軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

397.賢者ケイローン

俺たちは改めてこんな夜遅くに申し訳ないと謝罪し、自己紹介をした。そして、新たな知識を手に入れたいのだと言う。打ち合わせしていたとおりにそれぞれが、具体的に述べることにした。的外れでもまあ、修正されるかなと。何より中途半端なことを言って機嫌を損ねるよりはいい。

本で読んだことを思い出す。

様々な職業をこなした賢人、知恵をもたらす知識人だ。

人があがめ奉り、それに嫌気が差して森の奥深くに姿を消したのだ。

それでいて『魔法使いの憂鬱』に、弟子になったとあった。いろんなことをさせられたと。弟子をとることに忌避感はない。

賢者よと崇めるより教えてくださいがいいんじゃないかって話になったのだ。

貴方の知識をすべて寄越せ!! みたいなスタンスだと拒否られそうなのでわかりやすく悩んでいることを教えてもらおうということに。

「様々な職についた賢者様に教えてもらいたい。盾を持ちながらこう、ぶっ放す、俺の元の世界にあった銃のような武器はないか!」

「私は双剣使い。双剣の必殺技があれば教えてもらいたいの!」

「拙者、属性剣を扱っているのでござるが、今後の戦いを見据えて、聖属性の固有スキルを教えていただくか、知っている人物を教えて欲しいでござる!」

「酒瓶を作りたいのじゃ。今は香水瓶で名を売っているところなのじゃが、酒瓶の、酒瓶の師匠を探している!!」

「俺っち料理人ッ! 美味しいご飯をみんなに食べてもらいたいッ! 賢者さんの好きなご飯は何ですかッ!」

後半二人がちょっと、方向性が違う。

賢者さんが額に手を当てていた。お悩みです。

八海山はとくに今は必要ないということでこの宣誓は辞退。俺も別にこれといってなのでと思ったが、何かやっておけと言われた。

やりたいことなあ。

アンジェリーナさんとのことは放っておいて欲しい。

「ミュスは俺の天敵っ! やつらをもっともっと始末したいので、対ミュス兵器が欲しいです!」

それもって第六都市に殴り込みもありかなーなんて思っちゃいました。

まあ、最初から叶えてもらえないだろう望みとして上げておいた。

半人半馬のケンタウロスなケイローン様だ。もう頭の上に名前が出ている。やっぱりこの人が賢者なんだな。

「君たちは噂の新しい来訪者か。何でも随分と好奇心が旺盛だとか」

「そうですね、違うとは言い切れません」

ソーダが代表して答える。

「今言ったことが、君たちの一番の望みだというのか?」

ケイローンは持っていたランタンをぐいっと俺たちの顔の前に出して一人ずつ表情をみているようだ。

「一番……一番かなぁ? でも、銃みたいな武器を探しているのは本当」

「一番は……楽しみたい? どかーんと楽しみたい」

「遊びたいでござるかな? でも聖属性は持っておくべきと拙者のゴーストが囁いているでござる」

「みんなでわいわいやりたいのじゃ? わいわい酒盛り!」

「ご飯たくさん作って食べてもらいたいッ!」

一番なのかと問われると迷いが出てくる俺たち。

「黙秘っ!」

一番はアンジェリーナさんと日がなまったりしたいだけど、黙秘。

ケイローンに俺はギロリと睨まれました。

「まあ遠路はるばる来た旅人を門前払いするのは私の信条に反する。こちらに来なさい」

と通されたのは小屋の裏側。

なんと、屋根付きバーベキュー会場だ。

しかも席がたくさんある。テーブルが六つに、椅子がそれぞれ五脚ある。各所に吊されているランタンに火を入れていくと、全体的にぼんやり幻想的な森の中のバーベキュー会場ができあがった。

「昔は弟子がたくさんいてな。ここで調理をさせていた。自分のことは自分でやれと言ってな。好きに使うといい」

そう言ってどかっと椅子にすわ……れませんでしたね。そうだよね。

テーブルのお誕生日席に姿勢良く立っている。ケンタウロス族って寝るときどうするんだろうな。

しかし、俺たちが座って賢者が立ってるのはちょっと落ち着かない。立食式にするしかないのか。

「バーベキューなのじゃ!」

「調理前の食材……ここら辺かなっと」

案山子のアイテムポーチは酒が入らない。いつもいつも、酒運びバイトの時大騒ぎになる。香辛料と食材まみれの鞄なのだ。

「タレ作るからちょっと待ってねッ!」

調理台と同じように生産施設扱いだそうで、皿も出てくるわ、野菜があっという間に切られていくわでかなり楽しい。

「このタレはね、ウロブルで学んできたちょっと甘めタレですよ!」

そう言いながら案山子が肉と野菜を焼いてくれる。それくらいはできるよと思ったのだが、そう、料理はスキルなのだ。

できませんでした。

「食べる係にしかなれないのじゃ」

「皿なら洗う」

生活魔法でやるよ!

「皿洗いなら拙者もできるでござるね」

便利な生活魔法万歳。

「さあ、どうぞ」

一番にケイローンの前の皿に焼いた肉と野菜を盛った。ちなみに他にサラダだの、スープだのも出されていた。

「酒は飲むのかなッ?」

「たしなむ程度だ。あまり量はいらぬ」

そういや、ケイローン、酒に酔って暴れたケンタウロス族へ放たれた矢に、間違って射られたよね。毒矢だったとか。ここにいるからそのエピソードはないんだろうけど、好きじゃないとすり込まれていても不思議ではない。

『柚子、気をつけろよ。たぶん飲兵衛嫌いだ』

八海山も同じことを考えていたのかパーティーチャットで注意が飛んだ。

柚子の肩がびくりと跳ね上がる。

『酔っ払いのとばっちりで死んだって神話があるんだ』

『なんてことじゃ……』

焼肉パーティーはそれなりにお気に召したようだ。案山子の料理の腕がいいのだろう。たまに、唸りながらじっと焼肉のタレを見ていたり、チーズに興味があるようだった。チーズはローレンガかな?いろんな種類のチーズ盛り合わせを随分楽しんでいた。

「大変美味かった。ただそうだな、このチーズにもだがこちらの肉料理にも、私が知っている山椒という香辛料があってだな」

「山椒ッ!?」

「その生息地がこの第七都市の近くにある。どれ……」

そういっておもむろに身体の脇に掛けてあった鞄から地図を取り出した。

「この辺りだ。今度行ってみるといい。美味い食事のお礼だ」

「ありがとうございますッ!」

今にも飛び出しそうな案山子を押さえるソーダ。みんなで行こう。横から見てたけど、地図、行ったことのない場所指してたよ。

「さて、酒瓶の師匠だったかな。酒と言えばなんだ?」

「ど、ドワーフなのじゃ」

「ということは?」

「……ドワーフの街に行けば自ずと見つかるということなのじゃな。そんな気はしていたのじゃ」

「最近空の国とも和解したと聞いた。飛行船もそのうち開通するだろう。まあ気長に待ちなさい」

「はいなのじゃ……」

残念そうだけどまあ、いるってことだから待とう! それまでは香水瓶頑張れ。