軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

417.【番外編】イースターXの挑戦3

それでもなんとか五十個近く集めたところでそろそろ帰ることにする。

クランハウスだとまた船に乗らないといけないので、イェーメール、酒屋の近くへポータルで移動した。

すると待ち構えていたかのように、アリンさんからフレンドチャットだ。

『セツナ様、卵をお納めください』

『あ、アリンさん。お仕事お疲れ様です』

『親衛隊の者が失礼しました。私のログイン率が減っておりまして、みな気が急いてしまったようです』

『ああ、まあうん』

アンジェリーナさんのウサ耳を想像したらその気持ちはわかりますのでまあ。

『親衛隊によるNPCへの嘘しきたりは順調に広がっているようで、プレイヤーも誤解しつつあります。まあ面白いので放置です』

『……放置ですか』

『噂の元を調べない情弱は放置ですわ』

なんだ、今日のアリンさん厳しいな。

『えーと、こっちでも結構集めたんですよ~』

『フライングエッグですよね。さすが先行クランですわ。わたくしではそちらで狩りはさすがに無理ですので』

『すでに情報がまわってる……』

『セツナ様の情報は光の速さで集まりますの。そうですね、卵一つでどんな風になるのかがわかりませんので、そちらが判明してからにしましょうか。装備関係はわりと譲渡可ですから、こちらで色バリエを揃えて進呈するのもありかと』

『うん……ありがとう。ちなみにアリンさんは何色がいいの?』

『もちろん、ピンクですわ』

ピンクヴァージル愛されてるな。

どんな具合か連絡するとお話して、いったんステイということに。アリンさんも掲示板で情報を集めて待っていてくれるそうだ。

七人で平等に分けて、一人七つずつの卵を携え、イースターXへ突撃だ!

「なんと! 素晴らしい特大エッグだね」

そう、フライングエッグはでかい。といってもダチョウの卵ほど大きくない。普通の鶏の卵の二倍くらいだ。

「素晴らしい、それならば君たちは次の会場だ!」

風が吹いたと思ったら、風景が変わる。広い草原に白いテーブルクロスを敷いた長机がずらっと一面に並んでいた。

プレイヤーがその机に向かって何やら作業をしている。

「空いているテーブルへ移動するのだ。準備できたら卵をシェイクしたあと、卵の底に穴を開けて中身を全部ボウルへ出す。そして【洗浄】【乾燥】。ここまでが最初のステップだよ。さて、上手に穴を開けられるかな?」

『卵集めで終わらないらしいんだよなあ。ようはイースターエッグ作りが始まるそうだ。生活魔法持っていない場合は、会場にいる生活魔法使いに依頼できるそうだが……』

『俺できるから大丈夫』

『その後絵付けが芸術点が含まれて、さらに器用さによって思い通りに絵付けできるかが変わってくるって。総合点によってもらえるウサセットが変化する。ちなみに……ピンクウサ耳は一番ポイントが高い』

『今回のイベントは結構難易度高めなのね』

それでも俺はっ、アンジェリーナさんにパステルパープルのウサ耳ちゃんをゲットする!!

ピンクのウサ耳は親衛隊が死ぬ気でとりにいくだろうから、俺が別のものをして、一緒にご飯にすればいいのさっ!

『案山子さん、残った卵でご飯を作ってください! それ持ってアンジェリーナさんのところに行きたい!』

ヴァージルは肉でいいだろう、肉で。

『ご飯?』

案山子の頭の上にはてなマークが浮いている。

すると、いつも情報をチェックしている八海山が説明をしてくれた。

『ああ、なんかウサ衣装身につけて食事を一緒に摂ってお互いの健康を祈るイベントだそうだよ』

八海山……騙されてます!

『それ、親衛隊がヴァージルにウサ耳をつけてもらいたいから流したデマです』

『なっ!?』

『ちょwww 親衛隊やってんなあ!』

『八海山が騙されてるのちょっとおもしろーっ♪』

『はっちゃん……ぽん、なのじゃよ』

肩に手が届かない柚子。ふくらはぎを軽く叩いている。

『己の望みのためならプレイヤーも騙してみせようという気概が漢でござるねえ』

『そーゆうことならッ! 卵を使った可愛いケーキとかかなッ★』

アンジェリーナさんスパイシーをお好みだから、スパイシー含めてください。

フライングエッグ(冷)をシェイクする。

「しっかりシェイクしないと、小さな穴から全部中身がでませんよ」

「きれいに整えるのもポイントの一つですからね!」

あちこちにいる白やピンクや水色の燕尾服を着て、ウサ耳の仮面つけたおかしなやつが俺たちに指導してくれる。

シェイクが完了しているかどうかは、ウサ耳の反応でわかった。

どうかなって見せると肩をすくめたり首を振ったりはまだまだだよって合図。グッジョブって親指立ててきたところで次は穴を開ける作業だ。

穴を開ける道具は……ヤマアラシの針でした。マジか!

「裁縫道具の針が一番ですが、お持ちでないなら火ヤマアラシの針がベストです」

針でプスッとさして、ちょっとぐりぐりって穴を広げた後、会場にあったボウルに卵液を出す。殻が入る気がするんだけど、【鑑定】ではそこら辺は言及されていなかった。大丈夫なのかな。

「茶碗蒸しが食べたいのじゃ」

「プリンじゃなくてでござるか」

「ふるふるの、三つ葉とくわいが入った茶碗蒸しがっ!! 今日の夕飯にするのじゃ」

主婦が献立を思いつきつつ、作業。

「いやあああ」

ピロリの筋力が過ぎて二個目のフライングエッグを壊した。

半蔵門線と俺も壊した。

筋力があるとこの繊細な作業がちょっと大変。

反対に、器用さを上げまくっている魔術師組二人は完璧な卵液抜きをしてみせた。

「仕方ないから寄越すのじゃ、ピロちゃん」

さすがにこれ以上はということで手伝ってもらって、なんとかみんな最低五個のイースターエッグの素を作り上げた。きれいにして乾かすのは俺担当です。一瞬ですよ一瞬。生活魔法万歳。

そして最後の関門、絵付けである。

「イースターエッグに決まりはありません。ですが、基本はファンシー、カラフルな絵や模様を書き入れて、可愛らしいイースターエッグを作りましょう!」

テーブルに並べられたペイントセットの前にみんなで座る。

「絵心が、誰が一番かってことよね」

「芸術点と言っていたでござるね。いざ参らん」

俺は下手なことはせずに、山波線を描いたところに丸ぽち打ってみたり、桜の花びらを描いてみたりしました。

フライングエッグ、卵が大きいから描きやすいや!

斬新な色の組み合わせなんてできないので、黄緑と黄色とか、ピンクと赤とか、同系色で六つの卵を作った。

「セツナっちッ! 無難で良しッ!」

「冒険してえらいことになるよりは」

着実に得点を重ねてウサ耳パステルパープルを手に入れるのだ。