軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

370.水輪の層

流しそうめんになって辿り着くこの場所は、広めに取ってある。プレイヤー同士がぶつかり合わないように、だろう。

そして進む道はまたいくつかあるのだ。

『なるべく近場に、かな?』

『いや、歩いて行く細い通路がまた入り組んでるんだよ』

隣り合った扉から行けばいいというものでもないらしい。しかし、同じところから入ってはダメだと誰しも悟っている。

ダイン以外。

『え、分かれるの?』

扉は6つだ。クラン内で2組にわかれようとグループ分けをしていると、偵察してきたはずのダインが言う。

『わかってねーのリーダーだけだからなっ! いいから言われたとおりついてこいよ』

どうも猫じゃらしが参謀立ち位置のようだ。

小さな猫耳少年にドヤされるオレンジ色の大男。

『それじゃ、連絡取りつつ頑張ろう』

扉をくぐるとまたアナウンスが流れる。

《水の流れは人の流れ、人の心の流れ》

《悪しき心を洗い流し清めるのが水》

《水の流れはすべてを受け入れ洗い流す》

『さっきのだるまと同じようにこれがヒントでござるかね?』

アライアンスチャットでアナウンスの確認をすると、これは同じだったようだ。つまりどこから入っても同じ。

俺は八海山、案山子と一緒に移動中。

足下は確かに不安定だ。俺はステータスで身軽さも兼ね備えているが、案山子と八海山は動きにくそうだ。ちょうど足の幅くらいの細い道が続くのだ。手すりになるようなものは何もなく、50センチくらい下がったところを川が流れていた。川幅は2メートルほど。全部木の色をしていたが、木とは思えないすべすべ具合。これは……今はいい。普通に歩ける。だが、水がかかったら確実につるりと行く。

だからこそ、か。つるりと滑って最後まで押し流されるのだ。

道は急に曲がったり、坂道になったりする。坂道の時はきちんと段差が刻まれていて、滑らずに済んだ。

そして、前方に異物発見! 長い! 長い長い箸が壁にくっついている。

箸はかなり軽かったが何せ長さが対岸へ届くくらいあるので端を持てば重い。

『箸の端を持つと大変なのじゃっ! ふふ』

みんな考えたことを柚子が代表して言ってくれる。

『これッ! 真ん中持つと歩くの安定するねッ!』

バランス棒代わりにすると、確かに歩きやすい。

そうやってしばらく行くと確かに何かが流れてくる。綺麗な水なので、明らかに異物とわかる赤い何か。

『来たぞーわかりやすく鍵の形してるからなんとか取るんだ!!』

とはいえ、それほど数はない。

案山子と八海山はバランスを取るのに必死だった。心なしか足下の幅がせばまっているように思えた。

なのでここは俺が、と思ったが重心がきつい。長いものの端を持って動かすのめっちゃきつーっ!!

『おらー、これだよ~取るのは取れるんだけどさ、その先でつまんでる鍵を取るのが難しくて……』

ダインの声に重なるように、猫じゃらしが叫ぶ。

『はよこっち寄越せ!!』

『はあ!? 俺の鍵なんだけど』

『いいから早く猫じゃらしに渡してください、リーダー』

『ええっ!?』

揉めるロジック。

本当に、ダインだけがわかってないな。

わりと有名な話だと思うんだが。

箸だとかスプーンだとか天国と地獄のお食事風景だとか。

ダインが大人しく箸の先の鍵を猫じゃらしたちの方へ向けると、そこで初めてわかったらしい。

『鍵取れるじゃん!!』

『みんなわかってんだよ!! あんただけだ、わかってないのは!』

俺もなんとか拾ってソーダへ。

ピロリは余裕の表情で八海山へ鍵を渡す。

筋力重要だったなぁやっぱり。

こっちに半蔵門線だっただろうと思いつつ鍵ゲットなのでまたバランス棒をして先へ進んだ。

ゴゴゴゴと水の流れる音がし始める。

だが、すぐ前に鍵付きゲートが現れる。上から。黄色と黒のしましま模様で、ちょうど平均台な道の上に降りてきたのだ。

八海山から鍵を受け取り鍵穴に差し込み回すと、しましま模様の真ん中がパカッと割れて下に落ちていった。

そのまま真っ直ぐ進むとさらに一段高くなり、道幅が広くなる。

案山子がギリギリ上がったところで水がドバッと流れてきて、さっきまで歩いていた場所に水しぶきがびしびしと掛かる。あそこにいたら絶対滑ってる!

柚子は向こうの通路で半蔵門線に抱え上げられていた。

『みんな無事かー?』

『こちらは全員大丈夫です』

蒼炎も間に合ったようだ。

水輪の層はこれで終わり。道の先に広間が見える。みんなの道がそこへ繋がっていた。

《水輪の層クリア》

知り合いじゃなくてもお互い助け合おうという気持ちはある。だが、足場の悪さ、箸の重たさに負けて上手くいけずに水に落ちることが多いという。

『基本的にダンジョンはソロ推奨でない限りパーティー推奨ですからね。しかも、ここは1番最新の攻略場所だから、一筋縄ではいかない』

そう猫じゃらしが語っていた。

『よっしゃ、次だ次!』

ぐるぐるとまわる階段を上っていく。ダインはとても元気だった。へこたれないのはいいと思います。

《蜃気楼の楼閣 第三層 火輪》

『火輪?』

途端に熱くなる。

『熱さ耐性必要!?』

『セツナ、ローブ皮衣だよな?』

『うん、だから俺は大丈夫』

いつもは薄着なピロリがすぐさまローブを羽織ったのだが、なんだそのピンク色は……。

『ふふ、可愛いでしょう。特注品』

くるりと回って見せると、蒼炎の赤髪のエルフが近づいてきて眺めている。

『いいねえ、いいねえ可愛いねえ』

『でしょでしょー』

『黒豆ちゃん、私もこんなローブがいいわ』

『え、陽葵ちゃん、えっと、今はクランハウス買ったところだから、またお金貯めて考えようね』

『陽葵ちゃんは可愛いものに目がないもんねー。美月も欲しいから今度お金貯める狩りしようねっ!』

『美月ちゃんはいいこだねえ』

『お金貯まったら衣装作家さん紹介するわね~』

会話はほのぼのだ。

戦闘の連携という点で俺は役に立たないので、いつも通り【気配察知】で参加するつもり。

というかたぶん、現在のメンバーだと攻撃がものすごいことになりそう。アリダンジョンと同じことになる。