軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

371.火輪の層

楼閣の中は、壁がたくさんの迷路状になっていた。穴を掘って作られたアリの巣ダンジョンとは違って、壁は黒い木のような材質で、通路は人が3人並んで歩けるくらいだ。ところどころ壁が切れて道が繋がっている。

『進行方向右手前方に3体』

『あいよっ』

戦闘はソーダと蒼炎の盾持ち。その後ろにダインと結愛。ピロリは右側側面に立っている。ピロリは戦闘大好きではあるが、こういったときサポート側にまわるのだ。譲れるニキかっこいいな。余裕がある。いや、ネキか。

モンスターは予想通り火系だ。火を吐き出す……仏像!! ちょっと怖い。

『不動明王かな?』

『モンスターの名前は怒りの化身ですけどね』

『確か怒りの炎で煩悩を焼き尽くす、じゃなかったかな』

剣も持ってる。それをぶんぶん振り回してくるんだ。

『化身様、火を付与してるし……』

『本当だ。付与剣仲間ですね』

黒豆が言うと、蒼炎のメンバーが俺をチラリと見るのだ。

怖い怖い。

ちなみに同じモンスター……でいいのかな? それが3体いる。3尊……か?

『剣を振り回し、火を吐き、なんか紐をぶんまわしてるわね』

「【フロストサークル】」

柚子が叫ぶと3体が柚子をギロリと睨んだ。

「【一身集中】! ヘイトの外れ方がエグい。半蔵門線、【投擲】も頼む」

「了解でござる」

魔術師にヘイトが向かないようにすぐ注意を奪う。

「【フロストダイス】」

魔法は発動するまでに少し時間がかかる。その間が命取りになったりするので、俺もせめて1体は固めようとダイスを飛ばした。柚子も二重詠唱で【フロストダイス】を投げていた。

が、化身さんの熱がすばらしいようで、届いて触れて一瞬止まるがすぐ溶けてしまった。こんなの初めて!

ダイスが溶けてしまい、【フロストサークル】はよく効いたが、いつもなら氷漬けになるところが凍りきらずにダメージだけを与えていた。

『柚子は【フロストサークル】継続! あの紐が怖いから近接は控えよう。遠距離で仕留めたい』

『それにしても3体動かれると盾が1人足りぬでござるね』

『案山子、セツナにMP準備』

3体だけど紐が怖いから慎重にやっていこうということらしい。

「【氷付与】、【 薄氷(うすらい) 】」

付与してすぐ盾より前に出て俺が真横にすっと刀身を滑らせると、氷の薄い層が3体の胴を貫く。

途端にぶんぶん振り回していた紐が止まる。

『やっぱりあれなんかのスキル含んでたな……。セツナ、定期的に【 薄氷(うすらい) 】仕掛けてくれ!』

ただ実は、【 薄氷(うすらい) 】の次スキルを発動するためのチャージ時間が長い。

間違いなく効果が解ける方が早い。まあそりゃそうだよね。ハメ技みたいになってきてしまう。

『聖地の大乱闘で大活躍だったスキル!!』

『黒豆にそれがあればっ!!』

『パーティー専用ですよね。両手剣に同じようなものがあればよかったんですけど。やっぱり大剣にしておけばよかったかなぁ。大剣だとぶん回してありそうですよね』

とキラキラおめめの黒豆くん。大剣にしたかったけどなんかで両手剣に方向転換したとか。

『また触媒の材料を取りに行かねば……』

『クティス貝怖いでござるけど、拙者も強くなったしもっと楽に狩れると思うでござる』

あればっかりは完全にクランメンバーに頼るしかない。

『 細剣(レイピア) の触媒材料ってあのバクバク貝なのか。うわー、大変。今度俺も付き合うから呼んでくれ……』

とは、ダイン。付与したから気にしてくれているようだが、ダインに付与したのは汎用なので大丈夫。汎用の木をとるときはアランも来るし、過剰戦力になります。

怒りの化身はスキルを封じればわりと普通に狩ることができた。

狩るって言っていいのかわからないけど。モンスターだよ。あくまでモンスター。

スキルを発動されなければ、基本攻撃力過多なので始末できる。

『3Fのモンスターはこれだけなのかしら?』

『たぶん? 全然他のモンスターは出てこないね』

【気配察知】にも引っかからないのでこれだけだと思われる。

『うちのクランだけだと、2体で結構きついかな』

『あの紐のスキル喰らう前に封じたからなんとかいけたけど、セツナ君の費用対効果とかも気になるな』

氷だからヤギと戦いに行くことになる。

あそこならなんとかソロでもやりきれそうな気はする。

プラス貝と錬金費用だ。

『1体に対してスキルを惜しみなく使えるか、よね~』

ピロリに言われてちょっと悩む。俺は今は【 薄氷(うすらい) 】しかしていない。柚子は【フロストサークル】をするので、そうなると案山子が俺のMPタンクになるのだ。

遠距離攻撃がなかなか難しい。

『氷はかなり効くから、氷の遠距離を揃えないとダメだね。紐の発動条件も探りきれなかったし』

とは、蒼炎の凪紗さん。弓に付与をしたらとても効いた。

『罠が必要かな』

『罠もいいと思う』

ロジック・ロジカルはパワー攻撃職が多いので、かなり対策をしなければ難しいだろうという。

それぞれのクランにそれぞれ攻略法が必要な階だ。

暇をしている職もあるが、それだけ余裕があるから誰も死なずに階を通り抜けられそうだった。

『そう言えば、ここまでのドロップも謎だよね。数は出たけど』

そう、この階のドロップが蓮の花びら〈火〉の1種類だけなのだ。1階2階はドロップというより成功報酬で蓮の花びら〈地〉と蓮の花びら〈水〉だ。

『金銭効率どうなるんだろう。そんなに美味しくないダンジョンなのかな』

『虹色ダンジョンのドロップみたいなやつかもしれないな。火輪の層で火だし』

色々意見が出るが、残念なことに答えは出なかった。

『まあ、上がってみるか』

皮衣ローブ、本当に役に立った。ありがとうジャンドゥーヤさん!!

階段はセーフティーゾーンのようだということで立ったままご飯になった。

『お願いします案山子様』

『お金、お金払います!』

ロジックも蒼炎も料理人がいないらしい。

みんなから牛丼とカツ丼ねだられてる。

『ヴァージルがいつもめちゃくちゃ旨そうに喰ってるんだよ』

とは猫じゃらし。後ろでロジックのメンバーがうんうんとそれぞれ望みの丼を喰らっている。

『ヴァージルさんは食レポもお上手ですよね』

黒豆の言葉に、どこか不服そうに蒼炎の女子たちが頷いた。黒豆はカツ丼だ。

『みんなヴァージル見てるんだな』

『そりゃイケメンだもーん』

ロジックの女子と、蒼炎の女子も同意のようだ。さすがだぜヴァージル。

『NPC周辺ってたまにとんでもない情報転がってることが多いし、俺もチェックしてるよ』

男子たちも……そりゃ100万再生余裕だな。

『しっかし、旨いな……誰か料理しようやぁ』

『生産職は器用さがある程度ないと……』

『筋力第一のうちのクランじゃ無理だよ、諦めろダイン』

猫耳をピクピクとさせて猫じゃらしが言うと、みんな顔を見合わせていた。

『うちのクランだと魔法使いは……陽葵ちゃんかぁ』

『ポイズンクッキングになるのです』

『危険よ危険絶対ダメ』

『……無理』

1番やりやすいのは魔法使いだろうけど全否定されていた。

『私は斧だし、ゲームの中までご飯作りたくないっ!』

結愛さんの宣言に蒼炎はみんな首を振る。無理そう。