軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

372.みんなで吹き飛ばされた

《蜃気楼の楼閣 第四層 風輪》

風輪の層は……とっても怖い!

『無理、無理無理無理』

蒼炎の1人が発狂した。

気持ちはわかる。高所恐怖症系なら震えてそこから動けない。

なんと、階段から出た瞬間、真っ平らで、すべての壁がない場所に立っていたのだ。

『確かにちょっときついなこれは』

『おうちに壁は必要じゃよぉ……』

『しかも4階とか、怖いわ〜★』

俺達もなるべく中央に寄っていく。

《風を感じ、風とともにあれ》

《風を感じ、風とともに去れ》

《風から身を守り、風に委ねよ》

なんだか真反対のことを言ってる。

しかもアナウンスが流れるたびに、いろんな色の雷がずががんと落ちるっていうね。

そう、お外が荒れ模様です。

だいたいアナウンスが一段落すると事が始まる。

今回もそうだった。

とつぜん地面がぱっと黄色くなった。なにかと思ったら花だ。黄色い花が足元一面に広がっている。

そして吹き荒れる風。

踏ん張るが、掴むところもなにもない上に、花だ。次々クランメンバーが風に巻き上げられた。

ピロリ、半蔵門線、ソーダに、俺。

飛ばされて、壁のない五重塔から放り出される。

『おち、おちる〜!!』

アライアンスチャットにも同じように悲鳴が飛び交う。

そして気づけば入口に立っていた。

《次回、第四層からの挑戦が可能です》

何が起きたのかまじでわからん。

みんなわけがわからないとのことで今回は解散する流れになった。ゲーム時間内ではまだ15時過ぎだ。

ドロップも例の蓮の花びらだけなのでわけることもなかった。ちなみに砂の魔人は魔神人の核とやらは手に入ったそうだ。

魔人作れちゃう?

俺たちは一度クランハウスへ。

いやなんというか理由つけて帰ってるよ、クランハウス。

リビングに俺のソファとられたまんまだしね。

その2人掛けのソファには、だいたい俺と柚子が座っている。

「風の層はあとで動画見直して検討するよ」

「誰かしらそのうち気づきそうだがな。スレではまだあそこを突破したやつはいなさそうだ。とりあえず他鯖へ向けて、蜃気楼の楼閣の出し方チャートを投稿したりしておく。フレンドチャットがうるさい」

このクランの広報と財政を担う八海山には色々と他鯖での伝手もあるそうだ。

「それじゃあ、俺ちょっと出かけてきていい?」

「おう、いいぞー。みんな今日は解散するから好きなところ行ってこい。夜になって行くところなくなったら森に狩りに行ってもいいし、またサウナ行くでもいいし」

許可が出たので解散ということで、俺はある場所へ向かった。

というか、クランハウス手に入れるまでは金を少しでもマイナスから救うぞと、みんなで金銭効率狩りを他の街でしていたので、第7都市で遊べていないのだ。

「私は今後のインテリアとか考えるからここにいるわー。なんか楽しいことあったら呼んでちょうだい」

みんな思い思いに動き始めた。

まず島から出るのに船でいかねばならない。最初に考えていたように、船は無限おかわりだし、多いといつの間にか2台くらいに減っているので大変ありがたい。

「せっちゃ〜ん、私も乗りたいのじゃ〜」

「俺も俺もッ!」

魔術師2人がそそくさとやってくる。

「自分で漕げるようにならないと、いつまでたっても1人で移動できませんよ!」

「ログアウト時はなるべく街の方でログアウトするようにしているのじゃ」

「ですねッ」

困った2人である。

この船を漕ぐ技術は筋力がいらない。というかステータスがいらない。

まるで音ゲーのように、同じようにリズムを刻むだけなのだ。

そうしていれば【漕法】が生える。かなり簡単に生えた。

そんな事を考えながら黙々と手を動かしているが、魔術師2人は楽しそうに水に手をやり短い船旅を満喫していた。

「せっちゃんありがとなのじゃ!」

「セツナっち、ありがとう。帰りは1人で帰れるよッ!」

そりゃそうだろう。クランハウス帰還はボタン1つでぽちっとなだ。

俺は2人と別れて街をうろつく。

第7都市は東側に飛行船の発着場があり、俺たちが来たのもそちらから。

南に森、西側は次の第8都市への道。北側にビーチがある。一応ビーチは街の中判定だ。つまり、北側に門はない。各都市、基本四方にあるのに珍しかった。

そして、いつもは見える白の神殿がぱっと見わからないのも珍しい。

「すみません、神殿はどちらの方向にありますか?」

道行くNPCエルフさんに聞くと、彼は快く場所を教えてくれる。

え、マジか。

言われた通りに進むと、確かにあった。ずっとあったよ。

まさか、白の神殿が植物に覆われてしまっていたとは。恐ろしい。なんかみたことあるやつなんだよ。知らない? 甲子園の周りにくっついてる蔦。

あんな風に覆われてるから白がまったく見えなくなって見落としていました。

神殿の中に入っていつも通りお祈りする。だが今回は加護も声もなかった。

射手座の神様は射手だからね、人型をしている。これが賢者ケイローンと同一視されてるって話もあったが、さてどうなのか?

もしかして同一人物? 同一柱ってこともあるのか?

賢者の資格は職業的になさそうだが、行くというなら一緒についていって見てみたいなと思う。

射手座の彫像はかっこよかったよ。そうだよな、本来これだよ。

水瓶座が異例過ぎただけ。

半人半馬ってかっこいいよね。

新しい街で神殿を見つけた後すること。そう、それは、貸本屋さがし。

なのだが、第7都市の貸本屋ってあのイケメン眼帯男ウォルトなんだよな。この間世話になったしお礼を言わねば……ぐぬぬぬぬ。

顔を合わせたくないけど、貸本屋コンプリートしたいし、本には興味がある。次の【知の泉】、800冊だしね。街歩き系とかは網羅しておきたいのだ。

となるとどこへ行くのが正しいか。

うーんと何も考えずに適当に歩きつつ悩んでいたら声を掛けられた。

「セツナ君じゃん。ようこそミラエノランへ」

……己の運が恨めしくもある。

「お久しぶりですウォルトさん」

「うちの店来る?」

位置は知っておきたいので頷くと、それじゃあこっちだよと促された。

並んで歩く。

ウォルトは俺より少し背が高い。体格もエルフで想像できるようなほっそり系ではなく、わりと筋肉もあった。グレーのシャツに黒いパンツ。茶色のブーツ。

アンジェリーナさんの周りにいると俺のイライラが加速するタイプのイケメンだ。

キャラメイクの時からアンジェリーナさんを知っていれば!!

くぬぬぬぬ。

そんな風に内心のモヤモヤを抱えつつ、第7都市の貸本屋に到着する。

とても可愛いキノコのおうちスタイルだった。

思わずウォルトと店を見比べてしまう。