様っぽい。

「まあ、あんまり危ないことするなよ。来訪者に言っても無駄だろうがな」

「はは、つい」

やりませんよとは言えない今日この頃。

怪我しないように頑張ります。

それじゃあと店を後にする。

扉まで送ってくれた管さんがぎゅっと俺の袖を掴んだ。

「セツナさん、私は、箱推しタイプです。今日のおそろコーデは最高でした」

男の子にキラキラした目を向けられて、俺は大変戸惑う。

箱?

「またご利用くださ~い!」

箱はよくわからないけど、おそろコーデはわかった。

ホントだ!! ヴァージルと色違いだっ!! くっそ……罠だ。引き立て役じゃん!!

まあ、いいけどさあ。

どう頑張ったって勝てないんだよ。

『街歩きはだいたい終わった?』

『そうだな。なかなかいい息抜きになったよ』

『最後に湧き水亭行ってから帰る?』

『ああ、そうしよう』

渡し船で移動する。いや、着流し姿悪くないですね。裾はだけないように気にするべきか……そういや時代劇でははだけたところに褌がチラ見えするかで、キャッキャするって聞いたことがあります。母から。

さすがに今回は褌はしていない。

夕焼け色の水面に映えるヴァージル。

スクショスクショ。